表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: カルパッチョ
8/8

八話

八話

 恭介が集落を救うために化け物と戦ってから数日が経過した。過去の

 犠牲者達も山の中で発見された。どうやらあの化け物が人を喰ってい

 たというのは人々の勘違いだったようだ。あの化け物は人々の魂を自

 らの中に取り込むことで力を得ていたらしい。化け物が消えたと同時

 に魂を抜かれただけの人は戻ってきた。だが秀二や正平のように殺さ

 れた者達は戻ってこなかった。それでも恭介はこれで良かったのだと

 思っていた。あの二人の死が無駄になることはなかったからだ。

「これでこの集落は救われたな・・あの掟も無効となるわけだ」

 拓郎は恭介の隣に座りながらそんなことを言っていた。化け物がいな

 くなった今、掟など守る必要はない。だが拓郎と雫はこの集落で生活

 することを決めたらしい。恭介は仕事はどうするのかと尋ねた。する

 と拓郎は笑いながら答えた。

「もう俺達は引退だ。ここで俺達は暮らす。お前は・・外の世界を見たい

 んだろう?」

 恭介は頷いた。この集落は確かにいい場所だ。それでもずっとここで 

 生活するのは嫌だ。もっと広い世界が見てみたい。秀二達の分まで。

 今、集落が平和を取り戻したのはあの二人の力があったからだ。恭介

 一人でやり遂げたのではない。というより恭介はもう少しで化け物の

 復活を手伝うところであった。

「・・俺は行くよ。ここの外で暮らしたい」

「頑張れよ、恭介」

 二人がそんな会話をしていると、雫がやって来て、恭介に長が呼んで

 いると告げた。恭介はすぐに長の家へと向かう。雫は拓郎の横に腰掛

 けた。

「これでやっと・・私達の仕事は終わったわね・・」

「ああ。長かったが・・これでようやく終わりだ」

 そのころ恭介は長の家で長の話を聞いていた。どうやらお礼が言いた 

 いらしい。だが、お礼を言われるようなことはしていない。

「・・俺は何もしてません」

「謙遜する事はない。君が今回の事件を解決したのだ」

 秀二達がいなければ声の正体は見抜けなかった。あの鏡を見せられた

 時に、長の話を聞いていれば、矛盾には気づかなかった。今回は恭介

 は周りの人間に助けられたのだ。

「もうここでは悲劇など起こらんよ・・そうであってほしい・・」

 それは長だけの願いではなかった。この件の真相を知る全員がそう

 願っていた。ここではもう悲劇など起こらない。どうかそうであって

 ほしい。ここが風景に似ているのどかな集落であってほしい。あんな

 不可解な失踪が多発するような悲劇はもう起きて欲しくはない。

 それから二週間が過ぎた。集落には平穏の日々が戻ってきていた。

 もうこの場所で悲劇に怯え、暮らす必要などない。恭介は友人二人の

 墓の前に立っていた。彼らに別れを告げ、恭介は集落を出て行く。

 この場所にもう二度とあんなことが起こらないように願って・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ