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ヘレティックスキルズ  作者: D.クラウド
第2章 ~時が歪む~
6/8

6話 遺体は気付かれたかった

あれから三日が経過した。

その間、特に事件は見られなかった。

明日、両被害者の司法解剖が行われるそうだ。

それで何か分かるだろうか。



ただ、身元特定や調査によりいくつかわかった事がある。


一つは、今回の2つの事件は全て同一犯によるものであること。

これは第一の事件の被害者が

第二の事件が起きた現場の店の元店員という事と、

両被害者とも殺害後、金銭を奪われている事と、

2人とも女性であるという点が共通していることからの推測らしい。

また、目撃者の有無はあれど、

不可解な状況が概ね一致している事もこの推測に至る理由のようだ。



もう一つわかった事は、被害者は2人とも殺される前に

性的暴行を受けている事がわかった。

DNA検査の結果が出れば犯人は特定されるだろうが

問題は犯人の能力だ。

あの奇怪な現象を起こす能力。

いったい・・・。



杉山「犯人趣味わりぃよな。動けなくして犯すなんてよ」

桜山「動けなくしてるか正直分からんがな」

白畑「・・・」



ここ最近、白畑さんは様子がおかしい。

割りとお茶目でノリがいい人なのだが、

このところ表情がキツく、やたら怖い印象を受けてしまう。

更にはまったく喋らなくなっている。

事件現場にも行かないし、何があったんだろうか。



マリア「暇ぁ!何か面白い事無いの~?」

僕「事件も起きないし、調査する目標が無いですからねぇ」

桜山「西垣君の能力って使いどころが割りと限られてるよな」

美澄「そうですねぇ。検索エンジンに近いですねぇ。ワードや目標が無ければなりませんからねぇ」

杉山「結局いつもと変わんねぇなぁ。犯人逮捕のお手伝いまで待たなきゃならんのかぁ」



この人達が腑抜ける理由がよくわかった。

肝心な調査をする理由が警察に奪われてるからだ!



杉山「そういやさ、犯人はあの店の店員説はどうなった?」


そう、被害者が同じ店の店員であるため、

犯人もその店の店員じゃないかという可能性が出ていたのだ。

その件は警察任せで結果待ちだったのだが。


桜山「DNA検査の結果次第らしいぞ。少なからず店内を調べる限りは可能性は大だ。ピンポイントに被害者のロッカーだけしか漁られた形跡がなかったらしいからな」

杉山「ふぅん・・・」



まぁあれだけ異常を起こす能力者だし、

見つかるには時間掛かりそうだ。

警察も凶器のチェーンソー等を探してるが、

未だ見付からず、犯人の残した証拠も見付からずで

店員の中に犯人がいることを断定出来ない状況らしい。



アリサ「時間・・・瞬間的な犯罪実行・・・」


アリサさんが必死に能力を暴こうと思考錯誤してる。

基本的にこういった状況や証言から能力を特定するのは

アリサさんの得意分野らしい。

彼女の思考の柔軟さはcazaでもダントツだという。



アリサ「誰も気付かない・・・時間は過ぎている・・・過ぎている事に気付いていない?」

美澄「過ぎている事に気付いていない・・・それだ!」



突然の大声に皆が驚き美澄さんを見た。


美澄「犯人が時間や感覚を操るから気付かないんじゃなく!気付かせないのが能力なんですよきっと!」



気付かせない能力?


アリサ「認識能力に・・・影響を与える能力・・・認識・・・誘導・・・」

美澄「もし、この能力が相手なら・・・」

桜山「そうとう面倒だな」

美澄「そんなテキトーな雰囲気だして・・・下手すれば軍隊を一人で壊滅せし得る能力ですよ!」

アリサ「思考誘導の一種だから、少なからず人間に勝てる見込みは薄いわね」

僕「えっと?ん?」



どういう事だ?

認識を誘導する?気付かせない?



杉山「どういう事だよ!」

桜山「認識誘導・・・つまりは脳に今ある事象や時間を認識させなくしたり、逆にありもしない事を認識させたり、やろうと思えば何でも出来るな。思考誘導自体、悪魔の能力だってのに、その一部を使うだけでも十分悪魔だ」



なんだその能力は・・・。

脳の判断系の第一段階を潰しにくる能力じゃ、

どうしようも無いじゃないか!



僕「AHEW波はダメなんですか?」

桜山「コンパクトな機械ならワンチャンあるだろうが・・・リュックサックよりかはでかいからな。バレて壊されるだろうな。指向性だから狙う必用もあるし、照射まで2秒掛かるからそれまでに逃げられる可能性も大だ」

僕「絶望的ですね・・・」



事態は急を要すと判断され、

武原さんに早急に連絡をいれると、

武原さんが夜にこちらに来るという。

司法解剖を早めて今日行い、結果を持ってきてくれるらしい。

警察内でも能力の大まかな特定に至ったらしく

その脅威性からこの対応をしているらしい。



ともなれば次の目標は犯人特定だが

こればかりはヒントがない。

まだ時間が掛かりそうだ。

DNA検査の結果がいつ出るか。

結果が出たあと一致する奴が見付かるか。

まだわからない事だらけだ。



桜山「武原が来るまで認識誘導能力者の対策を考えよう。少しでも勝てる見込みを作らねぇとな」

美澄「ですね」

アリサ「でも、あるかしら?認識が歪む以上下手な手が出せないわよ?」

美澄「もしかしたら、caza初の死者が出るかも知れません。しかも、仲間の手で」

杉山「マジかよ・・・」

美澄「相手の思考にもよりますがね」



僕はどうしたらいいだろうか・・・?

僕の能力で出来ることは無いだろうか?



桜山「西垣君!君にこれを渡しておこう」



そう言って渡されたのは・・・

銃だ。

セミオート式の物で引き金を引くだけで撃てるらしい。



桜山「もしもの時だけ使ってくれ」

僕「は、はい」


初めて握るそれを僕はポケットに入れた。

その後、いろいろ話はしたのだがやはり、

対策といった対策が出ることはなかった。




---------------------------------------------------------



夜7時過ぎ。

武原さんがあと一時間程でこちらに来るという。

僕らは上のラブホを臨時休業にし、神原さん込みで

事務室に潜り込んでいた。

特に潜り込む意味はないが。



神原さんも今回の件には

協力したいという要望から、

ここに来てもらっている訳だが・・・。



僕「神原さんはこの事件から身を引きましょうよ。危ないじゃないですか!」


と、止めてはいるんだが。



神原「私だって目撃者で尚且つ能力持ちなんです!立ち合いますし戦います!」



この一点張りである。

そんな僕らを見てクスクス笑う影が一人。



杉山「お二人さんラブラブしてんじゃん。羨ましいぜ~。」

僕「自分が一番ラブラブに無縁だからってちょっかい入れないでください!」

杉山「誰が無縁だボケ!」



アリサさんとマリアさんが笑い転げている。

この二人は笑いの沸点が低いらしい。


杉山「お前ら二人も笑ってんじゃねぇぞ!」



こんなときでも楽しそうだな。



そんなこんなやっていると部屋のドアがノックされた。

ドアが開く。

武原さんが入ってきた。

瞬間・・・。



グワァン



一瞬視界が揺れた。

その場にいた全員がそれを感じたらしく

桜山さんは銃を取りだし、

アリサさんはナイフを、

美澄さんは左腕から血管を出し、戦闘態勢に入る。

僕もポケットに手を入れていつでも銃を出せるようにした



武原「いやぁすまない!待たせた・・・何で皆武器もってんだ!俺だぞ俺!」

桜山「武原!動くな!お前他に誰か連れてきたか!?」



桜山さんが怒鳴る。

武原さんはあたふたしながら手を上に上げている。



武原「待て待て待て待て!誰もいない!見てくれればわかる!」

桜山「美澄、すまない見てくれるか」

美澄「ええ」



美澄さんがドアの向こうを確認すると首を横に振った。

他には誰もいないらしい。



桜山「武原すまない。今一瞬視界が揺れたからな。警戒したんだ。入ってくれ」

武原「俺は揺れなかったぞ。気のせいだろ」



そう言いながら武原さんは入る。

入ってこちらに歩いて来始めた時、

再度、桜山さんが銃を構え、今度は発砲した。

銃声が室内に響く。

武原さんは顔を真っ青にしている。



桜山「貴様・・・出てこい。いるんだろ?」



桜山さんが低い声でそう言うと



?「お前・・・何故見えている?・・・俺を視認識出来ないようにしている筈なのに」



聞き覚えがあるような、無いような・・・。

そんな声が聞こえてきた。

そして

僕らの前の壁に人が突然見えるようになった。



杉山「お前あの時の幼稚園児警官!」

美澄「そういう事ですか」



第一の事件で僕らを通そうとしなかったあの警官が

そこに立っていた。



武原「お前が・・・」



始めから犯人は見えていた・・・。

一番自然な形となって。



僕「庭園を出る際に起きたあの異常な事も、あなたが犯人なら納得が行く。僕らが捜査協力者と知っていたから、あんな錯乱を・・・」

?「まぁ、そういう事だ。だが狙いは他にもある」

美澄「何?」



犯人の男が僕らを見渡し、

次の瞬間・・・、アリサさんが男にナイフを突き付けられ、

拘束された状態で同じ場所にいた。



?「ここは可愛い女ばかりだったからな。見たときから狙っていた。でもいきなりもどうかと思ってな。時期を待ってたんだ。したらどうだ?居場所までわかってよ。いつでも順番に楽しめるじゃねぇか」



さも楽しそうに話す男に嫌悪感しか感じなかった。

他の被害者もそうやって手に掛けてきたんだろう。



桜山「ゲスが・・・」

?「ゲスだろうがなんだろうが、楽しんだもん勝ちだろ?女を犯して殺す。これほど楽しいもんはねぇぞ?密かにヤりてぇが毎回それも面白くない。だから様々なシチュエーションでヤりたい。しかし、そんなことなかなか出来ない」


淡々と腹立つ口調で話始める糞野郎。

僕はフツフツと怒りを感じ始めていた。


?「だが見たろ?あの光景を。俺に備わったこの力を使えばどんなシチュエーションも再現可能なんだ。最初は時間停止の再現で認識を一部遮断して犯してみたが、これは失敗したな。何も感じなかったらしい。呆れてもう一回同じ状態にして殺してやったわ。次の奴は皆が見ている前でってシチュエーションだ。客の認識は遮断。女は逆に皆が見ている様に認識させた。これは楽しかったな。反応も何もかもが最高だったぜ。この力、認識を操る力があればいつでも何処でも楽しめる!いやぁ最高だ!勝ち組だぜ

!」

白畑「貴様・・・」



白畑さんが低く唸る様な声を上げると

糞野郎に向かって走りだした。



?「あん?」

桜山「待て!白畑!」


桜山さんが止めに入るも白畑さんは止まらない。

糞野郎に回し蹴りをしようとする。



しかし次の瞬間には白畑さんは転んでいた。

白畑さんも訳がわからなくなったのか、

暫く止まったままだった。

しかしすぐに立ち上がるべく態勢を変えようとしたが、

動いた時には頭が踏まれていた。



これが認識誘導。



圧倒的過ぎる。

気付いた時には既に遅い。

この恐ろしさは想像を絶する物だった。



?「無駄だ。認識を歪ませたり遮断するだけなら前触れ無しだ」

美澄「前触れ?」

アリサ「視界の揺れね」

?「ああ、ありもしない認識を認識させるときには多少前触れが起きちまう。まぁ、脳を操ってるんだ仕方無い。大した問題も無いしな」



そういう事だったか・・・。



?「さて、話は終わりだ。お楽しみのお時間と行こうぜ」

桜山「お楽しみだと?」

?「そうだ。俺とゲームしようぜ。仲間の体と命を賭けた楽しい楽しいゲームをよ」

桜山「てめぇ・・・」



この糞野郎がニヤニヤしながら楽しそうに話してると

ポケットの中の銃を出したくなる。

僕が手をポケットから引き抜こうとすると

桜山さんが手を掴んで止めた。



まだ、その時じゃない。



小声でそう言ってきた。



?「俺はこれから、この女を連れて逃げる。明日までは動くな。・・・そうだな。明日の朝9時以降、ここを動いて俺らを探し始めていい。東京都内でかくれんぼだ」



都内なんて範囲が広すぎる!

理不尽な・・・。



?「ただし、時間制限付きだ。一時間毎にコイツの服を一枚脱がす。全部脱げた時点でコイツに媚薬を打ち込んで認識誘導を掛ける。その一時間後には犯す。更にその3時間後に殺す。そしたら次の日に次の女をさらっていく。これを繰り返す。女がいなくなったら俺の勝ち。皆殺しだ。女が全員いなくなる前に俺を殺せれば、お前らの勝ちだ。スリル満点で楽しいだろ?」

桜山「クズがぁ!」

?「ルール違反したらペナルティで即殺害だ。あと、俺がお前らの位置を知るためのGPSだ。それは常に持ち歩け。置いて移動したと判断したときは、それもルール違反だ。受けとれ!」



小さな機械を投げ付けられた。

唯一のコイツと奴を繋ぐ糸口・・・。

僕にあるアイデアが浮かんだ。



?「てめぇらが勝てる様にはしてないから最後に遺言言わせてやる。オラ、言え」

アリサ「痛いわね。・・・皆には特に無いわ。アンタ、オバさんは静かにならないわよ?」


一瞬・・・

アリサさんがこちらを見た気がした。


?「はははははははははは!そんときは黙らすさ。犯す時だけは激しく喘いでくれて構わんがよ!じゃぁな!また明日、会えたら会おうぜ!」



糞野郎が一瞬で視界から消えた。

アリサさんは連れ去られてしまった。

事態は最悪だ。



白畑「クソッ!」

桜山「白畑、落ち着け。時間はまだある。今怒りに身を任せればアリサを早死にさせるだけだ」

美澄「尺に触りますが、今は彼のルールに従うしかありませんね」



皆が険悪モードだが少なからず僕だけは希望があると感じている。



僕「皆さん、奴が作ったチャンスを利用しましょう。奴の居場所だけならわかるかもしれません」

美澄「なんですって?」

マリア「奴だけじゃないわ」



マリアさんが印刷機の前にいた。

そこには紙が一枚。

内容は・・・


159537185

腕時計

携帯

言葉は逆



という文字


僕「これは?」

マリア「アリサの腕時計のGPSにアクセスするためのパス、それと携帯のGPSも使えるって意味ね。アリサの言葉も合わせるなら、マナーモードになってるから探されてもバレないって意味かしらね」

美澄「連れられる前に念写で印刷したんですね。彼女は諦めてません」



捜索に関しては問題無さそうだ。

問題は・・・。



桜山「奴がこちらの動きを常に察してる以上、かなり不利だ。これがなければ勝てる見込みがあったんだが」

美澄「見込み?」



皆が桜山さんを見る。

僕のアイデアとその見込みがあれば割りと行けるかもしれない。



桜山「奴は少なからず、不意打ちには対応出来ないと見た」

マリア「不意打ち?」

桜山「俺が銃を撃ったとき、奴は反応しなかった。それに奴の言葉、あれは驚いていたに違いない。武原がいなければ当てる気だったんだがな」

武原「悪かったな」



成る程、やりようによっては能力を崩せるのか。



桜山「そして、俺の能力。この能力原理があれば奴は姿は隠せない」

美澄「視認識を歪ますだけなら確かに」

桜山「いや、能力の波を周りに放ち、それが通る際に触れたものを形として捉える性質上、奴を見失う事はない。認識遮断は別だが」



そう言うと僕と神原さんを交互に見て、



桜山「あとは、若者の頑張りに任せるかね」

僕「はい。そのつもりです。作戦もある程度ですが、考えました」

桜山「さすがだ。今後も作戦立案には困らなそうだ」

美澄「早速ですが説明願います」



僕は多少危険であることを先に言い、作戦の説明を始めた。

説明が一通り終わると、全員が困惑していたが

桜山さんだけは同意してくれた。



僕「時間が来たら即作戦開始です」

桜山「気張っていくぞー」






僕らは時間をひたすらに待った。

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