第〇講「人権保障と平等権 〜差別のない世界をつくるには?〜」
「やあああああ諸君!地球上すべての人間は、生まれながらにして自由で平等だって知ってるかぁっ!?」
始業のチャイムと同時に、教壇から爆音が飛んできた。いつものことだ。クラスの誰も動じない。いや、数人はむしろ楽しみにしている節すらある。
私、小春はそんな彼らを横目にノートを開く。
「先生、その台詞、フランス人権宣言ですね。1789年、革命期のやつ」
「おおっ、流石は我がクラスの人権エース・小春!いいぞいいぞーっ!今日はその続き、『人権保障』の歴史と、現代の『平等権』について学ぶぞ!」
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嵐山先生は黒板に勢いよく「人権保障」と書くと、チョークで丸を三つ並べて囲った。
「まず、これが基本中の基本だ!“自然権思想”!つまり、『人間には生まれながらにして持ってる権利があるよね』っていう考え方!誰かにもらったもんじゃない!初期装備だ!」
「RPGの勇者が最初から剣持ってる、みたいな感じですか」
「そうそう、レベル1でも装備済み!それが生命・自由・幸福追求の権利!こういう思想が、近代の民主主義のベースになった!」
先生はチョークをクルッと回して、次に「自由権」「社会権」「平等権」の三つを派手に書き分けた。
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「さぁまずは『自由権』!これは国家が個人に干渉してこないようにする『放っておいてくれ権』!」
「……言い方」
「自由権は大きく三つあるぞ!身体の自由!精神の自由!経済活動の自由!」
板書が怒涛の勢いで進む。
「つまり『勝手に逮捕しないでね!』『思想は自由だよね!』『職業選択とか自由でしょ!』ってことだ!国家はこの自由を『邪魔しない義務』がある!」
「それ、具体的には憲法18条から21条あたりですね。思想・信条の自由とか、表現の自由も」
「そうだ小春!その調子だ!」
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「次は『社会権』!これは自由だけじゃ生きてけないから、国に『助けてくださいお願いします』って言える権利!いわば『国家にお願いする権』!」
「言い方……でも内容はわかります。教育を受ける権利、労働の権利、生存権などですね。憲法25条から27条あたりに」
「イエス!つまり社会権は、自由を使うための地盤作り!国が生活や労働、教育を“保障”してくれないと、机上の自由なんて意味ないよね!」
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「そして本日のメインディッシュ、平等権!」
バァン!という擬音付きで「法の下の平等(第14条)」が黒板に刻まれる。
「この“法の下の平等”は、形式的平等と実質的平等、どっちも大事なんだ!」
「形式的平等……法律上は誰でも平等に扱うこと。実質的平等……現実に差が出ないよう調整すること、ですね」
「そうそうそう!そしてこの“平等権”があるからこそ、昔の不平等制度は次々に廃止された!」
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「たとえば?」
「たとえばだな!昔は選挙権が男性限定だった!あと、家父長制度に基づいた家制度とか!男女差別、部落差別、在日差別、いろいろあった!」
「そのうちのいくつかは、今でも差別として残ってますよね……」
「まさにそれが“課題”だ!形式的には平等でも、現実には差がある。その差を埋めるのが実質的平等の役目!」
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「その文脈で重要なのが“違憲審査権”だ!」
黒板に「憲法81条 違憲審査権」と大書される。
「法律や行政のやり方が憲法違反じゃね?ってとき、裁判所がジャッジする!その代表的事件が……」
「三菱樹脂事件ですね」
「おお!先取り小春!」
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「この事件では、学生運動をしていた人が企業に就職したんだけど、思想的理由で本採用を拒否された。これって憲法で保障されてる思想・信条の自由に反してるんじゃないか?と裁判になった!」
「でも、結果的には“企業にも採用の自由がある”って判断されたんですよね」
「そう!私企業の採用の自由と、個人の思想の自由がぶつかる。人権のせめぎ合いってやつだ!」
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「じゃあ先生、現実の差別に対して、どんな法律が作られてます?」
「ナイス小春!たとえば2016年にできた『障害者差別解消法』!合理的配慮を求められるようになった!」
「他にも『男女雇用機会均等法』『LGBT理解増進法』『部落差別解消推進法』などがありますね」
「そうだ!法律が作られても、社会の意識が変わらなきゃ意味がない!我々が問われてるのは“どう行動するか”だ!」
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チャイムが鳴った。先生は最後に一言、黒板に大きくこう書いた。
「『すべての人間が、互いの違いを尊重できるか???』」
「……名言っぽいのに語尾が上がると軽く聞こえますね」
「それが嵐山流!」




