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  作者: カルパッチョ
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六話

六話

「今まで騙していて悪かったわね・・恭介」

「母さんまで・・一体・・これは・・」

 恭介が長の家へ向かうとそこには恭介の母

 山崎雫がいた。幽霊などではないだろう。

 だが、両親は恭介がまだ小学生辺りの頃に

 死んだはずだ。それが何故生きているのが

 不思議だ。

「・・隠すためだ・・化け物からお前の力を」

「俺・・の力?」

「この集落に隠された秘密の一つ・・それがお

 前なのだ」

 長は語った。化け物を封印した一人の赤ん坊

 の話を。拓郎と雫はこの集落で生まれた者で

 はない。拓郎も雫も国お抱えの霊能力者だった。

 その主な仕事は各地にいる悪霊化け物を退治

 すること。この集落に潜む化け物の力は恐ろし

 いほど強かった。国はこの集落を犠牲にし国家

 の安全を確保使用としたが、数人の者はそれと

 は別に行動を起こした。そして派遣されたのが

 雫と拓郎である。この二人とまだ赤ん坊だった

 恭介がこの集落に現れ、化け物に戦いを挑んだ。

 しかし、恭介と雫の力でさえ、化け物には勝てな

 かった。だがその戦いの最中、奇跡は起きた。

 化け物が二人を葬ろうとした時、まだ赤ん坊だった

 恭介が化け物と二人の間に割って入った。そし

 て化け物は苦しみ出し、あの棺桶の中へと封印

 された。

「私達夫婦は・・悪霊を退ける力を持っていたの

 でも・・あなたが使ったのは悪霊を封じる力

 だった。それままだ赤ん坊の子がね」

 雫と拓郎は自分達では勝てなかったがこの子

 ならと思い、自分達が死んだと偽り、恭介の

 存在を隠そうとした。化け物は今まで恭介が

 自分と戦った霊能力者の息子とは全く気づい

 ていなかった。

「そして・・化け物は私達の読みどおり、あなたを

 利用しようとしたわ・・」

 拓郎達の作戦はそこでもう成功を迎えていた。

 化け物の魂は恭介と接触した。それにより化け

 物の力はすぐに弱くなった。秀二と正平の死を

 回避できなかったのは残念だ。しかし被害は最

 小限で済んだ。

「・・案ずるな、恭介。正平や秀二・・そして他

 の犠牲者達も奴を討てば戻ってくる」

「・・本当か?」

 長も雫も頷いた。化け物の魂さえ討てば全ては

 終わる。そしてそれが出来るのは恭介しかいな

 い。赤ん坊の時であれだけの力を出せたのだ。

 今であれば倒せるはずだ。

「・・恭介・・本当はこんなことさせたくない

 けど・・今この集落を救えるのはあなただけ

 なの」

「分かってるよ。・・やるしかないんだ」

 少しでも可能性があるのならやってみるし

 かない。やらなくてはいけないのだ。今ま

 での犠牲者を救うためにも。恭介は覚悟を

 決めていた。秀二達だって自らを犠牲にし

 てまでやり遂げようとしたのだ。ここで退

 くわけにはいかない。恭介達が山を見上げ

 た瞬間、小屋の辺りで爆発が起きる。

「・・父さん・・」

「悪霊が集まってきているわ・・無理やり

 取り込むつもりよ・・」

 化け物が悪霊達を呼び集め、無理にでも

 自分の中に取り込もうとしているらしい。

 恭介は気づけば走り出していた。ここで

 拓郎を見殺しにすることなど出来ない。

 そのころ、拓郎は悪霊を取り込み力を得

 た化け物の魂相手に苦戦していた。

「・・それがお前の最終手段か・・」

『盲点だったわ・・あの子があなた達の

 子供だったとはね・・。それにあなた

 達が生きていたとは・・』

 拓郎は笑っていた。このままでは死ぬ

 だろう。あの時は雫がいたから生き延

 びれたのだ。相手が全力では無いとは

 いえ、明らかに押されていた。だが恐

 怖など感じなかった。まして悲しみな

 どない。ただあるのは勝利の確信だけ

 である。自分がここで消されても恭介

 さえ無事なら勝てる。拓郎は全てを息

 子に託した。

『そんな棒で何ができる?』

「何もしないさ。ただ・・お前の中から

 悪霊を削るだけだ」

 棒が白い塊の中に入り込んでいく。だ

 が以前と異なり化け物の魂が痛みを感

 じることはない。今回は悪霊達が盾と

 なっているからだ。だが拓郎の狙いは

 そこにあった。化け物の魂を殺せない

 にしても、悪霊を削ることくらいは出

 来る。

『・・せっかく手に入れた力だ・・そう

 易々と手放しは・・』

「もう遅い!」

 化け物が拓郎に攻撃する前の僅かな一瞬

 で拓郎は化け物の魂と同化した悪霊の一

 部を払いのけた。その直後、化け物の攻

 撃が拓郎を直撃する。拓郎は飛ばされ数

 m先の地面に叩きつけられた。

『・・くっ・・』

 また力が減っていく。せっかく集めた悪

 霊も三割程度が消えた。拓郎の意識はま

 だある。だが拓郎に憑依しても結果は同

 じだ。拓郎や雫は悪霊の憑依に対して抵

 抗する術を持っている。

『ここにいるのが貴様でなければ・・』

 山の斜面を誰かが走って登ってくる。拓

 郎はその姿をみて安心した。恭介は拓郎

 が手にしていた棒を拾い上げる。

『・・そのような武器で私は倒せない・・

 そんな貧弱なものではっ』

「・・やってみないと分からないだろ」

 恭介は集落を救うため。そして犠牲者達

 を救うために化け物の魂に立ち向かって

 行った・・

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