政党①
「さて、今日はその続きですね」
小春は黒板に『政党』と大きく書き込んだ。
「政党──だと? なんだそれは」
魔王インディゴは眉をひそめた。
「はい、政党とは、簡単に言うと『同じ考えを持つ人たちが集まった政治グループ』のことです。似たような意見を持つ人たちが集まって、政治を動かしやすくするんですね」
「ふむ……なぜそんなものが必要なのだ? わざわざ集まらなくても、優秀な者が単独で政策を考えればよかろう」
「それが難しいんですよ」
小春はチョークを回しながら説明を続けた。
「一人一人がバラバラに意見を言い合っていたら、いつまで経ってもまとまりません。例えば魔王様が国を攻めるかどうか決める時、家来たちが皆好き勝手なことを言ったらどうなります?」
「……混乱するな」
「でしょう? だから、似た考えの人たちが集まって『うちはこういう政策を目指します!』ってまとめるんです。そして国民に、『私たちに任せてください!』と訴え、選挙で支持を得る。これが政党の役割です」
「なるほど……つまり政党とは、意見を整理するために作られる集団、というわけか」
「その通りです! 政治をスムーズに進めるために必要な仕組みなんですよ」
小春は黒板に『政党の役割』と書き、さらに項目を列挙していった。
---
【政党の役割】
・国民の意見をまとめる
・政策を提案する
・政権を担当する
・政治家を育てる
「特に大事なのは『国民の意見をまとめる』ってことですね。国民全員がバラバラなことを言っていたら、政治は進みませんから」
「ふむ……だが、小春よ。もしもその政党というやつが、自分たちの利益ばかり追い求めたら、どうなる?」
インディゴの問いに、小春はにやりと笑った。
「さすが魔王様。そこなんです。政党にも問題点はあります」
小春は黒板にもう一つの見出しを書いた。
---
【政党の問題点】
・党利党略に走る
・金権政治に陥る
・派閥争いが起きる
・国民の声が届かなくなる
「例えば、政党が国民のためじゃなく、自分たちの権力やお金のためだけに動いたら──国は腐敗します。これを『党利党略』と言います」
「……要するに、私利私欲に走るというわけだな」
「はい。そして、選挙に勝つためにお金をばらまくようなことをしたり、金持ちだけが政治を動かすような事態になれば──『金権政治』になります」
「金で政治を買う……!」
魔王の顔に怒りが滲んだ。
「そうです。そして同じ政党の中でも派閥ができて、内部で権力争いを始めたりするんです。これが『派閥争い』ですね」
「つまり、政党も万能ではない、ということか」
「はい。だからこそ、国民がしっかり監視する必要があります。国民が賢くなければ、どんな制度も腐るんです」
インディゴは腕を組み、静かに頷いた。
重々しい沈黙が部屋を満たす。
やがて魔王は、重い声で言った。
「……小春。俺たち魔族の国にも、その政党とやらを取り入れたほうがいいのか?」
「それは──まだ早いでしょうね」
小春はチョークを指先で弄びながら言った。
「まずは国民に『話し合う』という文化が根付いてから。今は、魔王様が優秀ですから、専制政治でも国は安定しています。でもいずれ、魔族の数が増えて、色んな考えを持つ者が増えたら──その時こそ、政党や議会が必要になるでしょう」
「……その時までに、俺も民も成長せねばならんな」
「そうです。王も民も、どちらか一方だけじゃなく、両方が成長しなきゃいけないんです」
魔王インディゴは、ゆっくりと目を閉じた。
この国の未来を、その胸に思い描くように。
一方、小春は黒板に最後の一言を書き足していた。
---
【政党とは】
同じ考えを持つ者たちが集まり、政治を円滑に進めるための集団。
しかし、常に私利私欲に陥る危険もあるため、国民の賢さが問われる。
「よし、今日はここまでです!」
「うむ、良い学びだった……小春、次は何を学ぶ?」
「もうちょっと政党の話をしましょうか。ただし字数の都合でまた次回!」