門出祝いでいざ出発
ユフィーラは契約結婚することをまずはハウザーに報告した。期間中に叶えることが最も難しい一つに以前に伝えていた。「この短期間でそれを叶えてくるとは…」とハウザーは口をあんぐり開けて驚いていたが、相手の名前を聞いたら更に驚いていた。
「知っていたのか」とテオルドと同じ様なことを聞かれたので、森で初めて会ったことと、名前は契約する時に初めて聞いたと伝えると、今度は「何も知らなかったのか。お前らしい」と呆れた表情された理由が未だに不明だ。テオルドとは、どうやら顔見知りらしい。特に反対されることもなく、好きにやれと言われた。
契約が終了したらもう一度だけ借りていた部屋に戻りたかったのでお願いすると、今まで通り薬を診療所に卸すことを条件に了承してくれた。この国にこうして何不自由なく居られるのはひとえにハウザーのおかげに他ならない。最期までに沢山の薬とレシピを置いていこうと誓う。
それから近所の知り合いに報告する。ユフィーラに男の影も、婚姻の素振りもなかったので、皆一様に驚いてはいたが、祝福してくれた。相手はあの人気者魔術師団副団長のテオルドであり、婚姻前から揉め事が起きるのは避けたかったので、事情があると説明して後日伝えてもらうことをハウザーにお願いしたら、これでもかと嫌な顔をされたので、ハウザー用に作っておいた、以前の保湿剤、新しく清涼な匂いの数種類の保湿剤、騎士用のお試し保湿剤を賄賂として渡して通常の顔に戻っていただいて事なきを得た。
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そしていよいよ週が明けた早朝、ミルクティー色の髪はそのまま下ろし、淡い朱色のワンピースに黒のブーツ、薄いグレーのローブを羽織ったユフィーラは、二年住まわせてもらった片付いた部屋を見渡す。生活における殆どのものは向こうで用意されているので、服飾類や薬師の道具だけ送っておいた。
(ここで私は第二の人生を始められた。先生には感謝してもしきれないわ。なるべく恩返しを沢山残さなきゃね)
この二年の出来事を思い出し、目頭が熱くなるのをぎゅっと瞑って抑える。一つ頷き微笑んでから「ありがとう、お世話になりました」と部屋に向かってお礼を言いながら頭を下げた。鍵をかけ階段を降りると、そこには白衣姿のハウザーが居た。
「先生!お見送りしてくれるのですか?」
「お前さ、何で行くつもりだったんだ?」
「え?歩きですよ。二刻もかからないで行ける距離ですし」
「奴は何も言わなかったのか」
「迎えの馬車の話はしましたが、大丈夫だと断りました」
部屋の鍵を渡しながら答えると、これ見よがしに肩を落とされる。
「嫁入りの時くらい馬車使えよ…門出祝いってことで受け取れ」
ハウザーが顎で示す方向を見ると、一人が乗るには立派な馬車が診療所前に停まっていた。
「まあ…先生、こんなに奮発してくださるくらいなら伸びた髪の散髪代か草臥れた白衣を仕立てた方が有意義でしょうに」
目を丸くして伝えると、「髪はこの長さが気に入ってるし白衣も味がでてきたこのくらいが良いんだ」と言いながら、ゆっくりとハウザーが腕を上げ手が近づく。
そして頭にぽんと置き優しく撫でてくれる。いつものぐりぐりではない。
「一応後見人みたいなもんだろ。これくらいさせろ。何かあったら必ず頼れ。そしていつでもここに帰ってきていいんだ」
自分と血の繋がっただけの父親も、継母もその娘も、男爵の使用人も。
誰一人そんな言葉をかけてくれたものは居なかった。
ハウザーはそんなユフィーラに心を砕いていつも真摯に接してくれた。
血も繋がらない他人なのに温かく厳しく優しくしてくれた。
「―――ありがとうございます。役に立てずに捨てられないように努めますが、もしそうなったら残りを拾ってくださいな」
「ああ」
ユフィーラは頭を撫で続けている手を指しながらへらっと微笑む。
「先生のおかげで、もう上がる手に怖がることもなくなりました」
ハウザーに会った当初は手を上げただけで、反射的に頭と体を庇っていたことを思い出す。それをハウザーは何度も何度も繰り返して、怖くないことを証明してくれた。
「それが普通だからな」
「ふふ。私に辛抱強く普通を教えてくれた先生には感謝しかありませんねぇ。こんなに大きくなりましたよ」
「確かに会った頃は16歳には見えなかったな。もう背は伸びないな」
「こ、これからですよ!」
「諦めろ」
優しい手が徐々にぐりぐりと圧が強くなる。
「まさかこの押さえつける撫でのせいでは…」
「気のせいだろ」
ハウザーがにやっと笑いながら手を離した。
「そろそろ行け。昼前には着くだろうよ」
親元から巣立つのはこんな感じなのだろうか。ハウザーはまだ30代だが包容力があって、いつもついつい甘えそうになってしまう。でも今日くらいはちょっと甘えてみたくなった。
「先生。門出祝いにもう一つだけ我儘言っていいですか?進む我が道を気張って生きろ!の念を込めて、こう、ぎゅっと、してもらってもいいですか?」
以前、テオルドにやったように両手で腰を回すように手で表現してみる。ハウザーは少し首を傾げる。
「ぎゅ?ハグのことか?」
「ハグ…というのですね。そうです、ハグです!良いですか?」
「ああ」
そう言うとハウザーは両手の平を上に差し出すように少し広げた。ユフィーラはわくわくしながらとすんと胸元に飛び込んで腰に手を回してぎゅっとする。
(とくとく胸が高鳴ることはないけど―――なんだか温かく安心する感じ…家族とハグしたらこんな感じなのかもしれない)
目を瞑りながらしみじみと感じる。ハウザーが肩から背中に両手を回した。
「お前は小さいな。頭が胸元までしか届かん」
「先生が大きいのですよ」
「いやお前が小さい」
そう言いながら頭も撫でてくれる。門出祝いの大盤振る舞いでユフィーラは満面の笑みになり、少し名残惜しいが手を離した。
「これからも何度も会いますが、けじめとしてご挨拶させてください。本当に…本当に私自身を救ってくれてありがとうございました!」
一歩後ろに下がり、深く頭を下げて感謝を述べる。
「ああ。無茶はするなよ。いつでも戻って来い」
「はい!では行ってきますね!」
笑顔で手を振り、馬車の御者に挨拶して乗り込む。中は一人には広過ぎるくらいで、椅子もふかふかだ。座ると程なくして馬車が動き出す。振動も少なくとても快適だ。
ユフィーラはこれから、やりたいことを叶える為の意気込みを感じながら小窓から慣れゆく景色を眺めた。
**********
あと半刻ほどで着きますと御者から伝えられた。景色は街並みから草原のような道なりに変わり、家を見つけても住宅街のように連なってはおらず、ぽつぽつと時折みかけるだけだった。
(急な婚姻で、しかも平民だから歓迎はされなくても、無関心で放っておいてくれると助かるのだけど)
もしいびられても耐性がついているので、なんとかやっていけるだろうと楽観的に考える。
ほどなくして馬車が止まった。
扉がノックされ返事をすると、到着しましたと御者から声をかけられたので扉を開けてもらい、お礼を言って馬車から降りた。
「わわ、…素敵」
そこは閑静な住宅が建ち並ぶような場所ではなく、周りは小さな森や林、少し遠くには広々とした池が見える中、その建物は建っていた。
その建物は豪邸とまではいかないが、レンガ調の壁に囲まれ、門の先には広大過ぎない庭と大きな厩舎。屋敷はアイボリーを基調とした壁や屋根で調えられていている。
(今日から、ここに住める…!近くの森には薬草はあるかしら。池には綺麗な石や魚が泳いでいるのかしら…屋敷の色合いと大きさも、尻込みしないで何とか入れそうだわ。厩舎があるということは馬…馬にいつか乗らせてもらえたらどんなに楽しいか…!)
ユフィーラは頭の中で歓喜に叫びながらきらきらした目でそれらを眺める。
はっと我に返り、手持ち無沙汰になっていた御者に再度お礼を言って、騎士用のお試し保湿剤を渡すと喜んでくれた。屋敷の人が迎えに来るまで一緒に待つと言ってくれたのだが、運んでもらうほど重い荷物もなく、それ以前に出てきてくれるかさえわからないので、丁重にお断りして送り出した。
「よーいしょっ」
ユフィーラは掛け声をかけながら荷物を持ち門前に歩いていくと、玄関の扉から一人の男性が出てくるのが見えた。
ダークグレーのタキシードらしき服装を着こなした細身の長身で、長めの黒い髪を後ろに結んだ水色の瞳をした美しい男性が、こちらに向かって歩いてきた。
(使用人…よりは執事とか家令みたいな人かしら)
ユフィーラが門前に到達すると、彼は門前の向こう側から話しかけてきた。
「貴女がユフィーラさんですか?」
あ、ちゃんと伝えておいてくれたんだと、些かテオルドに失礼な感想を抱きながらも、荷物を持ち直して姿勢を正す。
「はい。初めまして、ユフィーラと申します。今日からお世話になります」
そう答えてぺこりとお辞儀をする。
「私はこの屋敷の家令を務めておりますジェスと申します。初めに申し上げておきますが、私は認めておりませんので。貴女の本性を暴いて、我が主には目を覚ましていただきます」
開口一番、辛辣な洗礼を受けた。
顔を上げると、私を歓迎していない冷淡な眼差しとぶつかる。
大人気で魔術師団の副団長で爵位のある主に上手く取り入ったと思われているのだろう。まあ、契約結婚を前提にあれこれ提示したことが功を奏しただけなのだが、それを知らない人からすればそうみられるのは仕方ない。
(多分無害な、ただの平民なのになぁ)
でも。主の為を思い、契約結婚だと知らない状況だからこそ警戒する態度を崩さない、屋敷を守る家令ならばそれは仕事に忠実だということだし、ユフィーラにはどうってことない。
男爵の家令より全然ましだ。
小さい頃はひたすら他の使用人が嫌がる仕事をやらせたり、使用人の采配も適当で、使用人にできなかったら私に回せばいいなんて言いながら自分は楽をしたり、私に罪を被せて良く小金を懐に入れていたのだ。私が貧相ながらも成長していくと、叱る体でお尻を叩かれたり、邪魔だと退かすつもりでわざとらしく体に接触してきたりして、とても気持ち悪かったのだ。
それを思うと、主の敵だと、毛嫌いされるくらい屁でもないのだ。
「はい。ジェスさんは家令なので、テオルド様を影で支える方ですものね。ご存分に見張っていただければと思います」
返した内容にジェスは目を瞠るが、すぐに眉を顰めた。
「下賤な女が我が主の名前を呼ぶな」
数言会話をしただけで、既に婚姻相手以下よりも更に下扱いになってしまったらしい。
「まあ。では主様とお呼びすれば良いのでしょうか。でも婚姻相手ですので、そうですねぇ…旦那様なら構いませんか?」
ユフィーラが訂正するとは思わなかったのか、少し驚いていたが「そうしろ」と顔を歪ませながら門を開けて屋敷に戻って行ってしまった。
彼とは前途多難そうだが、元より歓迎されるとは思っていなかったので、想定内だ。
「せめて、詰りながらでも良いから案内はして欲しかった…」
そう呟きながら荷物を持ち直して門を通り玄関に向かっていく。扉に鍵がかかっていたらどうしようと思いながら進んでいくと、玄関の扉から黒と白のメイド服を着た女性が飛び出してきた。
「あ、やっぱり置いていっているじゃない!ジェス、あなた最悪だね、仕事しろ!」
その通りである。せめて家令としての仕事はして欲しかった。
「あなたがユフィーラさんね?ごめんなさいね、あのテオルド狂信者がとんだ失礼をして」
ユフィーラの前まで走り寄ってきてくれた赤茶色の髪を頭頂部で結び、綺麗な夕陽のような琥珀色の瞳の物凄い美人の女性が頭を下げてきた。
「いえ、私との会話で気分を害したのかもしれません、お気になさらずです」
「いやいや、駄目よね!?この屋敷の主のお嫁さんになる人にあんな態度!家令はいつも冷静沈着を心掛けるとかどの口で言っているんだか!」
まあ、その通りではある。憤慨しながら、ユフィーラを庇う言葉に、全員が全員敵対することにはならなそうだと少し安心した。
「ふふ。残念ながら高貴な相手でなく平民なので気持ちはわからなくはないのですが、確かに家令としては二言目からちょっと冷静ではありませんでしたね」
微笑みながら、メイド服の女性に挨拶をする。
「改めまして、ユフィーラと申します。今日からよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、女性は慌てふためく。
「先に名乗らせてしまうなんて不覚!メイドのアビーと申します。ここに居る皆は個性的な人達が集まっているから、砕けた口調なの者ばかりで。ユフィーラさんもそうしてくれると有り難いわ」
「まあ。ありがとうございます。今まで傅かれたことがないので、その方が私も気楽です。喋り方は癖になってしまっているので、そう認識してもらえると助かります」
そう答えると、アビーはほっとしたように淡く微笑んだ。微笑の威力が物凄い。美人だから何でも凄い。
「了解したわ。あいつ…ジェスがどっか行っちゃったから、代わりに私が屋敷を案内するわね」
「よろしくお願いします」
そんなに重くないので大丈夫と言ったのだが、アビーに半ば強引に荷物を取り上げられたのでご厚意に甘えることにする。
「まずはユフィーラさんのお部屋からね」
案内されながら、アビーがここ働いている使用人の話をしてくれる。
「私とジェスも含め、ここの使用人は元々魔術師団に所属していたものばかりなの」
「そうなんですか?」
どうして魔術師団を辞めてここに居るのだろう。
そんな疑問が顔に出てしまったのか、アビーは苦笑しながら説明してくれる。
「無感情筆頭のテオルド様始め、ここで働く者は一癖も二癖もある者ばかりでね。訳アリで魔術師団を辞めた者達を彼が拾ってくれて雇ってくれたのよ」
「ではここで働かれている方は皆さん―――」
「ええ。皆魔術師よ」
明かされた屋敷の使用人の事情にユフィーラは驚くと同時にわくわくしてしまう。
「私薬師なんですけど、それに関する魔術しか使えないので、もしかしたら皆さんの見事な魔術を今後見られる可能性があるのかもしれないんですね。楽しみです!」
ユフィーラの反応にアビーは目を丸くした。美人なのに可愛らしいとは。
「訳アリとか癖があるとかその辺は気にならないの?」
「特には。訳アリでも旦那様が選んだ方々です。癖も何も人それぞれ違うのは当たり前で癖のない人が合うとも限りませんし。残念ながらジェスさんは難しそうですけど」
「あれはテオルド様だけを妄信しているから、ちょっとおかしいのよ。そう…そういう考え方もあるのね」
そう言うアビーは少し嬉しそうに見えた。
「お部屋に案内した後に屋敷の者を紹介するわ。それと…テオルド様は今日は重要な会議とかで、まだ戻っていないの」
ちょっと申し訳無さそうに話すアビーは、先ほどまでは気が強そうな美人なのに、眉を下げてしゅんとする様は突如儚い印象を与える、そんな神が与えし二物を持った姿にユフィーラはぽわんと惚けてしまう。
「ユフィーラさん?」
「は!いえ、旦那様はお忙しい方ですから、私は全然問題ないので大丈夫です」
案内されたのは二階の庭に面した部屋だった。
前より倍以上ある広い部屋に目も口もぽかんと開けてしまう。
全体がクリーム色と淡い茶色で調えられており、奥行きがある大きな出窓のレースのカーテンからは陽の光がたっぷり入っていてそこからは庭が一望できる。ベッドの両サイドにはドレッサーと猫脚の机、クローゼットが広いようで、見える場所にチェスト類はない。事前に送った荷物はクローゼットに入っているとのことだ。
「あわわ…こんな素敵な部屋を使わせてもらっていいのでしょうか」
「これでも最低限のものしか揃えないのよ。数日前に婚姻のことを聞いたものだから、皆あのテオルド様がって大騒ぎ。女性に必要なものなんて知っている輩は当然一人も居ないから、僭越ながら私が見繕わせてもらったわ」
「いいえ…いいえ!こんなお部屋に住めるなんてとても嬉しいですし充分です!ここには女性の使用人はアビーさん以外いないのですか?」
男性ばかりの屋敷では働きづらくないのだろうかと気になったので聞いてみる。
「気に入ってもらえて良かった!女性使用人は私の他にもう一人。パミラっていう名前なんだけど、こういうのに興味なくてね。寝れればどこでも良いという人なのよ。掃除や洗濯とか雑用全般を仕切ってる人なんだけど、さばさばして付き合いやすいわよ」
そう言いながらアビーに部屋の中に配置されているものの説明をしてもらってから、屋敷内も案内してもらう。その間に使用人も都度紹介してくれた。
この屋敷の使用人はアビーとジェスを含め七人。
使用人は貴族も平民もいる。テオルド自ら選別し、使用人として雇いたいと言われ、彼等は悩むことなく即断したそうだ。ジェスのように中には自ら懇願して屋敷に突撃したものもいるが。
先ほど話に出たパミラという女性は、とてもおおらかでハキハキ喋る気持ちの良い人だ。
料理人のガダンは、右目尻に傷があるちょっと悪そうな容貌の色気ある男性だが、話すととても楽しい人で元々料理が趣味だったからか、作るものはどれもこれも絶品らしい。
庭師のブラインは目も合わず年中ローブを着ている変わり者らしいが、庭の手入れの能力は抜きんでていているとのこと。
馬丁兼力仕事のダンは魔術師とは思えないほど大きく立派な体躯で生き物が好きなのだそう。
そして書庫と魔術関連の書物などを一手に引き受けるランドルンは魔術師とはこういう様相だと思わせるような麗しい容姿だ。
テオルド始め、魔力が多い人は容貌にも比例するというのは本当で皆整った顔立ちだった。
昼になると、料理人のガダンが昼食を作ってくれた。噂通り本当に美味しくてにこにこしながら頬張った。
午後はユフィーラの部屋から見える庭へ赴き、ブラインの仕事を邪魔しない範囲の薬草を育てる一画をもらった。思ったより広く予定より多い種類を植えられそうだ。うきうきしながら、その場にしゃがんで眺める。
ブラインが植えたり育てる為に必要な道具類を貸してくれるというので、買い出しに行こうと思っていたユフィーラは握り拳を天に掲げて喜んだ。相変わらず目を合わせない彼だが、植物の育て方を聞くと、ぼそぼそであるがすぐに答えが返ってくる。しかもとても的確且つ丁寧なので、庭師の仕事や植物が好きなのだなと感じた。
アビーが「ブラインがこんなに喋るところ初めて見たわ…」と呟いていたので、好きな話題にはついつい饒舌になるのだろうと話していると、遠くから蹄の音が聞こえ、そちらを見ると門の向こうから馬が二頭駆けてくるのが見えた。