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薄命物語  作者: 真田 幸一
2/15

第1話 夢の始まり

「寒い・・・。今日はふたご座流星群の日・・・確か、東の空だったよね・・・」

「彼と再会できますように・・・。」


――――輪廻転生のシーンor流星群――――

(甲本栞の語りかけ)

あなたは、前世の絆を信じますか?

私は30歳の誕生日までしか生きられない。

その代償と引き換えに、「前世の記憶』と『彼と何度も巡り会うという運命』を持つ・・・

これは、何度も巡り会う私たちの物語。


薄命物語


――――OP ―――――


        


第1話 ~夢の始まり~


2010年12月24日17:50頃、S県S市S大学、教養の掲示板にて・・・


少女?side

「今年ももう終わりか・・・」

ぽつりと、一人呟く少女が、掲示板の掲示物を見ている。

身長は150cmくらい、肩まで届くか届かないかの黒髪で、ほっそりとした体形の少女である。実年齢19歳の大学2年である。

名を甲本栞という。

掲示物には、12月25日冬季休講開始、1月6日(木)講義再開と書かれている。

「寒くなってきたから帰ろう」と思い、歩き出した、すると目の前に、ある人が・・・


青年side

少し前、講義が遅れて終わったから、急いで部室に向かって自転車を漕ぎまくっている青年がいる。

身長は170cmくらい、黒髪で、どちらかと言うと、ほっそりとした体形の青年。

実年齢19歳の大学2年である。

名をば真田幸一となむいひけり。

「掲示版を見に行かないとな」と思い、学生センターの向かい側の中庭、教養大講堂の前の掲示版に急いだ。

そこで、思いがけない人がいた。


―――18:00―――


「もしかして、幸一君?」

振り返ると、外見年齢16歳くらいの少女が立っていた。

「・・・栞か?」

その少女は本当に嬉しそうに、微笑んだ。

「うん、・・・久しぶりだね・・・えっと、5年と半年ぶりだね」

「そうだな・・・」

静寂、二人は少しの間見つめ合う・・・なんてことはなく。

「で、何で5年と半年間、音信不通だったのかな?」

と青年が聞くと、少女は、本当に困ったような顔をして、

「あ、えっと、その、住所知らなくて・・・」

「家の電話番号教えなかったか?」

「あれ? えっと・・・」

本当に知らないらしい・・・

「それに、○丁目まで同じだったんだから、届きそうなんだが・・・」

「ご、ごめんなさい」

本当にすまなさそうに頭を下げて謝っている。これ以上この空気を保つのはかわいそうだと思えてきた。

それにしても、いつまで頭を下げるんだろうと気になって、もう少しこのままにしておこうと思った。我ながら、ひどい奴だと思った。

「あの、幸一君?」

「何だ?」

おお、30秒ピッタリだ。ある意味すごい。

「許してもらえますか?」

ああ、なんて言うか、この泣き出しそうな顔。誰もが、許しそうになる・・・。

「許してほしいか?」

「あ、はい・・・」

「条件がある」

「な、何でしょう・・・」

妙な緊張・・・

「この後、付き合ってほしい」

「あ、はい」

何だそんなことですか、とホッとした顔をした。

「無理しなくていいぞ。友達の誘いがあるなら・・・」

「あ、はい・・・大丈夫です」

この反応は、やはりな・・・

「はぁ」

「どうしたんですか? 溜息ついて・・・」

「友達いないだろう?」

「う・・・」

図星・・・

「サークル入ってないのか?」

「あ、はい・・・私に合うサークルがなくて」

「そうか、じゃあ、俺と同じサークル入るか? 一つくらいサークルに入っておいた方が良いよ」

幸一は歩き出す。

栞も後に続いて歩く。

「あ、はい」

静かな、寒い夕方、2人はメインストリートと呼ばれる、並木道を歩き始める。

サークル会館に向かって。



クリスマス・イブに再会した2人には似合わない光景だった。

並木道の片側が、現在工事中だからである。

そんなことを考えながら、幸一はサークル会館1階の突きあたりの部屋のドアを開ける。

ここは、4つのサークルが1部屋を区切って使っている。

「新入部員を連れてきた。」

「え、こんな時期にか?」

少し丸い体系の三木が言った。

「は、ありえんろ?」

身長低め――栞より高いが――の林田、周りからは「トクさん」と呼ばれている。

「そうか、初めての女性部員か。」

真面目な性格の末本貴は言った。

「あれ? そうなの? 幸一君」

「ああ、言ってなかったな」

「ふーん。まぁ、いいか」

「と、言うわけだ。良かったな。今年は華があるクリスマス・イブになりそうだ」

「あ、えっと、ところで、ここは何のサークルですか」

部屋全体が凍りつく、棚の向こうのサークルの方々はいなかったからだ。

「聞くタイミングがずれてるな」

「将棋部だよ」

「へえ~~」

ちなみに、みんなは、こたつに入ってトランプをしていた。

その後、栞と幸一を混ぜて、19:30頃まで5人でトランプ2箱を使って『大富豪』をした。


19:30


「夕飯は何にする?」

という、誰もが思う台詞を、部長の末本が言った。

「候補は、ワクド、マス、キライヤ、ふうの家、百力、坂寿司・・・くらいか」

いつもみんなで行くところを次々出した、

「あ、でも、今なら、ワクドのラージバーガーが半額で得だよ」

さすが、トクさんだ。そういう情報は早いな。というわけで、ワクドに決まった。

「早く行かないと閉まるんじゃないか? ダデンキのは」

三木の発言は時々重要なことがあるから注意しよう。

ダデンキというのは家電製品を取り扱う店の一つで、デスト、ヨドガワ、ビックリと並ぶ大手である。

「あぁ、20:00に閉まるな」

やっと喋れた。

「いつも、行くんですか?」

栞も喋るタイミングを窺っていたみたいだ。

「ああ、時々な」

「いや、半年ぶりかな」

そう、俺はあまり、そういう所には行かないな。

「実は、私、そういう所に1度も言ったことがないんです」

え~!

マジかよ。

うそだろ?

やはりな・・・

四者四様の反応。ちなみに、トクさん・末本・三木・俺の順である。

夕食後、再び部室に戻って、『大富豪』を22:00までした。




22:25


幸一は栞と一緒に、スーパー『ナガナガ』に行った。

「ねぇ、幸一君。この後何か予定ある?」

と、みんなと別れた後に聞かれた。

もちろん、特に予定はないし、久しぶりに、栞と話すのもいいかな、なんて思っていたら・・・

「まさか、荷物持ちとはな・・・」

「ごめんね、お米が切れていて・・・」

「気にするな。ところで、栞は、こっちに住んでいるのか?」

「ん? あれ、言ってなかったかな?」

「聞いていないぞ」

スーパーナガナガの近くの裏道を進んでいくと、小さなアパートが見えてきた。

「着いたよ。ここが、私の家『さくら荘』だよ」

そこには、『さくら荘』と書かれた大きな看板が立っていた。

別に、大きな桜があるわけでもない。ただの2階建てのアパートである。

自転車を1階の適当な場所に停めて、2階に上がる。

「ここだよ」

204号室、ちなみに、一番奥の部屋だ。

おじゃましま~す。

「あれ? 誰もいないのか?」

「うん、1人暮らしだよ」

ということは、今は『一つ屋根の下で、若い男女が何とやら』ということか。

なんてことも気にせず、栞は

「コーヒーと紅茶、どっちが良い?」

と、聞いてきた。何というか、信用されているのか、純粋なのか・・・と考えながら、まかせる、と答えた。

俺は、コタツに入った。何もすることがなく、栞――横で薬缶に水を入れて、コンロの火を点けている――を見ていた。

なんだか嬉しそうな顔をしている。

「ん? な、何、幸一君? 顔に何かついてる?」

自然と目が合うんだよな、こういうとき。大体こういう時は、どう返すかな?

①ああ、さっき食べたバーガーのケチャップが右に、ああそこ。

②あ、いや、何でもない。

③いや、なんだか何だか嬉しそうな顔をしていたからな。

というのが普通だろうが、敢えて

「ああ、いつ見ても、栞は可愛いからな。」

と答えた。

「え、あ、う・・・そ、そんなことないですよ。」

顔が赤くなった。本当控えめなやつだ。

「うむ、一度鏡を見たほうがいい。」

「・・・やっぱり、顔に何かついてる?」

栞は口の周りを確認し始めた。

「いや、自分が可愛いことを自覚していないようだから。ああ、ちなみに、何も付いてないぞ。」

そうですか、と一安心したような顔をしているが、また顔を赤くしながら、顔を背けた。

いかん、栞をいじるのが癖になりそうだ。そろそろ本題に入ろう。

ピ~ゴロゴロ、ちなみにピ~は薬缶のお湯が沸いた合図、コタツでゴロゴロしているのは俺。

栞が、紅茶(ティーバッグではない)を淹れてくれた。

はいどうぞ、と言った栞はニコニコしている。

まさか、

①毒か!

②砂糖が大量に入っている?

③間違えて塩?

なんてことを考えたが、少し飲んでみると、何も入っていなかった。普通の紅茶だ。

否、普通の紅茶ではなかった、なんかこう、高級感がにじみ出てくるような、

そう喫茶店ではなく、レストランの500円くらいするようなやつだ。

「なぁ、この紅茶どこで買った?」

「ん? S駅に売っていたよ。これ」

そこには、『オンナ・ヨロコブ・サト・アラカジメ・紅茶』と書かれていた。

オンナがヨロコブ、サトでアラカジメ買っていた紅茶?

郷であらかじめ買っていた紅茶を飲んで、女性が悦んだ。とでも言いたいのか、まぁ少々捻ってあるな。

因みに、この紅茶は有名な紅茶だ。S県にある、温泉で有名な土地の紅茶だ。自分で答えを見つけるように、これ宿題。

「紅茶の淹れ方が上手だな」

「そう?」

「ああ、俺も家でこの紅茶を飲んでいるが、栞が淹れた方がうまいな。一応言っておくが、お世辞じゃない、事実だからな」

「うん、ありがと」

ずずずずず・・・、紅茶を啜る音ではなく、栞の携帯電話にメールが来た。

「ん? ああ、お父さんからだよ。28日に迎えに来るみたい」

そういえば、今何時だろう?携帯電話を見ると、23:00だった。

「終電逃したな」

家には『今日は泊まる』とメールしておこう。

「あ、泊まっていいよ」

いいのか?俺はバイトがあるときみたいに部室に泊まろうしていたのだが。

「あ、そういえば、『赤外線』してなかったね」

要するに、アドレス交換だ。全く『一つ屋根の下で、以下省略』なんてことを考えてないみたいだ。

「ああ、そうだな」

恋人同士なのに、アドレスを交換していなかったことに気づいた。今度こそ音信不通はごめんだ。

「さっき、お湯を沸かしている時に、何だか嬉しそうな顔をしていたな」

「ん? ああ、『コーヒーと紅茶、どっちがいい?』って聞いたら、幸一君が『まかせる』って言ったからだよ。あの時みたいに・・・」

あの時?俺は考えた。栞に飲み物を貰ったのは、確か・・・

「あの時か。懐かしいな」

そう、忘れもしない、中学2年の2月14日、所謂『バレンタインデー』だ。

「あの時からだよね、恋人になったの」

「ああ、そうだな」

栞が何か恥ずかしそうに

「ねぇ、あの約束のこと、覚えてる?」

ああ、もちろんだ。

栞は幸一の横に座った。

そして、二人は見つめあい、栞は目を閉じた。OKのサインだ。

幸一は、栞の唇に自分の唇をくっつけた。

これが、中学2年の栞が引っ越す時に交わした、約束だった。

『いつか再開して、その時でも、お互いの気持ちが変わらないなら、ファーストキスをしよう』

幸一は、栞の背中に手を回して、抱いた。栞は少し硬くなったが、そのまま、口を付けたままじっとしていた。

栞の唇は柔らかかった。キスはレモンの味とか言うが、バーガーのケチャップの味がした。

栞が、いつの間にか、俺の背中に手を回していた。つまり、胸が当たるはずなのだが、特に何も感じなかった。

本人も気にしているようだから、あまり言わないでおこう、というのが、常識だ・・・・・・が、敢えて、

「なあ、少しは大きくなったか?」

「ん? 大きくなったけど、幸一君も大きくなったから、あまり変化がないように感じているだけだよ。」

「・・・何が大きくなったって?」

「一応これでも、10cm伸びたんだよ。」

「そうか」

話がかみ合っていないが、敢えてスルーするのもいいかなと思ったが、

「あれ? 身長じゃないの?」

と聞いてきたから、

「胸」

とキッパリ答えた。

次の栞の反応は?

①頭にかみつく

②ビンタ

③おうふくビンタ

④頬をつねる

のどれかだと思ったが、

ただ、む~~、と言って、抱きしめてきた。

「悪い悪い、つい本当のことを言ってしまった」

というと、

「いいよ、自覚していますし、高校時代では、背も胸も一番小さかったですから」

顔を覗き込んでみると、泣いていなかった。

「まぁ、恋人がいるんだからいいじゃないか」

「うん。」

・・・私、知っているよ。幸一君は本当は優しくて頼りになるってこと。

「えへへ、幸一君大好き。・・・こんな、私を愛してくれて、嬉しいよ」

「まぁ、俺もかわいい彼女がいるって、自慢できるしな」

自慢なんて、あまりしないくせに・・・さっきしたけど。

「久しぶりに、あの頃の話でもしようか」

「ああ、どこからがいい?」

「私たちが出会った時から」

栞は紅茶のおかわりを用意した。

少し冷めても栞の紅茶はうまかった。

二人は横になり、懐かしい中学時代の思い出を語りあった。



ED



次回予告 第2話~出会い~


真田幸一「中学1年の春休み、というより、小学6年の春休み、3月中に甲本栞は、引っ越してきた」


甲本栞 「でも、中学の1年間はクラスに友達ができなかった。なんで?」


真田幸一「次回、薄命物語、第2話~出会い~」


甲本栞 「幸一君と仲良くなったのはいつだっけ?」





次回予告があったり、なかったり、という中途半端な状態です。

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