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ヘレティックスキルズ  作者: D.クラウド
第一章 ~異端者~
3/8

3話 穿った未来は影を照らす

学校の体育館。

僕は今、その入り口にいる。



おそらく・・・彼女はもう来ていて、今様子見してる所だろう。

自分の正体を知られた以上、無警戒な訳がない。



昨日、彼女の能力の情報を話した上で

いくつか必要な物を用意してもらった。

彼女を影から引き摺り出す為の道具。

下手すれば引き摺り出す前に彼女を殺す事も可能な道具。



2つ、念のために2つ用意した。

出来れば殺す方は使いたくないが、仕方無い。

こちらが死ぬ危険がある以上、

一応殺す気でいないとだめなのだ。



僕は意を決して体育館のドアを開けた。




昼間にも関わらず照明を全て付けたままの体育館。

僕がわざと付けっぱなしにしておいた。

ちなみに今日は学校は休みで部活も終了している。

多分誰もいない。



僕は中に入ると体育館の中心を陣取る。

彼女は・・・どこから来るだろうか。


10分・・・ただ待っていると

突如、照明が落とされた。

照明全開により消えていた影が

姿を表した。

そして・・・



彼女「真也から呼び出して来るなんて思わなかったよ。照明付けて影消しすれば行けると思ったんだろうけど・・・ちょっと安直過ぎかな?」

僕「来たか・・・優衣」



彼女・・・坂田さかた 優衣ゆい

堂々と僕が入った入り口から姿を表して来たか。

照明は・・・おそらく元を斬られている。



僕「学校の照明を元から壊すなんて処罰ものだぞ?」

優衣「構わないよ。どのみち去る気だから。それに自分の戦場を作らずに戦いに挑むなんて馬鹿でしょ?」

僕「僕を殺す気なのか?」

優衣「当たり前でしょ。バレた以上、好きでも殺らなきゃ」

僕「一応まだ好きでいてくれてるんだな」


内心少しホッとした。

まだ希望があるという事だ。


優衣「お互い内緒にして元に戻るなんて考えは無いからね。私は真也を殺す以外考えてないよ」


ホッとしたさっきの一瞬を返せ!

希望ゼロかよ!

でも、


僕「僕は優衣を殺す気はない。止める。怪我ぐらいに留めてな」

優衣「そんなあまっちょろい考えは命取りになるだけだよ」



優衣の身体が足下から溶けて黒くなっていく。

来る!優衣が影と同化していく!


優衣「さぁ!止めてみなさい!」


優衣が影に素早く沈んでいく。

この体育館は2方向に窓がある。

窓は割りと大きい為、この時間だと影の部分はかなり少ない。

彼女の独壇場だ。

僕は自分の影に入られないように極力影の中を移動していく。

つまりは壁際になるのだが、彼女はこれも計算の内だったようだ。


日の当たる部分に彼女の影が現れる。

そして何処かから持ってきたであろうハンマーの影を持って

それを振り回す。



途端に窓ガラスが砕け散り、僕に降り注いでくる。


僕「嘘だろ!?」


流石にこれは想定外で僕は急いで窓がない方に逃げる。

しかし


彼女はその破片の影にハンマーの影を当てていく。

振り回す方向は僕のいる方。

つまり


僕「うわああああああ!!!」


ガラスは砕けながら僕に向かって吹き飛んでくる。

無論、飛び散って来ているため

範囲が落ちてくるだけのさっきとは比べ物にならないくらいに広くなっている。


僕「いて、いてててて!」

チクチクと、ガラスの細かい破片が露出した皮膚を突き刺し、切り裂いていく。



このままじゃ圧倒的に不利過ぎる。

僕はポケットの中身を手で握って日の当たる場所に走り出す。

影もすかさず僕の影を狙う。




そしてついに僕の影と彼女の影が重なり

同化された。

別の影に自分の影を隠さなければ

彼女の一方的な攻撃に晒されるだろう。

だがそれは、対策していなければの話だ!


僕はポケットから彼女を影から引き摺り出す道具を

取りだし、彼女に向けてスイッチを入れた。


僕の影から伸びた彼女の影を円形の光が照らす。

途端に彼女は影から飛び出し

僕と距離を開ける。



優衣「お前!何で!?」


彼女は相当に動揺している。

恐らく彼女は、僕は能力の弱点は知らないと思ったんだろう。


新たな影が出来ないような光を当てられる事が弱点であることを。

つまり指向性の強く範囲の狭い光を放つ道具。

懐中電灯。

僕が彼女の影に照らしたのはそれだった。

これなら照らした範囲だけに光は当たり、

それ以外に影になる要因が無ければ影だけが消える。

または薄くなる。

つまり彼女自身が消されたり、薄くなるに等しくなる。

僕はわざと光が比較的弱い物を用意していた。

引き摺り出す為に。


優衣「真也!どこで知った!?この事を!全部削除したはずなのに!」

僕「削除しても見れるんだよ、僕の能力は。削除したとしても完全には消えてないんだよ。見れなくなるだけでな!」

優衣「そこまで・・・出来るの?」


彼女は青ざめた。

まぁこんな能力青ざめるに決まってる。



僕の能力は電子機器を遠隔から操作や閲覧を可能にしたりネットも閲覧出来る物、

と恐らく彼女は認識している。

何故ならば最初にうち明かした時にそこまでの説明で

彼女に襲撃されたからだ。

しかし、実際はそんな甘っちょろい能力ではない。

データを保持できる機械に関しては、

見れないものは一切ないと言っても過言ではない。

だから僕が、彼女が過去に削除した携帯内の

メモまで見てるとは思わないだろう。

内部フォルダを見たことは秘密を明かした時に伝えた。

しかし、それが削除されたデータまで見た、

という意味には捉えられないだろう。




僕「優衣・・・さっき、自分の戦場を作らずに戦いを挑むなんて馬鹿だと言ったな?」


優衣「くっそ!」


優衣がまた影に潜り込む。

それに対し僕は体育館の真ん中を再度、陣取った。

懐中電灯を照らしたまま。


僕「だが相手の能力をよく知ってないと戦場を乗っ取られ兼ねないぞ!今みたいにな!」


そして僕は自分の携帯を取りだしある人へワン切りをかける。

そして一呼吸置いた時、

外で閃光と火花が散る音がするとともに

体育館の床に赤い光点が複数現れる。


僕「優衣、出てこい。下手に移動するとお前の身体がアジの開きみたいになるぞ。僕は弱めの懐中電灯を使ったが、ここに照射されてんのはレーザー光線だ。当たった箇所の影は消えるぞ」



優衣「ちくしょう・・・」


彼女は観念したのか影から出てきた。

その途端に体育館に照明が照され、

彼女が潜り込んで戦うのに必要な影の量や濃さが失われた。

そして、レーザーも切られた。


優衣「上・・・か」

彼女が天井を見上げる。



体育館内の天井にはマリアさんに待機してもらっていた。

マリアさんは念動で自身と大量のレーザー照射装置を照明に当たらない場所に浮かせていた。



そして、外には杉山さんに待機してもらい、

電気誘導で切られた照明のケーブルに通電して貰った。



そして、体育館内に戦いが始まってから浸入し、潜んでいた美澄さんがタイミング良く照明を付けたのだ。

つまり、



優衣「入った時には罠の中だったのか。周囲の確認をしたはずだったけど、まさか天井とはね。自分の戦場を作ったつもりにさせていたのね」

僕「そうだよ。そして、気付かれない為にわざと最初に影の中を移動したんだ。察しがいいけど突っ走りやすい優衣にはいきなり策をだすより策を潰させたように見せるのが一番だからね」

優衣「・・・さすが私の彼氏だわ」

僕「だろ?」



マリアさんや他の人達が僕と合流する。

彼女を念動で浮かせて地面の影に触れないようにして連行する。

彼女が影に潜り込むには自分のではない影に触れている必要があるので、

飛ばしておけば陰には入れない。

体育館から外に出して、とりあえず連行することになった。



優衣「この後、どうするつもり?」

僕「警察に連れてくさ」

優衣「警官皆殺しになるかもよ?」

僕「今のお前はやらないと信じてるよ」

優衣「そっか」



確証のない確信だった。

多分彼女はもう抵抗すらしないだろう。

ふと・・・無意識に思ってしまう。

このまま前に戻れれば・・・と。


僕「なぁ・・・」

優衣「前には戻れないよ。もう、お互い純粋じゃなくなったから」

僕「先読みするなよ」


純粋・・・。

その言葉が指すのは恐らく異能力の事だろう。

前の僕らが持ちつつもお互い知らなかった物。

知らない間は無いも同然だった物。


しかし今は知ってしまった。

お互い、何に使ってるかも。

僕はハッキングや不法アクセス。

彼女は殺人。

もう、純粋じゃない。

確かにそうだな。



僕「なら、最後に教えてくれ。・・・なんで、殺人なんか・・・」


これは僕が初めて彼女の携帯であの写真を見たときから

気になっていた事だった。

彼女が何故殺人をし始めたのか。

前からそういう思考があったのか。


優衣「真也はその能力を手に入れたとき、どうだった?」

僕「僕は・・・ひたすら使って試したな。不法な事をしまくった」

優衣「好奇心で・・・だよね?」

僕「そうだな・・・」

優衣「私も同じ。能力を手に入れて、バレないようにいろいろ試して、最終的に辿り着いたのが殺人だった。人混みの中で一人、ナイフで首もとかっ斬ってやった。いくら経っても私に疑いはかからない。なんでも出来る!・・・そう思ったよ。最初は後悔したけど、それも3人くらい殺るまでには消えてた」



罪悪感を優越感が打ち消した。

そんなとこだろうと勝手に納得してしまった。

僕達みたいな若いガキにはこんな出来事、

夢物語に迷い混んだかのような好奇心にやられかねない要素の塊だ。



優衣「ホントはね、真也を殺して私も死ぬ気だったの」

僕「え?」


凄まじい一言に驚きが隠せないんだけど!


優衣「でも、今思うと出来なかったんだろうなって思う。私今、袖に隠しナイフ仕込んでて、今死んでやろうとしたけど・・・出来ないの。怖くて。だから・・・お前に止めて貰えてよかった。ありがとう」

僕「・・・」



なんて返したらいいか・・・わかんなかった。



------------------------------


彼女は警察に引き渡した。

僕は知らなかったが、警察には異能力犯罪者対策課ってのが

あるらしい。

彼女は一時的に能力使用不可にされ、連行された。

そんな電磁波が発見されている事も

その時に初めて知った。

市民には公表されていない異能力の存在。

好奇心が沸いたが、後々大騒ぎになる事を恐れての事らしいとマリアさんから聞いた。

まぁ、よくある事か・・・と一人納得してしまった。




引き渡す際にある刑事の人が桜山さんと

親しそうに話してるのを見た。

美澄さんに聞いたら昔からの腐れ縁らしい。

一応能力者らしいが何の能力かは聞けなかった。




あと、彼女との戦いで学校側から謹慎処分が言い渡された。

理由は学校内の器物破損。

やらかしたのは優衣だが、

呼び出して原因を作ったのは僕と言うことらしい。

ごもっともだと思った。

場所のチョイスも、壊される事前提の作戦考えたのも僕だし。



彼女は当然退学処分。

殺人の件が含まれたからだ。

それに便乗じゃないけど

僕は自主退学することにした。

学校には居られない。

何となくそう思ったからだ。



そして僕は



-----------------------------


桜山「西垣真也君!君を正式に我々の仲間と認定する!これから実動諜報員として尽力してくれ!」


僕「よろしくお願いします!」


美澄「よろしくお願いしますね」


杉山「・・・よろしく」


アリサ「よろしくー!」


マリア「まーたむさ苦しくなるわね」


白畑「よろしくお願い致します。西垣さん」






僕の新たな生活がスタートした。

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