婚外子相続分、違憲判決
チャイムが鳴った。八限目。普通の学校ならありえない時間。
「今日も元気に補講! 人権講義〜!! 嵐山先生だよーん!!」
「……この時間帯にそのテンションは逆に怖いです」
小春の声が半オクターブ低い。机の上には、もはや諦めたように並ぶ六法全書とアイスティー。
「さぁて今回は! **“婚外子の相続分は差別されても仕方ないのか問題”**について、ガッツリ行くぞぉぉぉお!」
黒板に書かれたのは、
「婚外子=遺産少なめ? いいえ、それ違憲です!」
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昭和の終わりから平成初期にかけて、法律はこうなっていた。
「婚外子は、婚内子の半分しか遺産がもらえません」
「おいおい、“生まれ”によって権利が変わるのかい!? それって平等なんスか!?」というツッコミが、日本全国で沸き起こるには、ちょっとだけ時間がかかった。
しかし、2013年。ついに事件が起きる。
ある男性が死亡し、彼には「婚内子」も「婚外子」もいた。そして遺産相続をめぐって、兄弟姉妹で争いが勃発する。
「このとき婚外子が言ったセリフ、重いよ」
嵐山先生は、急に声のトーンを落とす。
「『自分の父親が誰であれ、それが自分のせいだったことは一度もない』」
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この事件は、最高裁まで持ち込まれた。
「ポイントは、**法の下の平等(憲法14条)**に反してるかどうか、だ!」
検察側の主張はこうだ。
「婚姻制度を尊重するために、法的に婚姻関係のある子とそうでない子で、相続に差をつけるのは正当な区別だ」
しかし、最高裁は違った。
「婚外子であることを理由に、相続分を制限するのは不合理な差別であり、憲法14条に違反する」
2013年9月、初めて婚外子相続分差別が違憲と判断された瞬間だった。
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「実はね、このときの最高裁判決、15人の裁判官のうち14人が違憲判断だったんだよ」
「1人反対した裁判官の意見も気になりますね」
「そう、小春くん、そこが大事。反対意見には“価値観の急激な変更は混乱を生む”っていう指摘があった。でも……14人は言った。“価値観はもう変わってる。法律が追いついてないだけだ”と!」
法廷にいた弁護士たちは、この瞬間、何人も泣いたという。
「親の結婚歴で子の権利が変わるなんて、おかしいです」と語った婚外子の女性は、判決後のインタビューでこう語った。
「……長かったけど、ようやく“自分”が認められた気がします」
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「こうして、民法の条文は改正され、婚外子も婚内子と同じ相続権を持つことになった」
「現実が法を変えるって、こういうことなんですね」
小春が少しだけ、筆を走らせる。
「そのとおり。裁判は、時代の温度を写す鏡なのだ!」
「いいこと言った風ですけど、語尾がどうしても軽いです、先生」
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夕陽が差し込む教室。嵐山先生のスーツの肩に、ほこりが少し見えていた。
「さて、次回は――“夫婦別姓は実現するのか!?”の巻だッ! ついてこれるか、生徒諸君!」
「帰る前提でいたんですけど……」
「小春くん、あと30分だけ青春させて!」




