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ゴトウ君の手!?  作者: 京 高
第一章 これも一つの高校デビュー!?
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ランナウェイな日々

原稿自体はすでに完成しており、一日~数日おきに投稿していこうと思っています。


多分20~30話程度(結局22話で完結しました)になるのでは、と思います。

 キーンコーンカー……

 授業終了のチャイムが鳴り終わる前に、僕こと後藤大介(ごとうだいすけ)は教室から飛び出した。


「後藤が逃げたぞ!」

「追えー!」


 同時にクライスメイトが叫びながら追いかけてくる。振り返ると他のクラスの追手と合流して、とんでもない数になっていた。


「こら!挨拶がまだだぞ!」


 後ろから聞こえる先生の声に心の中で謝りつつ、近くの階段をかけ降りる。

 階段に近い端のクラスでよかった。これが校舎の真ん中だったら、今頃挟み撃ちにされてもみくちゃにされているところだ。

 背筋にぞっとするものを感じて、僕は改めて思った。


「どうしてこうなった!?」



 きっかけは今から一か月ほど前の高校入学の日だったのだろう。

 恒例の自己紹介も終わり、それぞれ新しいクラスメイト達とあいさつを交わしていた。

 そんな中、僕が意気投合したのがアメリカ帰りの自称マイク・ジョンソン(本名、田中新太郎(たなかしんたろう))だった。こいつは長い間アメリカにいたということで、あいさつの時も握手を求めてきた。当然断る理由もなかったので、僕は照れながらも握手をした。

 その直後、なんと近くにいた三河さん――美人!――がマイク(新太郎)に話しかけてきたのだ!そしてあっという間に二人は仲好くなり、二日後にはクラス第一号のカップル誕生となっていた。

 後から聞いた話だが、実はマイク(新太郎)は三河さんに一目ぼれしていて、何とか話す機会がないか探っていたらしい。だから彼女からから話しかけられた時にはこれはチャンスだと思ったそうだ。


 そんなことがあってから一週間後、僕ら新入生も部活動が解禁になり、我がクラスの大半も部活動に放課後の時間を使うようになっていた。

 その日はサッカー部に入った小島が珍しく浮かない顔をしていたので、僕は何となく気になって声をかけたのだった。小島の話によると、彼は中学でもサッカーをやっていて期待の新人だった。が、昨日コーチと口論になり「従わないのなら試合には出さない」と言われてしまったそうだ。

 詳しい内容が分からない僕は「何とかなるさ」と彼の肩を叩いて、気楽に励ましたのだった。その後、部活に出た小島はコーチから謝罪され、無事にレギュラーとして使ってもらえることになった。


 ここまでなら、ただ僕の周りで良いことが続けて起きただけだったはずだ。だけど、


「そういえば中学の時も似たようなことがあったな」


 と同じ中学出身のやつがこぼしたことから状況が一変していくことになる。

 いつの間にか「後藤の近くにいると良いことが起きる!?」と噂されるようになり、次の日には「後藤に触ってもらうと良いことが起きる」に変わり、さらにその次の日にはなんと「後藤に触ってもらうと願い事が叶う!」になっていたのである!

 噂はあっという間に学校中に広がり、晴れて僕は願いを叶えて欲しいと殺到する生徒たちから休み時間ごとに逃げ回る生活を送ることになったのである。



そして現在も、


「まてー!俺の願いをきけー!」

「うるせー!お前はドラゴンボ〇ルでも探してろ!」


 怒鳴り声を上げる数十人の鬼さん相手に絶賛鬼ごっこ中だったりする。


「私の体ならどこでも触らせてあげるー(はぁと)」

「なんですと!?」


 色っぽい女子の声に思わず振り返るが、女の子なんてどこにも見当たらず


「目標の足が止まったぞ!一気に捕獲しろ!」

「思春期妄想オツ!」


 と、むさ苦しい男どもが迫ってくるではありませんか!


「ちっくしょー!もう誰も信じない!」


 どうやらスマホに音声を仕込んであったようだ。溢れ出てくる涙をぬぐう暇もなく逃走を再開するも、すぐに階段は途切れて一階に到着してしまう。


「くっ、どこに逃げればいいんだ……」


 数週間前にはまるで縁のなかった中二病っぽい言葉を呟きながら周りを見渡す。 するとある部屋から手招きをしている人影が見えた。また罠かもしれないけれど、それを考えている余裕はなく、上から聞こえてくる喚き声に追い立てられるようにその部屋に逃げ込んだ。

 奥にある大きな机の影に隠れると、僕と入れ違いに外に出た人が扉を閉める音が聞こえた。ようやく落ち着いて周りを見渡すと、立派な机や椅子だけでなくテーブルを挟んで数人がけのソファが二脚向かい合わせに置かれていた。

 と、状況を確認できたのはここまでだった。大人数のドタドタという足音に僕は再び机の影に隠れた。


「一体何の騒ぎですか!?」


 部屋の外から問い詰める声が聞こえると、とたんに静かになった。ざわめく声の中に「校長」とか「やばい」という単語が聞き取れた。

 どうやら僕をかくまってくれたのは校長先生だったらしい。なるほど思い返してみれば応接スペースに立派な机と、確かに校長室にありがちな内装だ。

 息をひそめつつそんなことを考えている間に話がまとまったようだ。廊下側からざわざわと生徒たちが退散していく気配がうかがえた。


「いやあ、ここまで問題が大きくなっているとは予想外でした。 これは今日にでも職員会議にかけなくてはいけませんね」


 それぞれの教室へ帰っていく生徒たちを見送った後、校長先生はそう言いながら部屋に戻ってくる。


「助けていただいて、どうもありがとうございました」


 僕は隠れていた机の裏側から出て立ち上げると、丁寧にお礼の言葉を述べた。


「いやいや、学生たちの問題を解決するのも教師の仕事です、気にしなくてもいいですよ。それに今回は問題を先送りにしただけですからね」

「どういうことですか?」


 申し訳なさそうな物言いに問い返すと、


「学生たちがなかなか引き下がってくれなくてね。とりあえず噂の真相がはっきりするまでは、後藤君に手出し無用ということになったのですよ」

「えっと、つまり……?」

「君に本当に願いを叶える力があると分かったら、また今日のようなことが起きるというわけです」

「うそ……」


 校長先生の言葉に目の前が暗くなる僕。そこにさらに追い打ちがかけられる。


「まあ、本当にそんな力があったなら、うちの学生どころか世界中の人から狙われてしまうでしょうけれどね」


 さわやかに「あっはっは」と笑う校長先生に対して、僕はorzと膝をついてうなだれていた。


「と、そんな話をした後に恐縮なのですが、私と握手してもらえませんか」

「うええぇ!?」


 突拍子のない提案に飛び上がると、


「実は私の娘の出産が控えていましてね。あの子は昔から体の弱い子でね、無事出産できるように親としては何でもしてあげたい訳です。

 さらに言えば、本当に君にそんな力があるのか、という実験の意味合いもあるので受けてもらえると助かります」


 とのこと。納得できる理由に「そういうことなら問題ないです」と返して校長先生の手を握る。すると、なんということでしょう、これまでの好々爺然とした顔と打って変わって悪い顔をしているではありませんか!


「くっくっく。これで出世も何もかも思いのまま!」

「ちょっ!?校長先生!?」


 その豹変ぶりに驚いていると、再び先ほどの温和な表情に戻って


「冗談ですよ。あっはっは」


 なんてのたまいやがりましたよ!


「冗談になっていませんよ、それ……」


 とにもかくにも一時の平穏を手に入れて僕は教室へと戻ったのだった。

 ……最後に思い切り疲れさせられたけれどね。



 だけどもう遅かった。僕の噂は学校の外にまで広がってしまっていたのだ。

 久しぶりに訪れた平和な放課後を満喫して、遅くまで学校に居座ってしまった。当然外は真っ暗になってしまっていたが、中流階級一般家庭の出の僕には迎えなどあるはずもなく、いつも通りに歩いて帰宅していた。

 そして繁華街を抜けて住宅街に入り、人通りが少なくなってきたころ、


「そこの君、ちょっといいかしら?」


 と呼び止められた。声から察するに美人と思われる相手に


「はい、何でしょうか」


 と喜び勇んで振り返った瞬間、僕の意識は暗転した。

 あれ?なんだかこのパターン多くない?

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