「欲する心と、守る心」(1話より前)
ノクシア:
「ノクは、たくさん欲しがるの。
強さも、愛されることも、誰かに必要とされることも……ぜんぶ。
でもさ、“そんなのダメ”って、大人はすぐ言うでしょ?
“我慢が美徳”とか、“分をわきまえろ”とか、“そんなに求めるな”って。
ノクは思うの、それってズルいよ。
ノクたちの世界が壊れてるのは、“誰かが我慢したまま黙ってたから”じゃないの?
声を上げて、欲しいって叫んでも、いい世界のはずなのにね。
ノクはね、もっと欲しがっていい世界にしたいの。
誰かを独り占めしたいんじゃない――“ちゃんと一緒にいたい”って言える勇気が、ほしいだけ。」
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カゲナ:
「ボクはいつも、考えてばっかりなんだ。
これが正しいのか、間違っているのか――どうすれば、誰も傷つかずに済むのかって。
でも、正しさって案外ずるいよね。
声の大きい人や、多数決が“正しい”って言ったら、それが“答え”になる。
そんなのって、本当の意味で“守る”ことになるのかな。
ボクはね、迷ってる自分を否定したくない。
誰かのことを思って、それでも決められないボクを、“弱い”って笑うなら、それはきっと優しさを知らない人だよ。
ボクが戦うのは、“強くあるため”じゃない。
誰かと一緒に、弱さごと抱えて生きていくために――その場所を、守りたいだけなんだ。」