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  作者: カルパッチョ
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五話

五話

「秀二を殺したのも・・正平を殺したのも全てお前か」

『・・そうよ。あの二人は邪魔だから殺したの』

 恭介の中に怒りが満ちていく。声は語った。何故

 二人を殺したのかを。秀二の方は簡単であった。

 化け物が封印されていることを知り、化け物の封

 印されている箱ごと移動させようと考えたのだ。

 そうすればこの集落は救われると信じて。声に

 とってそれはまずかった。そんなことをされれ

 ばどうしようもない。だから殺すしかなかった。

 秀二の体に憑依し、自殺させた。だがそれが原因

 となり、正平が動くことになる。秀二に憑依した

 ことでほとんどの力を使い果たしていた声はどう

 する術もなかった。だから、声は彼らを利用した。

 恭介と同じように彼らに語りかけ、正平と戦わせ

 た。

「・・もう力は残ってないんだろ?」

『あなたには何も出来はしないわ。あなたは何の

 力も持っていないもの』

「ああ・・そうだな」

 それでも諦めるつもりはない。全ての元凶が目の前

 にいるのだ。こいつを倒せば全て終わる。秀二や正

 平達の死だって無駄にはならないのだ。

「・・俺の両親を殺したのも・・お前か?」

『あなたの両親は知らないわ・・私もあの頃はまだ

 実体があったからね。そんなことをする必要なん

 て無かった』

 結局両親の死の真相は分からないままか。恭介は

 少し残念に思えた。恭介はそれが一番知りたかった。

 両親は何故死ななければいけなかったのかを。

 だがこの化け物でさえそれを知らないのだ。

「掟を作らせたのもお前・・か」

『そうよ』

「・・掟を破った人達を殺したのも・・」

『私よ。・・まだ実体がある時は全て消してい

 たわ。跡形も残さずに、ね』

 だから秀二達の遺体はあったのか。秀二や正

 平はそうしたくても出来ない事情があったの

 だ。誰がやったかは分からないが、化け物の

 実体は封印され、魂だけがこの山の中に漂う

 形となったからだ。恭介は棺桶を見ていた。あの

 鎖を解き放てば、化け物は再び蘇るのだ。魂だけ

 の存在となった化け物は誰かを利用しないと復活

 することはもう出来ない。だがこのまま放ってお

 いても根本的な解決にはならない。

「もう俺に憑依する力はないようだな・・」

『・・無いわ。そんな力があるんならとっくに憑依

 してるもの』

 力ずくで誰かに憑依し、封印を解くなんてことは

 もう出来ないのだ。秀二に憑依した時にほとんど

 の力を使い果たしている。だが声は笑っていた。

 いずれはまた力は戻ると。力さえ戻れば誰かに憑

 依も出来ると。恭介を利用したのは早く復活がし

 たかったからだ。だがそれにこだわりすぎたせい

 で、少々面倒なことになっている。

『だが・・記憶を消す程度の力はまだある・・』

「・・記憶・・を消す?」

『記憶を消してもう一度あなたを利用すればいい

 今度はあの二人はいないもの』

 邪魔者はいない。もう一度最初から行えば今度は

 成功する。声は正平を追わせた所で失敗をおかし

 ていたのだ。声の計画では小屋の中で彼らが争って

 いるはずだった。だから、声は正平が死のうとし

 ていることを恭介に告げ、正平を追わせた。しか

 し、そこで誤算は起きた。正平は最初から見抜い

 ていたのだ。だから小屋の中では戦わなかった。

 声の計画を崩すために。しかし、もう正平はこの

 世にはいない。

『私を仲間と思わせるためにはどうしてもああ言う

 しかなかった・・でもそれが失敗の原因となると

 はね・・』

 力がまだあれば、あんな事はせずに済んだ。秀二

 を憑依した時に、数分憑依が保てるような状況な

 ら自殺などさせずに封印を解いた。だがあの時す

 でに声の力は弱まっていた。数秒しか保てなかった

 のだ。だから秀二を自殺に追い込んだ。秀二と正平

 の存在はことごとく、声の計画を狂わせた。

『・・記憶をここで消せば・・もう一度始めからやり

 直せば・・私の計画は・・』

「そうはさせん」

 突如小屋に低い声が響いた。恭介が振り返るとそこ

 には居るはずのない人物がいた。

「・・父さん・・どうして・・」

 小屋の入り口に立っていたのは死んだはずの恭介

 の父親山崎拓郎であった。

「・・恭介、お前は長の所へ。・・私が時間を稼ぐ」

 恭介は頷き走り出していた。拓郎は化け物の魂の

 前に立つ。

『・・あの者の両親は死んだはず・・』

「・・やはり気づいていないようだな、知能の低い

 化け物は」

 拓郎は床に落ちている棒を拾い殴りかかった。本

 来ならば魂が痛みを感じることなどない。だが声

 は確かに痛みを感じていた。

『・・まさか・・』

「貴様の力が弱った原因・・それは恭介にある」

 集落の全ての人々の命を守るため、恭介達の最後

 の手が打たれようとしていた・・


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