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一日5秒を私にください  作者: あおひ れい
一日24時間を私にください

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予想外の助っ人






翌日、朝一でルード始めレノン達を撫でくり回し、鼻でつんつんばしばしとされながら揉まれ、癒しパワーをもらってから、ユフィーラは再び研究所に訪れた。ハウザーに昨夜の使用人達が話していたことから何か閃きそうなことを伝え、精製の研究を再開した。ユフィーラの考えが、もしお門違いなら研究が滞ってしまうのでハウザーには本人のやり方で続行してもらうことにする。


部分的に一番効能に期待できないと思っていた葉を集めて、ユフィーラは一から精製し直す。スッと何かが過る瞬間があるのだが、それが頭の中に定着することはなく通り過ぎてしまう。



(私がもっと知識があれば何通りも湧き出てくるかもしれないのに……だめ、後ろ向きな考えは余計に思考曇らせてしまうから)



時折ネガティブ思考になっていしまいそうなのを叱咤してユフィーラは精製を続ける。少し遅くなった時間にガダン特製の昼食をいただき心身に力を蓄えてまた机に向かう。



(葉に耐性がついていると通常の魔術の効果が薄れてしまう以前に…葉に思い出させる…葉に通常の効能に戻させる…無効化の効能……無効化…)



そこでユフィーラは目を見開く。



(リセッカの特性は無効化だわ…もし魔術そのものを無効化しているとしたら…?)



もしそうなら魔術そのものが効果がない状態となる。とするなら、元々の――――


そこでパッとまたもや何かが閃きかかるが形にはならず霧散してしまう。でも少しずつだが何か頭が覚醒してきてるような感覚になったユフィーラは、ここが踏ん張り時だと葉を精製させながら頭をフル回転させていった。



そんなことを続けていたらあっという間に日が落ちたらしく、ハウザーに声をかけられた。



「おい、随分集中しているがもう時間だぞ。そろそろ――――」

「先生すみません。ちょっと何かもう少しで閃きそうなのです。研究所に泊まり込みで居る方はおられますか?」

「あの研究馬鹿がどれだけここに籠もっていると思ってるんだ。他にも泊まっている奴はいるにはいるが…」

「私、このまま今日はここに居たいです。連絡魔術をお願い出来ますか?」



精製魔術を施し指先を集中させながらハウザーの言葉に被せるように視線を向けずお願いする。ここで集中が途切れたらまた散ってしまいそうな気がするのだ。


それに。

こうやって手を拱いている間にも症状のある魔術師達は悪化はせずとも魔力を使えず何もできない状態なのだ。せめて緩和より少しでも先の無効化の効果に近づけることができるのなら。テオルドも事態解明の為に日々遅くまで頑張っている。


ハウザーは暫く黙っていたが、書いてやるから口頭で話せと言ってきたので、有り難くそうさせてもらい、ユフィーラは精製の手を休めずにテオルドと使用人の皆宛てに昨日の夕食で話していた会話から何かが閃きそうだが、まだこれと言った決定打が出ない。でももう少しでそれが表面に出そうな気がするから、今日だけこのまま研究所に居させて欲しいとの主旨をハウザーに伝える。


それから再び精製を続けながら、時折手に握られる魔力薬を意識せずにシュポンッと開けて飲み、手元に添えられた温かい丸みを帯びたものを躊躇なく口につけると喉に甘い潤いが流れてくる。ハウザーが側にいると理解しているユフィーラの無意識の行動だ。



それからどれくらい経ったのだろう。閃きが頭の中に微かに光るのにそれが近くに寄ってこないような感覚にユフィーラは段々と意識が朦朧となり始め、徐々に瞼が閉じていった。





ふわりと温かい何かに包まれている感覚。それがテオルドでないことがわかる。包み方も温かさも違うからだ。テオルドより僅かに低めの体温。でもそれが安心できることをユフィーラは知っているのでそのまま身を任せる。


背中をぽんぽんとあやされるように軽く叩かれながら少し揺られ、腕の一部が少し熱くなる。それすらも心地良い。その温かさと微睡みにユフィーラは抵抗なく沈んでいった。







「パンっと散ってしまいました!」

「知るか」



翌朝陽が昇り始めた頃。ユフィーラはわなわなと震えながら無精髭の生え始めたハウザーに詰め寄って机をタタタタンっと細かく叩きながら抗議する。



「起こしてくださいよ!」

「何度か声かけたぞ。それでもぐーぐー寝てたから仮眠室に連れて行ってやっただけだろうが。二刻も眠ってないぞ」

「先生ならぶんぶん振り回して起こせた筈です!」

「俺を何だと思っている」



取り敢えず少しの八つ当たりを終えてすっきりしたユフィーラはどこまで閃きかかったかと思い出し始めようとした時、扉がノックされる音がした。ハウザーが声をかけ扉が開く。



「あれ。……………ぱ、パミラさん…!?」



寝起きの微睡み感も起こしてくれなかったハウザーへの理不尽な憤りも全て吹き飛んでしまった。


ここは王宮内の研究所で何故かそこにパミラがいる。


それだけではない。


いつもはゆったりとしたワンピースや上下動きやすい服装した見たことがなかったが、今日のパミラはダークグレーのローブをフードまで被り、中はシンプルなアイボリーの長いワンピース。そして何より驚いたのが髪型だった。


髪を解いて左右に緩く結って下ろしていたのだ。今までパミラが髪を下ろしているところを見たことがなかったユフィーラは先程とは異なるわなわな感に打ち震える。


普段はランドルンがふっくら云々で時折からかったりしているが、あれは周りがシュッとし過ぎているのもあり、とてもふくふくしている訳ではないのだ。それにパミラは魔力が高いこともあり、当然顔もそれに比例している。微笑んだ時の慈愛感がとても素敵で、何より美しいのだ。普段はひっつめ髪にしていることで少しきつめの表情がその慈愛度が増して見える。



「おはよう、ユフィーラ。ハウザー氏には連絡してあったんだけど」

「寝落ちからちょっと前に起きて今まで猛攻撃をくらっていた」



ユフィーラは魅入られたかのようにふらふらとパミラに寄っていく。



「ユフィーラ、少しは寝れたの?大丈夫?」



そう言って頬を撫でてくれるパミラにユフィーラはきらきらと瞳が輝き始めたのをみてパミラが怪訝な表情をする。



「あれ、どうした――――」

「何故今まで下ろさなかったんですか!」

「え」



パミラは目を丸くする。それすらも尊い。



「髪を下ろして軽く結って…しかも左右にとか…どれだけ萌え要素増やしているんですか!」

「え…ちょっと何…―――」

「確かに今までだって邪魔にならない髪型、動きやすい服、わかります!雑用全般を一手に引き受けてくださっているのですから、やることは数多にあります。ですが!これだけの美しさを隠すなんて…なんて勿体ないことを!」

「え、え…」



ユフィーラはパミラの周りをぐるぐる周りながら力説する。その姿はまるで今にも飛びかからんばかりの子犬の様。



「仕事中は集中するために結ぶのは仕方ないにしても、それ以外では下ろすことを推奨します、いえ希望します、いえ熱望します、いえ懇願します!」



ユフィーラの頭の中はなんて勿体ないの一色だ。アビーはちょっと吊り目の魅惑的な美人で、美しさを己自身で最大限に魅せる方法を熟知しているが、いつもパミラはずぼらで勿体ないと悔しがっていた。もれなくユフィーラも悔しがる。



うろうろ自分の周りを周回しながら自分の容貌を絶讃し続けるユフィーラ。それでいて彼女の口から出る言葉全てが心からの言葉だと存分に思い知っているパミラはとうとう頬を覆って俯いてしまった。



「わかった…わかったからもうそれ止めようか」

「わかってくれましたか?パミラさん自身が如何に心根だけでなく見た目も、もがが…」



ついにパミラがユフィーラの口を塞ぐ。その時のパミラの照れてほんのり赤くなった可愛すぎる顔にユフィーラの顔もぽぽんっと上気する。



「おい、そろそろ止めてやれ」



後ろから呆れ声のハウザーが声をかけるのを、ユフィーラは本能的にパミラの美しさを守ろうと、ばっとハウザーの前で両手を広げ、「何でだよ」と突っ込まれていた。



「まずこれ」



ようやく頬の火照りが治まったパミラから渡されたバスケットを受け取ると、底がほんのりと温かい。掛けてある布を取ると、そこにはガダン特製のパイシチューとバケット。離れた箇所には果実水も添えられていた。


ガダンのパイシチューはユフィーラが勝手に最強シチューと呼んでいる逸品だ。パイ生地に包まれた箇所をサクサク突破していくと、そこにはごろごろした大きなチキンと小さめに切られた野菜のシチュー。時にはエビや海産物のクラムチャウダーの時もあり、何が出るかお楽しみ的なユフィーラの好物の一つなのである。しかも最終段階として全てを楽しめるように少し残ったシチューをバケットで刮げ掬いながら食べ切れるのがこれまた心憎い演出だ。



「どうせ飲まず食わずだろうから持ってけって」

「ガダンさん…!」

「一応飲み物は飲ませたぞ。手に持たせたら無意識に飲んでいた」

「先生…!」



ユフィーラのことを考えてくれている皆の想いが嬉しくて仕方ない。匂いに誘われきゅるきゅる鳴っていたお腹を先ずは止めることに専念した。




「昨日連絡もらってからさ。ちょっと色々と考えていたんだ」



食欲が満たされ一息吐いた後、パミラが切り出した。



「私薬師の資格持っているの」

「え」



初耳である。



「そいつは魔術薬も作れるぞ」

「え!?」



魔術薬というのはある程度魔術師のレベルが高くないとできないものであると聞いていた。



「それでちょっと手伝えないかってね。暫く使ってないから腕が鈍ってあまり役に立てないかもしれないけど」



パミラは苦笑してユフィーラを見る。



「夫にずっと薬作ってても全く効かなかった。それから作らなくなったんだよ」

「!」

「でも、もうそろそろ良いかなって。それに今回上手くいけば同じような症状の人が改善されるかもしれない。そうしたら私の中の憂いが少しは晴れるかも」



そう言ってユフィーラの頭をぽんぽんとする。



「ユフィーラのおかげ」

「私…ですか?」

「うん。あなたが居てくれるおかげで思考が前向きになった。手伝うよ。今までの経緯をざっとで良いから教えてくれる?」

「……はい!」



眠気も寝落ちした落ち込みもそれこそ霧散して、ユフィーラはハウザー見る。彼はやれやれという割に優しい顔でユフィーラとハウザーの今までの記録をユフィーラに渡した。


それをパミラに渡し、昨日閃く手前のことを何とか分かる部分だけでも思い出しながら補足していく。「わかった。ユフィーラは引き続き今できることをやって。何か思いついたら声かけるから」といって、パミラは空いている机の一つに移動したので、ユフィーラとハウザーもそれぞれ机に着いた。







不定期更新です。

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