007。
「顔良し中身良しの文武両道だけど、身長低いのが唯一っちゃ残念だな」
「確かにな。そこはなんて言うか残念だ」
「だよなぁ」
そう口々に言うクラスメイトに俺は一人息巻いた。
「身長くらいどうってことないだろ。あんなに非の打ち所がないのは俺、青葉が始めてだ」
青葉が顔を洗ってくる、と席を外せば朝黄が口を開いた。
「ブルーは勉強もスポーツもすごい頑張るほうでさー。格好だっていつもきちんとしようとしててさー」
「だよな、俺はだから憧れてたわけだし」
さっきの青葉を見てしまうと少し遠い目をせざる負えないが、それでもすごいとは思う。
「小学校のころからそれこそ完璧少年で、仲良くなりたい一心でブルーのご機嫌とらなきゃって子が多くてねー」
ポケットから取り出した飴玉を朝黄が口に放り込む。
お面に当たりそうなものなのに自然体でそれをやる姿にいつからお面をつけているのだろうと乾いた笑いを零したくなる。
「で、気づいたら無口なある種の俺様に成長してたー」
朝黄はけらけらと笑う。
「でも、高校に入って周りから身長が高ければ完璧なのにとか影で言われてるの聞いてぐれたねー」
「あー……そういうことか。でも、悪意はないと」
「あー、うん。ブルーもその辺りはわかってるよー。まあ、それでも調子乗ってた分くるよねー。で、そんな時に本心からの憧れを口にしてる子を見つけたらっておはなしー」
そう言って脈絡なく放られたものを反射的にキャッチする。
掌を開けば林檎の飴玉。
「それがレッドだよ」
dance attendance on(~の機嫌をとる