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第12話:魔族の料理人、キメラのスープで「毒見役」に

①魔王城会議

 魔王城の大広間は、もはや「アザゼルの魂の抜け殻が風に揺れる音」しか聞こえない、深淵の静寂に包まれていた。


 レッドドラゴン部隊による「視覚的友好アピール」が、勇者たちに「焼き討ち」と誤解され、結果として経験値すら与えられないまま、勇者たちの「再戦へのモチベーションを爆上げ」してしまったという報告を受け、アザゼルは完全に「虚無の向こう側」へと到達していた。

彼の目は虚ろに天井を見つめ、口からは微かな泡がこぼれている。


「うむ!

我らがレッドドラゴン部隊の『芸術的表現力』が、勇者どもに伝わらなかったとは、誠に痛恨の極みである!

彼らの『視覚情報における危険認知の優位性』を鑑みれば、これもまた、深き考察の対象であるな!」


 魔王ゼルガディスは、腕を組み、深く頷いた。

ゴルグの専門用語を、まるで自らの言葉のように使いこなしている。

彼の脳内では、勇者たちが、レッドドラゴンのブレスに感動し、そのあまりの美しさに涙を流しながら「また見たい!」と懇願しているのだろう。


 アザゼルは、もはや「ツッコミ機能そのもの」が停止していた。


「魔王様……お願いです……

もう、休ませてください……

私の胃は……私の魂は……もう、限界です……」


 アザゼルは、床に張り付いたまま、か細い声で呻いた。

その声は、もはや生命の響きを失っている。


「フン!

愚かなレッドドラゴンどもですわね。

わたくしの『魅惑の香水』をブレスに混ぜて勇者たちに浴びせていれば、彼らはたちまち官能的な香りに包まれ、戦うどころか、その場で求愛ダンスを踊り出したはずですわ!

美しさは、全ての敵を味方にする究極の武器ですもの!」


 リリスが、扇で口元を隠しながら、相変わらず的外れな「美」の論理を語る。

彼女の香水瓶は、もはや「脳を溶かすフレグランス」と化している。


「ぐおおお!

ブレスが駄目なら、次は『友好のボディビルディング』だ!

俺が勇者の前で全力で筋肉をアピールしてやる!

そしたら、きっと俺の肉体に畏敬の念を抱き、ひれ伏してくれるはずだ!」


 ガオガオが、早くも次の「おもてなし」の準備に取り掛かろうと、大広間で奇妙なポーズを取り始めた。

その度に、彼の筋肉がピクピクと痙攣する。


 アザゼルは、もはや自分の意識が、肉体から完全に分離し、遠い宇宙の彼方へ旅立ってしまいそうだった。


「……アザゼル殿。

これまでのデータ分析により、『直接的な身体接触』、『直接的な聴覚刺激』、『生産活動を通じた間接的友好形成』、そして『遠距離からの視覚的友好アピール』によるアプローチの限界が明確になりました。

勇者は我々の『友好の意図』を、一貫して『攻撃』と解釈し、最終的に『戦闘』に持ち込むか、あるいは『戦意を向上』させる傾向にあります。

そこで、次の作戦は『味覚を通じた心理的接近理論』を推奨します」


 ゴルグが、いつもの冷静な声で、しかしどこか確信に満ちた響きで発言した。


 アザゼルは、その「理論」という言葉を聞いただけで、彼の「胃の幽霊」が激しく疼くのを感じた。


「『味覚を通じた心理的接近理論』……?

ゴルグ様……今度こそ……今度こそは、まともな……」


 アザゼルは、幽霊のような声で懇願する。


「ご安心ください、アザゼル殿。

今回の作戦は、非常に繊細かつ、直接的に『心の壁』を取り払う効果があると判断します。

人間は『美味しい食べ物』を共有することで、深い信頼関係を築き、警戒心を解くというデータがあります。

彼らの警戒心を解き、レベル上げ効率を低下させるには、彼らの『舌』と『胃袋』に直接訴えかけるのが最も効率的であると判断しました。

そこで、魔界随一の料理人、クッキングデーモン部隊に指令を出します」


 ゴルグは、無機質な視線でアザゼルを見つめながら、新たに広げた巻物を見せた。

そこには、禍々しい見た目のデーモンが、笑顔で美味しそうな料理を振る舞い、人間たちが「美味しい!」と叫びながらそれを食べている、奇妙な絵が描かれている。


 アザゼルは、もはや「自分の精神がどこにいるのか」すら分からなくなっていた。


「クッキングデーモンたちは、森の開けた場所で、『至高の食材キメラの肉』を使った『愛情こもったスペシャルスープ』を振る舞います。

勇者たちが現れたら、その見た目の禍々しさに怯えるでしょうが、クッキングデーモンは彼らを『温かく迎え入れ』、そのスープを『試食』として提供します。

魔界では至高の食材であるキメラの肉ですが、人間にはその味覚は理解しがたいものかもしれません。

しかし、彼らに『おもてなしの心』と『料理への情熱』を伝えることで、『食を通じた信頼関係』を構築し、戦闘への意識を逸らすことが可能です!」


 ゴルグが淡々と説明する。

アザゼルは、その説明に脳の血管が「宇宙までブチ切れそう」になった。


(『キメラの肉』!?

それは見た目がグロテスクすぎて、人間からしたら『呪われた食材』だろ!

『愛情こもったスペシャルスープ』って、人間からしたら『毒薬』にしか見えねえ!

『試食』って、絶対に『毒見』と誤解されるに決まってる!

『温かく迎え入れ』って、どうせニヤニヤしながら「食え食え」って強要するに決まってるだろ!

何が『味覚を通じた心理的接近』だよ!?

完全に『強制毒味によるテロ』じゃねえか!!)


 アザゼルの脳内は、悲鳴とツッコミの嵐だった。


 ゴルグの理論は、常に「魔族の視点」と「人間側の常識の乖離」を極限まで突き詰めてくる。

今回は特に、その「美味しい料理」が「死への招待状」に見えるという、最悪のパターンだ。


「ほう、『スペシャルスープ』とな!

それは素晴らしい!

食は生命の源!

我らが魔族の『繊細な味覚』が、ついに勇者どもにも伝わるのだな!

よし、アザゼル!

この『味覚を通じた心理的接近理論』、ぜひとも試してみるべきだ!」


 魔王ゼルガディスは、目を輝かせながら頷いた。

彼の脳内では、勇者たちが、クッキングデーモンのスープに舌鼓を打ち、感動のあまり「おかわり!」と叫んでいる、牧歌的な光景が広がっているのだろう。


「そうですわ!

わたくしの『魅惑の香水』をスープに一滴垂らせば、勇者たちはその香りに誘われ、どんな怪しい見た目のスープでも、たちまち最高のご馳走に感じたはずですわ!

美しさは、味覚をも支配するのですもの!」


 リリスが、香水瓶をキラキラと輝かせながら提案する。


「ぐおおお!

スープが駄目なら、次は『友好の食い倒れ勝負』だ!

俺が勇者と全力で早食い勝負してやる!

そしたら、きっと俺の食欲に感動して、友達になってくれるはずだ!」


 ガオガオは、早くも次の「おもてなし」に胸を躍らせ、大広間で仮想のスープをかき込むジェスチャーを始めた。


 その勢いで、アザゼルの胃の幽霊がさらに痛んだ。


「……クッキングデーモン部隊よ!

『迷いの森』のさらに奥、魔王城に続く道で勇者たちを待ち構えよ!

決して攻撃的な調理器具は使うな!

その代わりに、『愛情こもったスペシャルキメラのスープ』を勇者たちに振る舞え!

勇者が恐れても、『笑顔で強引に』試食を促すのだ!

そして、絶対に『スープをこぼすな』!

我が魔族の未来は、お前たちの『料理の腕』にかかっている!」


 アザゼルの指令は、もはや「遺言」のようだった。


②勇者との遭遇

 その日の夕刻。

『試練の山脈』を越え、『迷いの森』のさらに奥へと足を踏み入れた勇者パーティーは、そこで異様な臭いを察知した。

それは、焦げた肉と、形容しがたい異臭が混じり合ったような、嗅いだことのない悪臭だった。


「うわっ……なんだこの臭い……」

 レオが顔をしかめた。


「レオ様、この先に何かいますわ! 非常に不吉な魔力の反応を感じます!」

 セリアが魔法杖を構え、警戒を強める。


「くっ……

これは、毒か!?

何らかの状態異常を引き起こす魔物か!?」

 ライアスが聖書を構え、額に汗を浮かべる。彼の分析は、常に最悪の事態を想定する。


「うう……変な臭い……

お腹が、気持ち悪くなってきた……」

 ミラは、既に吐きそうになっていた。


 その時、深い森の奥から、禍々しい見た目の人影が現れた。

それは、巨大なコック帽を被り、血の染みのようなエプロンをつけた、全身真っ赤な皮膚のデーモンだった。

その手には、巨大な鍋と、お玉が握られている。


「な、なんだあれは!?

デーモン……料理人!?」


 レオが目を疑った。

目の前のデーモンは、満面の笑みを浮かべているが、その顔には無数の傷跡があり、まるで悪夢から飛び出してきたかのような異様な雰囲気を放っている。

そして、鍋からは、ぐつぐつと煮立つ不気味な液体が湯気を立てていた。


「クッキングデーモンですわ!

な、なぜこんなところに……」

 セリアが驚愕の声を上げた。


「くっ……まさか、これも魔王軍の新たな策略か……!

毒を盛るつもりか!」

 ライアスが聖書を構えながら、顔を歪める。

彼はクッキングデーモンの行動を、古典的な「毒殺」の戦術だと解釈した。


「ひぃぃぃ!

毒!?

私、死んじゃうぅぅぅ!」

 ミラは、恐怖でその場に座り込んでしまった。


 クッキングデーモンは、アザゼルの指令とゴルグの「普遍的娯楽理論」、そして「味覚を通じた心理的接近理論」を懸命に解釈していた。

彼らにとっての「おもてなし」とは、その至高の料理を、最高の状態で勇者たちに提供することであると結論付けたのだ。

そして、「強引に試食を促す」という指令を文字通り受け止めた。


 魔物が現れた。どうする?


  たたかう

  ぼうぎょ

  ▶ようすをみる

  にげる


 勇者たちは、クッキングデーモンのあまりにも奇妙な外見と、漂う異臭に警戒し、まずは「ようすをみる」を選択した。


 【クッキングデーモンは、ニヤニヤしながら、スープを飲むように強制してきた!】


 クッキングデーモンは、勇者たちが警戒していることに気づくと、満面の笑みを浮かべた。

その笑顔は、人間にとっては恐怖でしかなかったが、クッキングデーモンにとっては「最高の笑顔」だった。

彼は、巨大な鍋からお玉でスープをすくい上げると、それをミラの口元へと強引に持っていこうとする。


「ウォーグ!(さあ、召し上がれ!)」

 クッキングデーモンの声は、人間には不気味な低いうなり声に聞こえる。


「ひぃぃぃ! や、やめてぇぇぇ!」

 ミラは、青ざめた顔で抵抗する。

スープからは、形容しがたい湯気が立ち上っており、見た目も禍々しい色をしている。


「ミラ! 危険です!」

 セリアが叫ぶ。


「ぐっ……

まさか、強制的に毒を飲ませるつもりか!」

 ライアスが聖書を構え、援護しようとする。


 クッキングデーモンは、ミラにスープを飲ませようと、前のめりになった。

その時、僅かにスープが入ったお玉が揺れる。


 スープの一部が飛んでしまい、ミラの目に入った!


「きゃあああああああああああああっ!!!」


 ミラの絶叫が森に響き渡った。

彼女の目に、煮えたぎるスープの滴が飛び込んだのだ。

その不気味な色と得体の知れない成分が、ミラの脳に「毒だ!」と信号を送った。


 ミラが驚いて、クッキングデーモンのスープが入っている器を弾いてしまった!


 ミラは、驚きと恐怖、そして目に入った違和感に、反射的にクッキングデーモンの持っていたお玉を弾き飛ばした。

その瞬間、お玉から零れ落ちたスープが、目の前にいたレオの頭から浴びせられる。


 スープの中身がすべてレオにかかってしまい、やけどをしてしまった!


【レオは20のダメージを受けた!】


「ぐわあああああああああっ!!?

な、なんだこれぇぇぇぇぇえええええええええええっ!!?

あちちちちちちちちちちちっ!!!」


 レオは、全身に煮えたぎるスープを浴びせられ、絶叫した。

キメラのスープは、その奇妙な成分と、魔界の食材特有の「触れるとジンジンする感覚」が、レオの肌に「灼熱のやけど」という感覚を覚えさせた。


 彼の顔は赤く腫れ上がり、髪からは湯気が立ち上っている。


「レオ様!?」

 セリアとライアスが、驚愕の声を上げた。


「許さない……

許さないぃぃぃいいいいい!!」


 ミラは、目に激痛が走りながらも、親友のレオが苦しむ姿を見て、その目に炎を宿した。

彼女の背後には、鬼の形相が見えるようだった。


③戦闘と結果

 勇者たちは、クッキングデーモンの「毒見役強要」と「レオへの熱湯攻撃」に逆上し、本能的にクッキングデーモンを『敵』と認識し、攻撃を開始した!


 レオは、やけどの痛みに悶絶しながらも、逆上して渾身の力で剣を突き出した! クッキングデーモンは倒れた!


 セリアは、怒りに震えながら、渾身の『ファイアストーム』を放った! クッキングデーモンは燃え尽きた!


 ライアスは、目に涙を浮かべながら、聖なる裁きの光を放った! クッキングデーモンは消滅した!


 ミラは、鬼の形相でクッキングデーモンに短剣を突き刺した! クッキングデーモンは倒れた!


「はぁ……はぁ……

なんとか、倒した……」

 レオは、全身を震わせながら、地面にへたり込んだ。彼の肌は真っ赤に腫れ上がり、体中から奇妙な匂いが立ち上っている。


「信じられませんわ……

あれが、料理だと……?

まるで拷問ですわ!」

 セリアが荒い息を吐きながら憤慨する。彼女の魔法杖は、もはや焦げ付いている。


「くっ……

やはり、魔族は我々を陥れることしか考えていないのか……!

毒殺とは……卑劣な!」

 ライアスは、今もクッキングデーモンの意図を「毒殺」と誤解している。


「レオ……ごめんね……」

 ミラは、目に涙を浮かべながら、レオの顔をそっと撫でた。


 勇者たちは、クッキングデーモンを撃破したものの、身体的にも精神的にも深い疲労を負っていた。

特にレオは、この奇妙な「やけど」がしばらく残るだろう。

しかし、彼らの経験値は着実に増えていた。


 勇者たちはクッキングデーモンを撃破した!


 レオは経験値【150】を手に入れた!

 セリアは経験値【150】手に入れた!

 ライアスは経験値【150】手に入れた!

 ミラは経験値【150】手に入れた!


「経験値は上がったけど……

このやけど、どうしてくれるんだよぉ……」


 レオは、上がった経験値よりも、自身の肌のヒリヒリとした痛みに悶えていた。

彼の心には、魔物に対する新たな復讐心が芽生えていた。


④結果報告

 魔王城。


 クッキングデーモン部隊からの報告を受けたアザゼルは、最早、胃の残骸どころか「魂魄すら消失寸前」の状態だった。

彼の表情は、完全に壊れてしまった人形のようだが、その瞳の奥には、かすかな光が宿っているように見えた。


 それは、「もう何も感じない」という境地に達した人間の目だった。


「クッキングデーモンが『愛情こもったスペシャルキメラのスープ』を振る舞おうとしたら、ミラの目にスープが入って、器を弾いたスープがレオにかかって『やけど』させて、勇者たちが逆上して全滅させただとぉぉぉぉお!?

しかも、着実に経験値を稼がせてるじゃないですかぁぁぁあ!!」


 アザゼルは、もはや喉から「魂の断末魔」のような音が漏れ出た。


「うむ……

今回のデータから、『普遍的娯楽理論』における人間側の『見た目への先入観』および『微細な飛沫への過剰反応』が原因と分析。我々の『おもてなしの料理』は、彼らにとって『毒物』と認識され、『触れると危険』と判断されたようです。そして、『やけど』という認識は、彼らの『戦闘意欲』を著しく高めてしまった模様。次なる作戦では、より『五感に訴えかけない、精神的なアプローチ』が必要不可欠ですな」


 ゴルグが、眉間に深いシワを寄せ、真剣な顔で分析している。

彼の言葉は、一見すると論理的だが、その根底にあるのは相変わらず「普遍的娯楽理論」という、人間には理解不能な「遊び」の概念と、「魔族独自の常識」が複雑に絡み合っていた。


 彼は、クッキングデーモンが全力で「料理の腕」を披露したにも関わらず、勇者が「美食」を理解しなかったことを、深く憂いているようだった。


「なるほど、やはり我らの『おもてなし』が、まだ味覚に訴えかけすぎたのだな!

よし、アザゼル!

次はもっと内面へと深く響く、しかし物理的な接触を伴わない『哲学的な問いかけ』を用意するのだ!

我らが魔王軍の『高尚なる知性』を、勇者どもに見せつけてやるぞ!」


 魔王ゼルガディスは、ゴルグの言葉に深く納得したように頷き、アザゼルに新たな指令を出す。

その顔は、まるで深遠な哲学者のようだった。


「そうですわ!

わたくしの『魅惑の香水』を、勇者たちの精神に直接作用するように改良すれば、彼らはその香りに導かれて、私たち魔族の『知性』に心酔し、自ら進んで魔王城の図書館で哲学書を読み漁るはずですわ!

美しさは、知識への扉を開く鍵ですもの!」


 リリスが、手のひらの上で香水瓶をくるくると回しながら、新たな提案を始める。

彼女の提案は、もはや「脳を洗脳する香水」と化している。


「ぐおおお!哲学か!

よし、俺が最強の『筋トレ哲学』を勇者の前で披露してやる! 筋肉の奥深さに触れたら、きっと勇者も俺の思想に共感してくれるはずだ!」


 ガオガオは、既に次の「おもてなし」に胸を躍らせ、その場で奇妙なポーズを取りながら、難解な哲学用語を叫び始めた。


 アザゼルは、もはや自分の魂が、この魔王軍の狂気から解放されることをただ願うばかりだった。


(頼む……

誰か……誰か、この地獄から俺を救ってくれ……!

このままでは、本当に魔王軍が『魔界哲学研究会』になってしまう……!)


 アザゼルは、最後の気力を振り絞って、心の中で叫んだ。

彼の魂は、確実に「無」へと収束しつつあった。


 この魔王軍で生き残る道は、無限に続く、シュールな哲学者の悪夢のようだった。

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