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ヘレティックスキルズ  作者: D.クラウド
第2章 ~時が歪む~
5/8

5話 遺体は事件を見せない

僕「ダメだ!頭から離れない!寝れない! 」



時刻は夜2時過ぎ。

昨日の出来事が頭に染み付いてしまって

気になって離れないのだ。



結局あのあと皆で食事に行って、その出来事を話した。

皆それぞれ考えを捲らせていたが

能力解明のヒントにすら、ならなかった。

出来事の時間差というか、なんというか

いろいろごちゃごちゃしていてよくわからない。



結局、夜寝るとき、目を瞑る時まで忘れる事が出来なかった。

一から整理もしてみたが無駄だった。



どうせ、このまま寝れないだろう。

諦めて僕はベッドから起き上がった。



cazaの偽装の為に作られたこのラブホテル。

実際、経営もしてるらしいが

最上階だけはcazaメンバーの居住の為に使っていた。



経営者は美澄さんらしい。

こういう事には自信があるらしくcazaの資金目的で

結成直後に経営開始。

今では安定した資金源らしい。

社員も割りと多く、しかも皆地下にcaza本拠地があるのを知っているらしい。

口外しない事を約束すれば手当てが付き、口外するなら即クビ。

秘密保持もほぼ完璧。



抜け目が無い。

用心に越したことはないんだけど。



因みに受付の人は能力者らしい。

能力は身体偽装。

要は変身である。

cazaメンバーには入っていないそうだが

たまに協力してくれるらしい。

日に日に姿が変わってるので

どれが本当の姿がわからない。




『お前らじゃ解決出来ねぇよ・・・』





僕「ダメだ、すぐに浮かんでくる」



何を考えていても次の瞬間にはこの様だ。

探りを入れたいがヒントの無い探りは僕の能力には無理だ。



僕「よし、動いてみよう」



そう呟いて、僕は荷物を纏めて部屋を出た。

エレベーターで一階のロビーに向かう。

ロビーを出ると例の受付の人が声を掛けてきた。



受付「どちらに行かれるんですか?」


今日は若い男性の姿だ。

名札は常に『神原このはら』で統一なのに。



僕「少し出掛けます」

神原「行き先を・・・教えて頂けませんか?出来れば目的も」


そこまで言わなきゃダメなん?

出来れば言いたくは無いんだけど。

でも、もしもの時があるか。



僕「今回の事件のヒント探しです」

神原「現場ですか?警察ですか?」


察しがいいな!

一瞬でバレたわ!

まぁ、今の時点じゃそれぐらいしか出来ないが



僕「どっちも行きます。桜山さん達には適当に説明しといてください」

神原「私も行きます」

僕「わかりました。じゃあ、どっち先に行き・・・は?」


今なんて?

私も行きます?

はい?


神原「現場から行きましょう。警察はリスクが大きいですし」

僕「そういうことじゃねぇよ!なんでそうなるんですか!?」


僕のツッコミも御構い無しに神原さんは僕の方に歩いてくる。



その時僕は言葉が出なかった。

いや、呆れてではない。

驚きでだ。

途中、柱の向こう側を通って

一瞬僕の視界から消えた。

次に視界に現れた時、神原さんの姿は



とても綺麗な女性に変わっていた。

ホントに綺麗で、スラッとした体型

整った可愛い顔に、背中まで伸びるストレートな髮。

cazaのメンバーは美人ばかりだが

今の彼女はその誰よりも綺麗だった。



神原「まだ誰にも見せてない・・・私の本当の姿です。私は神原このはら 菜月なつき。よろしくお願いします」

僕「よ、よろしくお願いします。・・・じゃなくて!」



そうじゃねぇよ!

今この人が美人だの自己紹介だの関係ねーわ!


僕「なんでアナタも着いてくるんですか!?」

神原「一人じゃ危ないですよ?」

僕「いや、そうかもですけど!」

神原「さ、行きましょう」



神原さんに引っ張られ、彼女の同行《強制的》が決定しました。



----------------------------------------


朝の4時半過ぎ。

僕らは移動手段が無いことに気付いたのは

ホテルを出てすぐだった。

神原さんは僕と同い年の18歳。

免許はまだ取ってないらしく

渋谷の神泉から新宿の庭園まで徒歩で来る他なかった。

結果二時間かけてもまだ辿り着いていない。



神原「なかなか無計画なんですね」

僕「やろうと思うと後先あまり考えないので」



一応新宿には来れてるんだが・・・。

庭園まではまだ長い。



神原「あと、庭園まだ入れない時間じゃないですか?」



・・・。

もっと早く言って欲しかった!


僕「一気に疲れました」

神原「時間潰しに24時間営業のファミレスかなんか探しますか」

僕「そうしましょう・・・」



適当に探してたら10分位で見つけたファミレスに入る。

その辺によくあるチェーン化した有名店舗だ。



女性店員「いらっしゃいませ!えっと、2名様ですか?」

僕「はい」

女性店員「ではこちらにどうぞ」


何も言わせず禁煙席に案内される。

まぁ吸わないし吸える年齢でも無いし問題は無いが。



神原「どうしましょうか?」

僕「とりあえずドリンクバーだけでも頼みますか」

神原「ある程度決めちゃいましょうよ」

僕「なら、とりあえず定食系でいいかな」

神原「なら私はパスタ」



注文を終えて食事が来てから

神原さんと他愛ない話をして過ごした。

話してて思った事は・・・。




この人ずれてる。

何かしらがずれてる。

完全におかしい訳ではないが

時々凄まじい一撃を放つのだ。



神原「パルメザンチーズって美味しいですよね。うどんにもかけたりするんですけど、中々ですよ?」


とか


神原「その定食は鯖の味噌煮定食ですか?私、さばって苦手なんです。漢字も読みもさびに似てるじゃないですか?だからこの魚も錆びてそうで食べれないんです」


とか言い放つ。

ツッコミ入れた方がいいのかな?



でも、彼女と話してるととても楽しい。

結局三時間近く彼女と話していた。

7時過ぎたしそろそろ出ようと持ち掛けると

神原さんは「デザート食べてからでいいですか?」と言ってきた。

8時まではいいか、と思い

僕も便乗することにした。



二人で同じものを頼み注文する。

10分程で女性店員が持ってきてくれた。



女性店員「御注文は以上でよろしいですか?」

僕「はい、ありがとうございます」

女性店員「ごゆっく・・・」





なんだ?

女性店員の言葉が途中で途切れた。

あまりに不自然な切れ方を不思議に思いつつ神原さんを見た。



彼女の目が酷く恐ろしい物を見たかのようになっていた。


僕「こ、神原・・・さん?」

僕はおそるおそる声をかけるが

彼女は返事をしないで「あ・・・あ・・・」とだけ、

声にならない声を上げていた。

僕は彼女の視線の先を見た。

見てはいけないという危険信号を脳が発しているが

それでも見ずにはいられなかった。





彼女の視線の先。

そこには、

血が溢れ、辺りを真っ赤に染めていた。

いつの間にか僕の体や、さっき頼んだデザートまで血が注がれていた。





そして、僕はそのまま下を見た。

そこには・・・。

今までここに立っていた女性店員が目を見開き

全身血塗れで倒れていた。

よく見るとやたら大きな切れ込みが全身にあり、

下手に動かしたらいつでも身体がバラバラになりそうな

そんな状態だった。




近くにいた女性客が甲高い悲鳴を上げたのを機に

店内が騒然となった。

神原さんはその場に嘔吐。

僕は、ただその様を見てるしか出来なかった。




------------------------------------



武原「なんだってんだ?今回の事件は・・・。誰も被害者が斬られる瞬間を見てないなんて」

桜山「お前も見てないのか?真也くん、神原ちゃん」

僕「まったく。・・・急に店員の声が途切れて、見たら死んでました」

神原「店員さんが・・・私達のとこ・・・去ろうと・・・したとき・・・気付いたら・・・もう、この姿で・・・」



あの後、誰かが通報してくれたらしく20分程で警察が到着。

武原さんに「桜山達を呼んでくれ」と頼まれた為、僕が連絡。

そして今に至る訳だが。



あまりに一瞬で女性店員がズタズタにされた。

いや、一瞬というのも遅すぎる位の出来事だった。

これだけ血を飛ばし、ズタズタにするにはそれなりの時間を要する。

なのに気付いたら自分も血を浴びていて

それに僕は気付いていないなんて



美澄「この飛び散り様、チェーンソーや草刈り機といった回転式の切断機器を使用したかのようですね」

武原「いや、多分使用されたんだ。よく見てみてくれ。細かだが肉片も飛んでいる。だが問題はそこじゃない」

僕「これだけ人の目に止まる目立った場所でチェーンソーなんか使ったらすぐばれるハズなのに、誰も斬られる瞬間を見ていない上にエンジン音すら聞いていないのはおかしい。って事ですか?」

武原「ああ」



前回の事件との関連性は不明らしいが

もしかすると同一犯かもしれないらしい。

武原さん曰く、前回の被害者の立場が

今回の目撃者の立場かもしれない・・・と。

つまり前回は、被害者は自分が殺された瞬間を知らない。

今回は、目撃者は被害者が殺された瞬間を知らないという事らしい。

あくまで武原さんの見解らしいが。




武原「あ、そうそう。これを見てくれ」


そう言うと武原さんは封筒を取りだし、桜山さんに渡した。


桜山「これは?」

武原「日本庭園の事件の被害者の身元だ。司法解剖はまだだから、まだ提供出来る資料はそんなもんだ。一応目を通しておいてくれ」

桜山「わかった」



杉山「そういや武原のオッサン。これも能力者関連か?」

武原「じゃなきゃ君達を呼びはしないさ。あと、オッサンって歳ではないんだが・・・いい加減その呼び方やめてくれないか?」

桜山「コイツ俺と同い年だぞ」

杉山「オッサンはオッサンだろ」



武原さんは溜め息を吐きながら

この場を離れた。



僕と神原さんは重要参考人ということで警察に呼ばれ、

話を聞かれた。

無論、話せることに変わりはないけど。



ただ一つだけ、後々気付いた事を武原さんには話しておいた。



出来事は一瞬だった。

これに変わりはない。

しかし、7時過ぎたばかりにデザートを頼み、

店員が持ってきた時は約10分過ぎ。

そして、事件は一瞬で起きた。

それから警察が来るまで20分程。

それから30分程で僕らは警察に向かった。

その時の時間・・・8時半過ぎ。



おかしい。

何かがおかしい。

30分程の空白の時間がある。

7時過ぎ→

デザートが来るまで10分程経過で7時10分→

事件発生で警察が来るまで20分経過で7時半→

到着から30分程経過し警察に向かうときに見た時間8時半。

普通なら8時だ!

なのに時計は確かに8時半を指していたんだ!



でも、そんな時間は僕らにはなかった。

だが確かに実在する、その30分間。

なんだってんだ?



昨日の庭園を出た時にも感じたあの違和感が

また僕を掻き乱してくる。

わからない。

犯人の能力だとして何の能力だ?

パトカーの中でひたすら思考を巡らせてもわからなかった。



これを聞いた武原さんも顔をしかめるだけだった。

cazaに帰ってからも皆に話した。

しかし、反応は武原さんのそれと変わらなかった。



時間を操る能力者なのだろうか。

しかし、それでは矛盾が生じる。

時間を止めて殺害したなら時間は進んで無いハズだし、

時間を進めたなら僕らはそれを認識するはず。

瞬間移動でもない。

それなら時間感覚の齟齬は起きない。

なら時間感覚を麻痺させるのか?

しかし、それだと一瞬の出来事の説明が付かない。

誰にも悟られず事件を起こし、

なおかつ時間感覚を麻痺させる。

どういう能力なんだ?

僕は混乱からまだ抜け出せない。


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