一年365日を私にください 2
羞恥心からお嬢様モードに入ったアリアナがクリームコロッケをもう一回食べるのだと顎をつんと上げて命令口調で言うのを、エドワードが面白そうに執事然な所作で誘導していくのをユフィーラはにまにましながら見ていていると、後ろから声をかけられた。
「アリアナ嬢は男装でもするのかい?」
「リリィさん、今度してみようかという話をしていました。そして相変わらず豪快な盛り方ですね!見習わなければ!」
「フィー、良い勝負だから」
「あはは。テオルドからもお墨付きをもらっているみたいだよ」
「テオ様、見て下さいな。リリィさんの盛り方は寸分隙もなく、崩れないように見た目も完璧なのです!」
「そこを競いたいのか」
「はい!その分食べたい物が増えるのですから!」
「あら、ユフィーラちゃんも良い線いっているわよ」
リリアンとお互いに盛ったお皿を見せ合っていると、ビビアンとリカルドが近づいてきた。
「ビビ様…はっ!リリィさんと良い勝負…!」
「でしょ?私も結構食べる方なのよ」
「確かにそうだな。ビビアンは野菜中心に見えるけど、中を覗くと結構がっつり系が紛れ込んでるんだよ」
「うふふ。普段はお皿にちょこんと極少量しか乗せられないつまらない社交界の場所ばかりだもの。ここで本領発揮しないとね」
「なるほど…!外は華麗に、中は豪快にですね!」
「はは!ユフィーラさん上手いなぁ。ビビもたまには息抜きしないとな」
「あっちは戦場。どこで揚げ足を取られるかわからないもの。それにガダン氏のご馳走はここでしか食べられないから、我慢は禁物よ」
リリアンと接戦する程の見事な盛り様は流石姉妹というだけあって、安定感抜群だ。それに対し何を言うでもなくリカルドが微笑みながら見守っている様子が相変わらず仲睦まじい。
「ガダンさんの食事は最強なのです!」
「出た。ユフィちゃんのガダン贔屓。でも納得できる美味しさだから仕方ないよね」
「以前いただいた海老のカクテルも美味しかったけど、この海老タルタルも最高!サラダの中にはローストビーフがたんまりよ」
「見た目とは正反対だが性格考えると妥当だな」
「まあまあ。テオルドが冗談を言えるようになるなんて…!」
「本音だが」
「だろう?ビビ。テオルドが冗談言えるくらいに人との会話のやり取りができるなんて、成長したよなぁ」
「本心だが」
テオルドを良く知るリカルド夫婦には鋭く端的な言葉も通用せず受け流され、でもその三人の温かい関係の繋がりが素敵でユフィーラは微笑んだ。
皿の端に僅かに残っている隙間を埋めに挑みにいくとリリアンとリカルド夫妻が去り、ユフィーラとテオルドはデザート近くに設置されたグラタンを攻めている双子の元へ歩いてく。
「テオ様、お皿の空いた箇所をグラタンで埋めたいです」
「フィーの好きにすればいい。どれでいく?」
「そうですねぇ…ミートグラタンも捨てがたいのですが、イーゾさんに美味しいところを根刮ぎ持っていかれる前にシーフードを攻めます!」
「ふはっ。確かにイーゾは三回目のお替りしていたから時間の問題かもしれませんね」
「…ちゃんと残しているぞ」
「そうだけど、チーズとシーフード盛り沢山の箇所は少なくなっているかなぁ」
「…っ!いざ!」
「何で戦闘系」
前にも聞いたイーゾの突っ込みを颯爽と流し、しゅばっとシーフードグラタンの場所に移動したユフィーラはシャキン!とトングを歴戦の戦士が持つ武器のように厳かに手に取り、どこも食べても美味しくはあるが更に極上の箇所をしっかりと掴み皿に盛って満足気に息を吐いた。
「ユフィーラさん良かったですね、確保できて」
「はい!後々恨みがましい視線をずっと送らずに済みました!」
「そこまでか」
「イーゾさんのガダン飯推しは侮れませんからね!」
「そこまでか…?」
「ふふ。イーゾはガダンさんの作った料理を食べている時の目の輝きは確かに違うからね」
片割れを良く知るネミルの言葉にイーゾはバツが悪そうだが照れ臭そうに頬を掻いた。
「今回のシーフード系お料理はグラタンだけでなく、クラムチャウダーに海老のタルタル、フリッターなど盛り沢山ですよ」
「っ!ネミル」
「はいはい」
ネミルがやれやれと困った、でも優しい笑みを見せながら、イーゾと共に揚げ物方面に移動し、ユフィーラは香ばしい焦げ目の香るとろけるチーズたっぷりのシーフードグラタンを頬張った。
「ん」
「ブラインさん?…っ!これはキャラメルナッツのしかもピーカンナッツ…!」
「ユフィーラこれ好きだよね」
からころとユフィーラのお皿にナッツを乗せてくれたブラインにユフィーラははしゃいだ。
「ありがとうございます!胡桃やアーモンドも好きですが、ピーカンナッツの香ばしさがより好きですね」
「うん。俺もピーカン好き」
「俺も知ってる」
「うん。俺は食べ物と植物くらいだけど、テオルドさんはそれ以上にユフィーラを沢山知ってるし」
テオルドの言葉に頷きながらも、相手の思いを考慮して言葉を発するブラインは、大事な仲間にだけは向き合う姿勢を徹底してくれる。
「テオ様は私がアーモンドプードルの入ったお菓子が好きなことも知ってくれていますものね」
「マカロンとフィナンシェ」
「ふふ。正解なのです!アーモンドたっぷりのさくさくクッキーも最高なのです」
「「知ってる」」
テオルドとブラインが同時に発言し、同時に見つめ合う姿を見てユフィーラはほっこりしてしまう。時にとても似ている部分がある二人のやり取りはとても癒されるのだ。
「お。ブライン、キャラメルナッツ一個ちょうだい。この王家御用達の葡萄酒に絶対合うからー」
背の高いブラインの横からひょいっと顔を出したパミラがブラインの持つ皿からナッツを一個つまんでぽいっと口に入れる。
「良いけど、って言う前に取ってるし」
「まあ良いじゃん。もう一個」
「既に二個だし」
「まあ良いじゃん」
「出たわね。パミラの『良いじゃん』節」
「パミラのそれは誰も文句言えない雰囲気があるよなぁ」
パミラとブラインのやり取りにアビーとダンも参加する。
「私も飲んでみたけど、流石王家に相応しい芳醇さは勿論、葡萄そのもののコクが口の中にふわっときて、しかもしつこくないのよね」
「あれは麦酒のように流し飲みは駄目だと思ったな」
「ちょっとダン、一口一口味わってよー滅多にお目にかかれない逸品なんだから」
「おう、味わった味わった」
「適当ねー」
ちょっとしたやり取りの会話が賑やかに楽しく広がっていく皆の談笑がユフィーラは大好きだ。
王家御用達の葡萄酒とナッツの風味を存分に味わったパミラが左右に緩く結った髪をさらりと垂らしながら首を傾げる。
「ユフィーラは飲んでる?」
「乾杯の一杯はいただきました。今はまだガダン飯にご執心です!この後一旦デザートを攻めに行きます!」
「はは!ユフィーラは酒よりもガダンの料理が一番だもんなぁ」
「どれをどの量でどのくらい食べようかと至福の悩みを堪能してます!」
「ねえ、旦那様。今回はお酒の制限は設けないの?」
「……フィーの為の食事会だからな」
「微妙な間がありましたね、テオルド様」
ユフィーラとダンがガダン飯談義をしている後ろで、こそこそとテオルドと女性陣が物議を醸し出しながらも和やかな時間が過ぎる。
ユフィーラはちょっと甘いものを摂取するべくデザートコーナーに向かった。そこには先客がいて、初っ端のフルーツタルトを容易くお腹に収めたジェスが次の一手に挑んでいた。
「ジェスさんはこのコーナーにいつも居るイメージがありますね!」
「そうか?…そうだな。ブラインが乗せた生野菜をようやく消化できたから、次は自分の好きなもので緩和させたいと思った」
少し遠くからブラインが「証拠はどこ」と地獄耳の如く言い返してきているが、何だかんだ言いながらこの二人の相性も良いのではと思っている。だがそれをジェスの前で言うと間違いなく反論するだろうことは難くないので、ユフィーラはその思考を彼方にぺいっと投げやった。
「今回はお野菜を何で包んで食べられたのですか?」
「今回は薄くスライスされた大判のサラミ…何故それを知っているんだ」
「前に瑞々しいハムで綺麗に巻き巻きして食べていたのを見たことがあります」
「…わざわざ観察するな」
「ふふ。たまたま視界に入っただけです。テオ様も見たことありますよね?」
「ああ。野菜を上手くハムで纏めて巻く早さが見事だったな」
「!」
「確かに!ミスなく一度でやっている記憶です。ジェスさんは本当に手先が器用なのですねぇ」
「そ、そうか」
「はい。それにしてもガダンさんとエドワードさんのデザートの数々がケーキ屋さんのように並んでいると圧巻ですねぇ、テオ様」
「そうだな」
「ちょっと甘いものを欲しているので、一つだけつまむのです!」
「絶品のフルーツタルトが一番だが、ベリーだけ使ったブラマンジェもお薦めだ」
「ブラマンジェ…!」
ケーキ類の隣にシャーベットやムースと共に温度設定された器に盛られて並べられているブラマンジェは、アーモンドミルクを抽出させて牛乳に香りを付け砂糖や生クリームを混ぜゼラチンで固めた濃厚な冷菓だ。そこに数種類のベリーのソースとフレッシュなベリー類が飾られている。
ユフィーラは一目で魅了され、ささっと器を取りぱくりと口に入れた瞬間、びびっときて即座にテオルドを見やる。
「ひんやり濃くてベリーの酸味が最高です!」
「良かったな」
「流石ジェスさんのチョイスなのです!」
「そうだな」
「…主」
テオルドがユフィーラの一言一言、ジェスの称賛の言葉に対しても都度返すのを、ジェスが感極まった様子で目元を覆って顔を背けてしまった。これもいつもの風景である。
「…ちょっとこれは驚いたなぁ。黄金色の具材が一切無いシンプルなスープからこれだけの味わいと深みが滲み出てくるなんて」
「私も当初味見させてもらった時は感激しましたね」
デザートで小休憩したユフィーラはテオルドと共に良い意味の口直しと称してスープコーナーに移動すると、ドルニドとランドルンが至極のコンソメスープについて熱く語っていた。
「まあ。ドルニドさんも至極のコンソメスープの虜になりつつありますね!」
「うん。どれだけの材料を凝縮させてこの味を完成させたのか想像すらできないけど、ここまで透明感のあるスープを僕は初めてお目にかかったよ」
「コクがあるのに味が濃過ぎるわけでなく、時間をかけてゆっくり味わってみたくなるスープなんですよ」
「そうそう!料理の合間に口内を潤すのでなく、単品で最初から最後まで一色で攻めてみたいんだよね」
ドルニドから今日この時だけは国王としてでなく、一客人として個人名で呼んで欲しいとお願いされていた。
コンソメスープマスターと自ら豪語する程のランドルンのうんちくを真っ向から受け止め、共に賛美するドルニドとの会話は弾む。ユフィーラは語彙力が達者な二人の言葉を耳にしながら、いつか格好良く使ってみようと思いつつ自分もコンソメスープに口をつけこれでもかと目を輝かせ、見つめるテオルドから頭を撫でられていた。
「確かにガダンの料理は美味しいけどさ。あんたもうちょっとまともな食事させてもらいなよ」
「忙しくなると携帯食ばかり食べてると嘆いていたぞ。俺からすればあいつもだが」
「ん?ゼルザから聞いたの?」
「他に誰がいるんだ」
そこにお酒を手に持ったハウザーとギルが近寄ってきてドルニドの食生活を指摘し始めた。
「ちゃんと料理人はいるよ。でも忙しい時ってわざわざ食堂に移動して着席していざ食べるっていう時間すら勿体ない感覚が否めなくてさ。執務室に持ってこられても同様で食べる気が失せちゃうね。勿論常時ではないんだけどね」
「常時だったら余計問題でしょ」
「料理人と周りの臣下のことも考えろ」
「そうなんだけど、忙し過ぎるとねぇ。片手で食べられる工夫とかしてもらえると良いんだけどさぁ」
目の前でスープを楽しみながらも労わり皆無の猛攻撃を受けているドルニドだが気にすることもなく、スープの香りを嗅ぎながらまた一口とゆっくりと味わっている。
「まあ親父経由で連絡なければ問題ないが」
「僕に連絡来なければ」
「ここに来なければどうでも良い」
国王の食事事情について一応注意喚起をしはしたが、ある意味国の中枢的な三人は最終的に自分に火の粉が降りかからなければ良いというスタンスらしい。
「これだよ。ユフィちゃん、酷くない?」
「あらまあ。お野菜や肉類もしっかり摂れるサンドイッチなどを作ってもらうしかないのでしょうか」
「ふむ。書類から目を外せない状況ならばユフィーラが好きなピタパンのような気軽に食べられる物が良いかもしれませんね」
「ピタパン?何だいそれは」
「空洞があるパンを半分にしたポケット型のパン生地なんです。そこに沢山の具材を入れてもポケット型で漏れにくいのでお薦めですよ!」
「へえ。それもここの料理長の味が一番なのかい?」
「はい!ガダンさんの具材のチョイスとソースは絶品なのです!」
「フィー、面倒事になる」
「おい。通うから止めとけ」
「レシピだけにしなよねー」
「これだよ、ユフィちゃん」
三人のつれない言葉にわざとらしく肩を落とすドルニドだが、そのちょっとしたやり取りの会話すら楽しんでいるように見える。国王ともなると、このように気さくに話す相手というのは殆ど居ないのかもしれないと思うと、今回招待したことで少しでも息抜き出来ていればいいなと思う。
ユフィーラはコンソメスープを存分に味わってからドルニドに向き直る。
「ただ老婆心ながら申し上げますと…」
「お嬢ちゃんの方が若いでしょ」
「僭越ながら申し上げ…」
「そこまで謙る相手じゃない」
「差し出がましいことを申し…」
「じゃあ止めとけ」
「これだよ!ユフィちゃん」
「あらまあ…」
こうも上手く合わせたかのようなやり取りを見せる三人は、実はとても仲良しこよしなのではないかと思わざるを得ない、ないしはドルニドに対して思うことが合致しまくっているのだろうか。
とはいえユフィーラは三人にまあまあと手振りで落ち着いてと…しっかりと腹を満たす存在のお皿は持ったまま片手で促す。
「確かにドルニドさんの多忙さは私の想像を遥かに凌ぐほどなのでしょう。ですが、毎日美味しいお食事を提供する料理人さんも、共に仕事をする周りの方々も私同様、一国民なのです」
その言葉にドルニドがぱちりと瞬きをする。
「君臨されるドルニドさんがそのようにしていたら、臣下の方々は自分達こそゆっくり食べるなんてできないと思ってしまうでしょう。そして料理人さんは一時の休息すら提供できない己の料理の腕を悔やむかもしれません」
ドルニドがどれほど動いているのか、これだけの大国を動かしている権威者は周りが思っている以上に日々忙殺されているのかもしれない。
「その方達の心のゆとりを少し作ってあげることも、またドルニドさんにしかできないのです。そして何よりも国を思い、身を削っているドルニドさんこそ、どんなに忙しくてほんの少しの時間だけでも、美味しいと心から安らげる空間を作るべきだと考えます。誰よりも自分の国は食材が素晴らしく、それを活かして調理する人もいて最高なのだと、誰よりもそれを享受すべき人物なのだと思うのです」
本来ならば一国王に発言するなんで恐れ多いのだが、ここでは一個人として接してくれと本人からの要望ならば、言いたいことも一個人として言わせてもらおうではないか。
何より食べることがどれだけ幸せで心が満たされることなのか、昔は知っていたとしても国王となった今では忘れてしまっている一部なのかもしれないのだ。
食事自体興味が薄いという思考ならば仕方ないことかもしれないが、ランドルンとあれだけ饒舌に語り合えるのならば、それなりに食に拘る部分もあるはず。それを少しの時間でも
ちゃんと取っても良いのではないかとご飯大好きなユフィーラは思わずには居られない。
ドルニドは目を丸くしながらも、すっかり忘れてたなぁと溜息を吐きながら微笑んだ。
「国が大きくなればなるほど、自分の人間的な欲求がいつの間にか後回しにはなっていたのかもしれないなぁ。この前奥さんが最近共に食事をすることが少ないとご立腹だったことを思い出したよ」
「まあ。それは一大事ですよ!同じ食事を同じ時間に共有することこそ夫婦円満の秘訣!」
「そうだな。俺達はなくても円満だが」
「何このデレ具合」
「お前は食事の比率がめっぽう高そうだな」
「ガダン飯最強!」
何故か最後にはガダンのご飯が一番と謳う流れになってしまうユフィーラのガダン信者っぷりは健在である。そんな我欲剥き出しのユフィーラに対し、ドルニドが国王ではない一個人としての優しい微笑みを見せる。
「…だね。時には僕だってそうやって楽しむことも大事だよね」
「そうです!大きな責任を担っている分良い思いをすることも心と体の栄養!奥様と共に居る時間で更に栄養補給促進!」
「ははは!そりゃそうだ。最近は何かと忙しくて諸々おざなりになっていたからなぁ。ちょっと一息入れて心に風を通すことも必要だね。この食事会もその一つではあるけれど…そうそう今日のことも奥さんに話したんだけ―――――」
そこでぴしりと何か思い出したかのようにドルニドが固まった姿にユフィーラは首を傾げた。
「ドルニドさん?」
「…しまった。ユフィちゃんからお誘いもらったことを奥さんに自慢したら、私も何とかお忍びで行けるようにって念押しされていたの…忘れてた」
その言葉にユフィーラは皿を改めてしっかりと持ち直し、次に攻めるガダン飯の偵察に精を出し始めることにした。
国の裏重要人物と噂される三人からは、「あーあ。またここって時の忘れ癖?知ーらない」「火に油を注いでどうする」「フィー、次はどこに行く?」とそれぞれ言い捨てて、去る動きに移行し始めた。
「ああ…まずいぞ。日程が決まって嬉し過ぎて手持ちの仕事をさっさと終えようとそっちばかり気にしてしまっていた…」
「まあ…ご愁傷さまです…?」
「ユフィちゃん…!」
「フィー関わるな」
「最悪お前の保湿剤提供を盾にされるぞ」
「あら…流石に今はガダン飯が最優先なので、丁重にご辞退させていただこうかと」
「…ユフィちゃん」
「それはそれで無理させるなって余計怒られそうだよね」
頭を抱え始めたドルニドに更に追い打ちをかける面々。そこにいた唯一中立的なランドルンから今からでも一言連絡魔術を送ったらと諭され、なんか前にも似たようなことがあったなとユフィーラは卵揚げをもぐもぐ食べながら首を傾げた。
そして時間を置かず戻ってきた返事が一言『覚えとけ』であった。
王妃という肩書きを掻き消し、個人の思いが重々しい短い且つ怒り具合が容易に想像できる文字であったことを震える口調で呟くドルニドの言葉を耳にしたユフィーラは、華麗に向きを変えガダンの新作である魚の岩塩包み焼きに突撃しにいった。
不定期更新です。