1話 答えをを求めた傍観者は答えをを呪う
僕はただ走っていた。
迫る恐怖から逃げるために。
恐ろしい「異端者」から逃げるために。
街中、人はまばらながらいた。
しかし僕にはそれが一番恐ろしかった。
何も無い場所に行かなければ、
人も建物も無い場所に。
いや、逆に大きい建物が欲しい。
隠さなくてはならない。
日を浴びちゃいけない。
浴びた所から斬られていく。
現に今、僕は腕を損傷している。
逃げなくては・・・。
ひたすら走っていたその時、目の前の人だかりの中の1人の影が歪に動いた。
僕「ヒッ!」
僕は道を変えた。
逃げなくては・・・。
背後では悲鳴。
歪んだ影の持ち主の首が飛んだ。
僕は走る。
ひたすらに走り続ける。
だがそれも道端に落ちていた石ころ1つで
あっさり邪魔される。
転んだのだ。
影から影へ、影が迫ってくる。
その影が目の前に見えた時、
人と同じ大きさのその影は腕を振り上げていた。
手の先には大きな刃物の様な影。
僕は死ぬ
もう死ぬんだ・・・。
僕は固く目を閉じた。
何でこんな事になってしまったのか・・・。
-------------------------回想------------------------
東京都 渋谷
僕は至って普通の高校生。
西垣真也
年齢18歳
受験生だが正直、大学に行く気はない。
親の言い付けで「大学は行け!」と言われてるので
渋々受験の準備中。
ホントになんの変鉄もないただの高校生だけど
1つだけ、1つだけ他の人と違う所がある。
それは「異能力」があること・・・。
僕が中学二年の時、目の前の起動済みのパソコンを見たときに、何の前触れもなくそのパソコンが動き出した。
慌てて消そうとシャットダウンにマウスカーソルを合わせてパソコンの電源を落とした。
けど、僕は気付いたらパソコンに手が届かない距離にいた。
訳がわからなかった。
この距離で操作出来るわけがない。
けど僕は確かに操作したんだ。
僕は興味津々に今度はパソコンを起動してみる事にした。
だけど起動しない。
どう頑張ってもパソコンは起動してくれなかった。
仕方なく手で起動した。
すると今度は手を使わなくても動かせる。
ネットもゲームも手を使わなくても動かせるのだ。
僕は興奮した。
自分が不思議な力を使える事に。
僕はいろいろ試したくなった。
学校で友達の携帯を見たときも自分が使えてるのが分かったから
自分にメールを送ってみたり、その送信メールを消したり。
さらには友達の携帯を経由してその他の友達の携帯を探し当て、
操作する事も出来た。
見えている電子機器を触れずに操作する能力。
電子機器を操作するだけじゃない。
それを経由して見えない場所の電子機器を操作したり、
ネット内を経由出来る。
リンクが有る限りそのリンクを経由出来る。
サイトページやline等にアカウントとしてではない状態で干渉も出来る。
「電脳干渉」
僕はこの能力にそう名付けた。
よって高校生になってからは友達や学校内の情報収集が趣味となった。
誰かに話したりはしないけど全く別の視点から友達の関係や情報を見ているのが
楽しかった。
自分は特別だ!とか思ったりはしない。
強いて言うなら傍観者。
全て知った上でただ見てるだけの傍観者なんだ。
この人はあの人に片思いをしている。
でもあの人は誰にも話していない内緒の彼氏がいる。
あの女教師は学校では皆から好かれて、性格も穏やかでのほほんとした感じだけど
影ではいろんな男と付き合って金を貢がせている性悪女だったり。
みんなは知らないから出来ない見方を僕はしている。
この能力のおかげで。
でも楽しい事ばかりじゃなかった。
この能力が原因で知りたくなかった情報を得てしまった。
僕にも友達はいる。
むしろこの能力で周りを知ってる分上手く渡り合っている。
親友と呼べる奴だっている。
彼女もこの間出来た。
傍観しつつも普通に暮らしてた。
けど、ある日彼女の携帯から情報を集めていた時、
僕は怪しげなファイルを見つけた。
ロックが掛かったファイル。
僕は携帯内からパスワードを入手して
怪しげなファイルを開けた
そこには
血まみれの死体、死体、死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体
あまりにグロテスクな写真が大量に保存されていた。
しかも全部彼女の携帯のカメラから撮られた物だった。
驚くしかなかった。
彼女は人殺しをしている?
僕はさらに知りたくなってしまった。
彼女が使用しているSNSやブログや内部のフォルダまで全部調べた。
そして知らされる事実。
彼女も異能力者だった。
影に潜り込み影から物体に干渉する能力。
彼女を調べる内に分かった彼女の能力。
そして、彼女の本性。
僕は彼女に打ち明けた。
僕の能力、それで彼女の秘密を知ったこと。
その結果、
彼女は僕を襲ってきた。
彼女にとって僕も標的でしかなかったんだ。
東京の街中を僕はひたすらに逃げた。
--------------------------------------------------
固く目を閉じ、僕は自らの死を待ちながら
さっきまでの光景を思いだし後悔する。
何で話してしまったんだろう。
こんな死に方したくない!
でも時既に遅し
もう僕に逃げ道は無く死ぬしかない。
やるならいっそやっちまえ!
・・・痛くないようにやっちまえ!
・・・・・・。
・・・ん?
死なない?
何だ?痛みを感じること無く死ねたのか?
でも腕の痛みまだ感じてるし
何だ?
恐る恐る目を開けてみる。
すると僕の周りには大きな影が出来ていた。
僕の影すら飲み込む、大きな影が。
咄嗟に上を見上げる。
僕「なんだこりゃ・・・」
僕の頭上には大型トラックが浮かんでいた。
何の支えもなく、空中に。
?「少年!こっちよ!」
突然背後から女性の叫び声が聞こえた。
でもその声に僕は咄嗟に反応出来なかった。
あまりに異常な事態が起こりすぎて
他を気にする余裕がなかったのだろう。
一瞬遅れて声が聞こえたことに気付いた。
しかしその遅れた一瞬は奇跡的な生きる道を壊すには充分だった。
大型トラックの影からから伸びた人型の影が
手に持った刃物の影を大型トラックの影に降り下ろした。
大型トラックの影は降り下ろされた刃物の影が通った箇所から斬られ、真っ二つにされていた。
そして
浮かんでいた大型トラックそのものも真っ二つになっていた。
そして切れたトラック影の間からまた僕の影が映し出されてしまった。
これが彼女の影から物体に干渉する能力。
影が影を斬れば影の持ち主も斬れる。
もう物理も糞もない現象を起こす悪魔の能力。
女性「ボーッとしない!」
唖然とした僕にまた女性が叫んでくる。
と同時に僕の体が宙に浮き始め、
後ろに一気に引っ張られる。
僕「おわぁ!!」
引っ張られた体はまっすぐ後ろに飛んでいた。
女性「白畑!」
白畑「かしこまりました!」
僕の体は白畑と呼ばれた筋肉ムキムキのおじいさんに受け止められた。
白畑「お怪我はありませんかな?」
僕「あ、は、はい。大丈夫です」
白畑さんに気を使われたのもつかの間、
女性「ここは一時撤退と行くわ!着いてきて!」
僕はもう何がなんだか理解できないまま女性と白畑さんに着いていくしかなかった。