(いろんな世界を見てきた魔王と未来の依頼)
カゲナの父――彼は魔王になるまでに、数えきれないほどの世界を旅してきた。
神さまが支配する世界。
人の姿がデータに変わり、情報だけでできた世界。
妖怪や怪物がはびこり、夜が終わらない世界。
遊びが命を決める“ゲームの世界”。
世界ごとにルールはちがい、そのせいで力を封じられることもあった。
それでも彼はあきらめず、見て、学び、すべてを自分の力に変えていった。
出会う人々も文化も新しく、すべてが驚きと学びに満ちていた。
旅は厳しく、数えきれない試練が立ちはだかった。
だが彼は乗り越え、ついに魔王の座へとたどり着いた。
その旅の途中で、ひとりの若き人間の女性と出会う。
彼女は未熟で、力も乏しかった。
それでも強くなりたい理由を胸に秘め、魔王と共に歩み出した。
彼女の前にも数々の試練が待っていた。
炎の地を越え、知恵を試される迷宮を抜け、心を砕こうとする闇に挑んだ。
幾度も倒れそうになりながら、彼女はあきらめなかった。
努力を重ね、一歩ずつ前へ進んだ。
やがて――未来を見通す力が芽生えた。
それは与えられたものではない。
苦労と努力の果てに、彼女自身が掴み取った力だった。
人々はその姿に敬意を抱き、こう呼んだ。
――「未来を見る魔王」と。
ふたりの魔王は語り合った。
「いくつもの世界をつなげて、誰もが自由に行き来できる場所をつくろう」
その願いから生まれたのが――“ギルド町”。
雲に包まれ、外からは入れない結界の世界。
町の奥には無数の扉が並び、別の世界へとつながっていた。
だが、そのほとんどはまだ閉ざされたままだった。
広い町は人影も少なく、どこか寂しい。
それでも依頼はすでに集まり始めていた。
薬草集めのような小さな仕事から、未来を変える大きな使命まで。
最上位には――“魔王クラス”と呼ばれる依頼すら存在した。
その多くを掲げるのは、未来を見る魔王だった。
「この世界の“奴ら”を倒せ」
「時の流れを乱す者を探せ」
「未来で起きる争いを止めろ」
理由は誰にも分からない。
だが彼女の依頼を果たすたびに、未来は少しずつ変わっていった。
広場を歩くのは、魔王が造り出した案内役のロボットたち。
教育機関も設けられ、若き冒険者が基礎を学んでいた。
町はまだ未完成だった。
だが時が経てば経つほど技術は進み、扉は次々と開かれ、やがて多くの世界から人々が集まるだろう。
その始まりを支えていたのは――
いろんな世界を見てきた魔王、カゲナの父の願い。
そして、未来を見る魔王が紡ぐ数多の依頼。
「いろんな世界を、ひとつにつなげたい」
その夢は、この場所から始まった。