この自由はな、いわば人間の最後の砦だ!〜思想・良心の自由〜
「みんなーーッ! 自由って聞くと何を思い浮かべる!? カフェでのんびり読書!? 夜ふかし!? ラーメン替え玉無料!?」
嵐山先生が教壇の上で、腕をぐるぐる振り回しながら叫んだ。
「……先生、今日って“思想・良心の自由”ですよね?」
小春の静かなツッコミに、先生が満面の笑みで指差す。
「ビンゴおおお!! ということで今日は、精神的自由のど真ん中! **“思想・良心の自由”**について取り上げるぞ!」
黒板に一気に書き込まれる文字:
『思想・良心の自由』=心の中で何を考えようと自由。国家が介入してはいけない!(憲法19条)
「この自由はな、いわば人間の最後の砦だ! この中に入ってこられたら、もうそれは監視社会どころじゃない! ディストピア一直線ッ!」
「でも……先生。実際にその自由が問題になったこと、あるんですか?」
「あるともさ、小春!」
先生が取り出したのは、年季の入った判例資料。背表紙にはこう書かれていた。
『三菱樹脂事件』——思想を理由に採用拒否はアリか?
「時は1960年代! ある若者が三菱樹脂という会社の採用試験に受かったんだが、試用期間中に“学生運動をしていた過去”を理由に本採用を見送られた! 彼は怒って訴えた。“思想・良心の自由を侵害してる!”ってな!」
「なるほど……思想のせいで仕事が奪われたわけですね」
「その通り! つまり、心の中で何を思っていたかによって、職業選択の自由まで制限されてしまった! これは重大問題だ!」
先生は黒板に大きく「思想差別?」と書いた。
「だが……最高裁はなんと、こう言った!」
先生は判決文を高らかに読み上げた。
『憲法19条は、私人間には直接適用されない!』
「……え、どういう意味ですか?」
「つまりこういうことだ、小春。『国家が思想を取り締まるのはNG』だけど、『民間企業が思想を理由に採用を拒否する』のは、場合によってアリって言ったんだ!」
「えええっ!? じゃあ、自由って何なんですか?」
「いい質問だ小春! この事件を通してわかったのは、思想・良心の自由は絶対的ではないってこと。そして、私人間には間接的にしか効力が及ばないってこと!」
先生は厳しい顔で言った。
「企業にも“採用の自由”がある。だから、個人の思想と企業の自由、どっちを重く見るか、バランスが大事なんだ」
小春は机に頬杖をついて、ぽつりと言った。
「自由って、万能じゃないんですね。ぶつかる自由もある」
「その通り! だから憲法は、自由のバランスをとる技術でもあるんだ!」
チャイムが鳴った。先生は黒板にもう一つ、力強く書き足した。
“心の自由は絶対でも、社会との関係では調整が必要”
授業の終わり、小春はノートにそっと書き込んだ。
「自由は孤立していない」




