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(逃がさない)無自覚ガチ恋S級冒険者が、バレたらおわりな天使の正体にじわじわ迫ってくる(たすけて)  作者:
第1章

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エピローグ

 深層の空気は、昼夜の概念を拒むように静かだった。

 秋の気配も、風の匂いも、陽射しの温度も届かない。

 とあるセーフティエリアでは、ただ魔石灯の淡い光だけが、救援箱の影を長く伸ばしている。


「……あれ?そういえば今回は手紙、入ってなかったな」


 パンを取り出した冒険者のひとりが、箱の中を覗き込みながら言った。

 ほかの仲間たちも集まってくる。腕の立つ彼らの表情には、少しの寂しさすら浮かんでいた。


「いつも励まされてたのになぁ、天使さんの手紙」

「綺麗な字なのに堅苦しくないし、やさしくて癒されるんだよな、あれ」

「分かる。あとあれ読むと無事に帰らなきゃなって気が引き締まる」


 危険な地であることを忘れるような、穏やかな雑談。

 その空気の中でひとりが何かを思い出したように顔を上げた。


「そういやさ……天使さんの手紙ってさ」


 仲間たちが振り返る。


「あの手紙の羊皮紙、結んでる紐の結び方さ、いつもすっげぇ綺麗なんだよな。あれ、なんか職人みたいなんだよ」


「……ああ、分かる。丁寧な性格出てるよな」


 そこで魔法師の女性が、ふっと笑って肩をすくめた。


「こんな所まで危険を冒して届けてくれるのに、私たちへの心遣いを忘れない女性なんだもの。きっと、普段からこういう丁寧な仕事をしてる人なんでしょうね」


 その言葉に、ほかの者も頷き、穏やかな空気が広がった。



 そのとき──

 彼らのすぐ近くで、決してほどけぬ運命の結び目がひっそりと結ばれた。


 その事実を知るものは、誰もいない。


 第1章 終

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