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cage

作者: 平澤間宮

赤い宝石みたいなジャムがのったクッキー。

透き通った飴色の紅茶。

黒曜石のようなチョコケーキ。


青い高価なジャケットを羽織りお庭でティータイムをしていた。母様も姉様も僕とは違う淡いピンクのドレスに身を包んでお行儀よく談笑してる。



きらきらした装飾が眩しいネックレス。

光に透けて可愛い影をつくるレースのついたネグリジェ。

トランク型のシックで大きなドールハウス。


いとこのフィーユが忘れていった赤いエプロンドレスを着て豪奢な姿見の前に立つ。高い鼻も細く流れる目も紛れもなく僕のもの。



ふと窓の外に視線を動かすと、僕より一回り小柄で意地悪な顔をした少女がこちらを見つめて笑ってた。


だめだめ、いけないよ。

僕の中の魔女よ早くいなくなって!


少女は悲しげな表情を浮かべて泡になった。




黒く艶のある馬。

緑色の落ち着いたネクタイ。

腕にかかる剣の重み。


練習場で膝を擦りむき思わずべそをかきそうになる。今頃ファム達は広間でダンスのレッスンでもしているんだろう。



唇に潤いを持たせる。

爪は薄いピンク色。

短い髪も赤いカチューシャで彩った。


いつも通り姿見の前に立つ僕を魔女が笑いながら見つめてる。


見ないで見ないで、バレたら大変。

もう魔女なんて死んでしまって!


魔女はゆっくり僕に近づいてくると、その小ぶりな手で握った銀色のナイフを差し出してきた。


もういいんじゃない。

もう疲れたでしょう。


それは魔女の甘い毒だと分かってた。でも抗うなんて出来るはずない。だってそうだ、魔女を殺すくらいなら僕が死ぬべきなんだろう。


きゅっと握りしめたナイフは軽い。まるで背中に羽が生えたみたいに僕の体は左右に揺らぎ、そのまま両親のいる部屋に辿り着いた。

エプロンドレスに身を包んだ僕を四つのナイフがつつく。でもいい、もういいんだ。僕は一思いに握りしめたナイフで心臓を刺す。



母様の悲鳴、父様の怒号。駆けつけた姉様は軽くなった僕を見て顔を歪めた。



いいんだ、これで、いいんだ。

僕は僕ごと刺し殺した魔女に体を譲って部屋を出た。お気に入りの洋服に可愛らしいドールを持って家を出る。


さよならみんな。私は一人で生きていきます。

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