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紙飛行機のラブレター 〜ぼくの思い出〜

作者: 梅花かえで

学生時代のぼくは、けして目立つタイプではなかったが、ある女の子に恋をして、毎日がキラキラと眩しいものになった。いい大人になった今でも、甘く懐かしい当時のことを時々思い出す。そんなある日の物語。


 もう20年以上前になるが今でもふと思い出す。


 高校の入学式の朝、正門の前で盛大に転んだ僕は、顔も上げられないくらいに痛みよりも恥ずかしさが勝っていた。

「大丈夫?」

突然声を掛けられ咄嗟に立ち上がる。

「あっ、はい。大丈夫です。」

恥ずかしさで早く立ち去りたかった僕は彼女の顔も見ず走り出した。

「待って!」

呼び止められ彼女が駆け寄る。

「これ使って」

そう言って絆創膏を差し出してくれた。

「痛いだろうけど、泣かないようにね」

イタズラに微笑み去って行く彼女に、

「ばっ、泣かねーよ!」

と言い返したが、その時の笑顔に心を奪われてしまった。


 彼女とは別のクラスで接点がなく何もできないまま時が過ぎた。2年生になり同じクラスになれた時は天にも昇る気分だった。実は同じクラスになりたくて、柄にもなく願掛けなんてやってみたのだが、本当に神様はいるんだと実感した。

しかし彼女は僕の事は覚えていない様子で話すきっかけを探す日々が続く。数日経ったある日、偶然靴箱で彼女に会い

「おはよう」

と声を掛けられた。

「昨日のあのアニメ見た?続き気になるよね〜」

なんて気さくに話しかけられ、ぼくは好きな作品だった事もあり話しながら教室へ向かった。それからは毎日同じタイミングで登校し、靴箱前で「おはよう!」と挨拶し、そのまま一緒に教室へ向かう。話の流れから互いのお勧めの本を貸し合うようになり、教室へ向かいながら感想を言い合う時間は永遠に続いて欲しいとさえ願った。


 ある日席替えで彼女の隣の席になった。昨晩の神頼みが効いたのだろうか、僕は全力で神様にお礼を言った。彼女が隣の席になったら気持ちを伝えようと決めていたのだ。

僕の好きな作品に

『好きな子の隣の席になった主人公は、授業中に紙飛行機を折り、


“好きです!付き合って下さい”


と書いて好きな子に飛ばす…』


というシーンがある。ただ彼女への気持ちは直接伝えたいので紙飛行機には

“放課後話がある。教室で待っていて欲しい”

とだけ書いた。

いつ飛ばそうか…結論がでないまま幾日が過ぎた。しかしきっと神様が告白のタイミングを作ってくれたのだから勇気を出さなくてはと覚悟を決めた日の午後、僕は思いきって紙飛行機を飛ばした。彼女はすぐさま驚いてこちらを見たので口パクで、


「あ・け・て・」


と伝えた。

一呼吸おき、彼女は小さく頷いてくれた。


 放課後、教室から人がいなくなるのを待ち、彼女に声をかける。


「待っていてくれてありがとう。


あの……えっと………」


暫しの沈黙のあと、


「好きです!付き合ってください!!」


勇気を振り絞り伝えると、彼女はコクリと頷いてくれた。

初めて彼女ができた時の淡い思い出。


今、僕の隣には彼女によく似た小さな宝物が、僕の手をぎゅっと握っている。

「ママー!」

かわいい声に反応し優しく振り向く彼女は、絆創膏を差し出してくれたあの時と変わらない笑顔だった。



好きな人がいるだけで、毎日が特別な1日になり、甘酸っぱく日常が彩られる。恋人から夫婦になった今でもその気持ちを大切にしたいものです。


彼女目線のストーリー、


『紙飛行機のラブレター 〜わたしの思い出〜』


も一読いただけると嬉しいです。

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