006。
あぁそういえばなんて、今更に思う。
青葉の身長は標準よりは少し低い。
俺は対して気にしていなかったけれど、163だとかいう数字はクラスでも話題になっていた。
朝黄の目の前で青葉が俯いたまま沈黙する。
いつもなら言い返すか、ため息をつくだろうに、今はただ黙っている。
「ねー、だんまりはやめよーじゃん」
朝黄は楽しくて仕方が無いという風に、青葉の両肩にぽんっと手をおく。
「……るな」
「え、なーにー?」
青葉が何か呟いて、朝黄がわざとらしく耳を傾ける。
俺は成り行きを見守るばかりで、さっきから口を挟めない。
やがて、かたかたと青葉の肩が震え始め、やめればいいのに朝黄がもう一度言う。
「どうしたのー、寒いの、おチビさん?」
「ちょ、朝黄」
「……んな」
小さく呟きが聞こえたかと思えば、ばっと青葉が顔をあげる。
「チビって言うなっ! ばーかっ!!」
「へ?」
目を点にする俺と、堪らずと言った風に噴き出す朝黄。
叫んだ青葉は半泣きで、小さい体躯とあいまってとても幼く見えた。
日頃、かっこいいと持て囃されている分それは本当に目を疑うような光景。
「ばかっふざけんなお前、俺がどれだけ努力してると思ってんだばーかばーか!」
「うんうん知ってる知ってるー、毎朝牛乳一リットル飲んでるもんね偉い偉い」
「ばかにするなっ! 埋まれお前みたいなばかはすぐに埋まれっ!」
「ばかじゃないでしょ、ぼくのほうが身長高いから埋まってほしいじゃんねー?」
そういうことかと俺が暴言の真意をやっと理解していれば、青葉が悔しそうにぐううと泣き出す。
泣き出す青葉と爆笑している朝黄に俺はあわてて、言葉を並べる。
「いや、青葉はかっこいいから。文武両道で生徒会役員だろ? 身長低くても青葉はいつも正しいし、俺の自慢の友人だから!」
ピタリと青葉が動きを止めて、俺は混乱する。
変なことを口走ったつもりはないが、何が気に障ったのか。
青葉はくるりと俺を振り返る。
その顔はもう既にいつものイケメンにもどっていた。
「そうだな。悪い、取り乱した」
「へ?」
「レッドさー、前にもそういうことブルーに言ったことあるじゃんね?」
朝黄は飽きたようにくわわっと欠伸をしている。
「ブルーがその日、俺は正義に味方されたとかなんとかすごい嬉しそうにしてたから。それでレッドに懐いた、的なー?」
思い返せばわ確かに少し思い当たる節がある。
ただ、それなら口で言ってくれればいいのにと俺は一人肩を落とした。
on the side of angels(正義に味方して