七話
七話
『・・目障りだ、お前のような存在は」
白い塊から白い光が刃となり飛んでくる。恭介はそれを回避した。
恭介の少し後ろでは雫と拓郎が見守っている。二人は化け物の限界が
近いことを知っていた。攻撃に鋭さが無くなって来ている。
「・・倒すっていっても・・一体どうすれば・・」
「ぶつければいい。お前の全ての力を」
ただそれだけで消滅するはずだ。恭介はとりあえず近づこうと思った。
この棒をあの塊の中に差し込んで力を注ぎ込めばいいのだろう。ただ、その
力を注ぎこむ方法も恭介は知らないのだが。とりあえず何とかやってみるし
かない。
「お前を倒せば全て終わるんだ」
『・・私を倒して全てが終わる?笑わせるなっ』
恭介は塊に近づいた。だが黒い霧のようなものが体にまとわりつく。
「・・な、なんだ・・これは・・」
悪霊が体にまとわりついていた。振り払おうとするが上手くいかない。
『私をお前のような未熟者が倒せる訳がない』
恭介が悪霊を振り払うために、腕を必死に振っていた。その時、雫と拓郎
は信じられない光景を目にした。悪霊達が浄化されていくのだ。恭介の腕
の動きに合わせて。それは雫や拓郎の戦い方とはまったく別のものだった。
二人は悪霊を浄化させるのではなく、討ち滅ぼす。だが、恭介は滅ぼすの
ではなく、浄化させ、ただの霊体にしているのだ。それだけではなかった。
一部の浄化された霊体が恭介の力となっている。
「私達の子供とは思えないわね・・この力・・」
「ああ。俺達とは全く正反対の力の使い方だ・・」
二人とも驚いていた。自分達とはまったく別の力の使い方。それもかなり
の技術を要するはずのものだ。それを恭介は無意識の内にやってのけてい
る。恭介は無我夢中で棒を振っていた。自分にまとわりつく悪霊を払いの
けるために。
「・・何が化け物だ・・今となってはただの弱い奴じゃないか。人間一人
殺せないのか、お前は」
『許せないわね、その言葉』
悪霊が消える。化け物がそう指示したのだろう。恭介の狙い通りだった。
恭介は挑発したのだ。悪霊を消させ、一対一で戦うために。化け物はそ
の挑発にまんまとはまってしまった。悪霊と協力していればまだ勝ち目
はあったが、挑発され怒りで我を忘れてしまったのだ。判断能力を失い
勝機すら捨ててしまった。恭介は白い塊めがけて突進していく。もう恭
介の進路を塞ぐ悪霊はいない。恭介の手の中に棒が塊の中へと突き出さ
れる。そこから大量の力が無意識の内に流れ出て行く。化け物はその力
に抗おうとした。無駄であると知りつつも、最後の抵抗に出た。
『・・消えるの?・・私が・・』
「消えろ、化け物。・・お前が消えれば全てが終わる」
最後まで化け物は抵抗した。流れ出てくる恭介の力を自らの物にするた
めに必死で抵抗していた。だが、その抵抗も二分ほどで終わった。白い
塊は光となり、消えていった。恭介は地面に座り込んだ。雫と拓郎の二
人が駆け寄る。
「終わったようだな・・」
「ええ・・よく頑張ったわ、恭介」
だが返事は無かった。拓郎と雫は恭介の顔を見て笑う。極度の緊張から
解放されたためか、恭介は安心しきった顔で寝ていた。
「・・家まで運びましょうか」
「そうだな」
拓郎と雫の二人は恭介を連れて、山を降りていった・・