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政党②政党の仕組みと現実

次の授業。


魔王インディゴが教室に現れると、小春はすでに黒板に新しいタイトルを書いていた。


──【政党の仕組みと現実】──


「ふむ、また難しそうな題だな」


「いえいえ、今回は肩の力を抜いて聞いてください。今日のテーマは『政党って中も結構ドロドロしてるよ』って話です」


「……それは興味深いな」


 小春はチョークを指で弄びながら、にやりと笑う。


「政党って、同じ考えを持った人たちが集まってできる──って言いましたよね?」


「うむ、そうだったな」


「でも、全員が本当にまったく同じ考えを持ってるわけじゃないんですよ」


「ほう?」


 小春は黒板に小さな円をいくつも描き、それらを線で結んだ。


「政党の中にも、考え方の違いはあります。たとえば『もっと積極的に戦うべきだ!』って強硬派と、『いやいや平和路線がいい』って穏健派が同じ政党にいたりするんです」


「……同じ政党なのに争うのか?」


「はい。これを『派閥』って呼びます」


 小春は『派閥』と太字で書き加えた。


「派閥同士が協力できればいいんですが、時には内部で権力争いが起きたりもします」


「む、まるで王国の宮廷争いのようだな」


「そうそう、それに近いです。誰が党のリーダーになるか、どの政策を優先するかで揉めることもあります」


 魔王インディゴは腕を組み、真剣な顔でうなずいた。


「つまり、政党もまた一枚岩ではない、ということか」


「その通り。政党というのは、外から見たらひとつの塊に見えるけど、中は案外バラバラだったりします」


 小春は手を止めると、魔王を真っすぐ見た。


「でも、それが悪いってわけじゃないんです。むしろ色んな意見があるからこそ、政党は強くなれることもあります」


「……ほう?」


「色んな考えをぶつけ合って、最適な答えを探す。それができる政党は、成長できるんです。逆に、内部を力で押さえつけてばかりの政党は、いずれ崩れます」


「うむ、民の国でも、独裁は長続きせぬからな」


 二人は軽く頷き合った。


「さて、ついでにもうひとつ。政党がどれくらいあるかでも、国の政治の形は変わります」


「む?」


 小春は黒板に大きな円を二つ描いた。


「例えば──政党が二つだけ、っていう国もあります」


「二つだけ?」


「はい。これは『二大政党制』って言います。有名なのは、アメリカですね。民主党と共和党、ほぼこの二つだけが交互に政権を取っています」


 インディゴは興味深そうに前のめりになった。


「なぜ二つだけなのだ?」


「単純です。二つだと、国民にとって選びやすいんです。白か黒か。はっきり選べるから、選挙も分かりやすい」


「ふむ……しかし、多様な意見は拾えぬのではないか?」


「その通りです! 二大政党制の弱点は、少数派の意見が埋もれやすいこと。だから、国によっては──」


 小春はさらに小さな円をたくさん描いた。


「たくさんの政党がある『多党制』を採用しているところもあります。ドイツとかイタリアが有名ですね」



「なるほど、こちらは多様な意見を反映できるわけか」


「はい。ただしその分、政権を作るのが大変です。複数の政党が手を組まないといけないので、時間がかかったり、政権が安定しなかったりします」


「ちなみに、政党が一つだけの国もありますが、これは一党独裁体制と呼ばれていて、専制政治とあまり変わりません」


 小春は最後にきゅっと線を引いて、まとめた。


【政党の仕組みと現実】

・政党内部にも意見の違い(=派閥)がある

・二大政党制=分かりやすいが少数派が不利

・多党制=多様性はあるが不安定になりやすい


「というわけで、政党というのは、外から見るよりずっと複雑で、繊細な生き物みたいなものなんですよ」


「ふむ……政党を動かすのは、結局、人間なのだな」


「そうです。だから、結局は『人』を見なきゃいけないんです」


 魔王インディゴは、小さく笑った。


「……民の心が育たねば、良き政党も育たぬ、ということだな」


「ええ、魔王様、ほんと賢いです。そういうことです!」


 二人はまた、少しだけ成長した気がした。



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