訳の分からないまま並行世界に飛ばされたんだが
「おい、起きろ!」体を揺さぶられ、爆睡中の俺が起こされそうになる。
母さんにしては起こし方が荒々しい。
俺は眠い目をこじ開けて起き上がる。
「母さん。ちゃんと起きるから、乱暴に起こさないでくれよ。」母さんの方を向くと
そこには母さんではなく男が不機嫌そうに立っていた。「う、うわあああ」俺は驚き慌てふためきベッドから転げ落ちた。
「あんた誰だよ!?」そう聞くと、男はその問いを待っていたかのように満々の笑みで答えた。「俺は並行世界から来たお前だ」。
は?。。まず、俺の頭の中に浮かんだのは警察に通報する。だった。どうやって部屋に侵入したかはわからないが、
この不審者はだいぶヤバい奴だという事はわかった。とりあえず、こういう時は相手を刺激しないに限る。
まずは相手の話を適当に刺激しないように、受け流し、隙を見て通報だ。
「えっと。その。君は並行世界から来た俺て事だけど何が目的ですか?」。
よくぞ聞いてくれた。という様な反応で相手がうなずき答える。
「俺が来た並行世界だと、俺は紛れもなく最強だった。故に最強すぎて、気づいた時には最強がコンプレックスになってたんだ。
最強には最強なりの悩みがあってな、だから俺がカースト最弱であるこの並行世界に来た訳だ。
つまり、俺と変わって欲しいんだわ」。
俺はふと思った。だいぶコイツこじれてやがる。しかも結構重めのやつ。
俺はなるべく刺激しないように答える。
「うんうん。わかった。辛かったんですねぇ〜。」
すると、男は分かりやすく凄く嬉しそうに答える。「誠か!だいぶ話し合いに苦労すると思ってたんだが、こうもあっさり了承してくれるとは!。
それでは、これから契約を結ぶ。」
すると男は親指の腹をカジッた。血がぷくぷくと溢れ出す。
おいおいマジかよ。マジの奴じゃねえか。
と思っていたら。奇妙な紋章が浮かび上がる。
「え?は?」俺は目の前の現実に頭が追いつかなかった。ナニコレ?夢だきっとこれは、うん夢だ。
すると男が最後に言った。「契約完了」。すると途端に意識が遠のいていく。。
気づいた時には俺はベッドで寝ていた。「なんだ夢かぁ。」
時計を見る。ヤバい遅刻だ。俺は身支度を早々に用意し、一階に降りる。洗面器で顔を洗う。
なんじゃこりゃ〜!鏡を見ると、なんと、さっきの男の顔になっていた。鼓動が早くなる。
なんだこれ、まだ夢でも見てるのか、鼓動が早くなる。顔をつねるが痛い。どうやらこれは現実のようだ。
現実を受け止め切れないが、とりあえずリビングだ。リビングに行って、父さん母さんに会おう。
心を落ち着けよう。リビングに行く。「あらマキトおはよう!」俺は思考が止まった。
「か、母さん!?」そこには別人がいた。母さんには失礼だが、母さんとは程遠い整った容姿。
「あらマキトどうしたの?そんな怖い顔して、怖い夢でもみた?」
俺はとりあえず。落ち着いて答える。「あぁ、うん。ちょっとね怖い夢みた。いや結構怖い夢かも。てか今も夢の中かも」。
母さんと思わしき人物が血相を変えて答える。「えぇ!大丈夫?マキト?母さん心配よ。
今も夢の中だなんて、そんな、うわ言マキトらしくないわ。」
そこから高身長ルックスの良い男が現れる。「どうした。母さん。マキトがどうかしたのか?」。
嘘だろ。。父さんもこんな別人に。。俺の知ってる父さんは腹の出てる髪ボサボサのだらしなさが取り柄のダメ親父だぞ。
「マキトがなんかおかしなこと言うのよ。これは夢だって。」
父さんと思わしき人物が答える。「ハハハ、なんか拗らせちゃったか?マキトもそういう年頃だからなぁ。
まあ、あまり母さんを困らせるなよ?。」
俺は呆然とした。なんだこれ俺はとうとうおかしくなっちまったのか?。
母さんが時計をみて何かに気づいたかの様に俺に話しかける。
「マキト!こんな時間よ!早く学校に行きなさい!遅刻しちゃうわよ!」。
「うん、ホントだ!急がなきゃ」。
慌ててカバンを待ち玄関に向かう。
とりあえず学校に行こう。それから考えよう。玄関を出る。すると目の前に美少女がいた。
そう一言で言うなら美少女だ。まごうことなき美少女。
「おっそ〜いマキト。あんたらしくないわね。時間にシビアなあなたがこんな時間に家を出るなんて」。
母さんが玄関から顔を覗かせる。「アユミちゃんマキトを宜しくね〜
マキト、アユミちゃんに変なことしちゃダメよ?いってらっしゃ〜い!」。
ア、アユミてあのアユミ!?俺の知ってるアユミは、こんな美少女じゃないんですが。。
アユミが赤面する。「あんたもいつものように何か言い返しなさいよ!」。
俺は慌てて弁明する。「あぁ、ゴメンゴメン。」
「なによ、ゴメンて。早く学校行くわよ!」。
とりあえず急いで学校に向かうことにした。
学校に行く途中色々話してわかった事だが、
アユミは俺の知ってるアユミと関係性は同じく、どうやら幼馴染らしい。
学校に着くと、校門前で物凄く厳しくて有名な生活指導の田辺先生が他の生徒を叱っていた。
良かった。田辺先生は変わってない。しかし、安堵していたのも束の間であった。
ゲッヤバい。なんて遅刻の言い訳すれば。。顔をこわばらせてると、アユミが不思議そうな顔をする。
「普通の生徒じゃ叱られちゃうけど、あんたなら大丈夫じゃない。なんか、マキト今日おかしいわよ?」。
信じられないが、どうやらこの世界の俺は顔が広いようだ。
校門を通りがかるとき田辺先生が喋りかけてきた。やっぱり怒られるよな。流石に、あの田辺先生だし。
「マキトさん。おはようございます。朝の朝礼は既に始まってますよ?今日は調子でも悪かったんですか?」。
「はい。少し、いやだいぶ調子悪いかもしれないです」。
「それは大変ですね。保健室に寄った方が宜しいのでは?調子が悪くても学校に来てて偉いですね!」
なんだこれ。あの田辺先生があんなに優しいだなんて。あり得ない。
呆然としてると、アユミが急かす「早く行くわよ!」。とりあえず教室に向かおう。
教室に入ると、担任の加藤先生が自分達に気付き、心配そうな表情をしている。
加藤先生も見た目が変わってない。ここで、ある推測をする。
俺の身近な人物は容姿が変わっているが、そうでもない人は容姿が変わらないという事である。
「マキトさん。アユミさん。おはようございます!マキトさんがこんな時間に学校に来るなんて。何かあったんですか?」。
アユミが困った顔で先生に詰め寄る「加藤先生。マキト、今日なんかおかしいのよ。」
俺は言い訳を考える。「今日はなんか調子が悪いというか、その、ハハ、」。
こういう時に限って上手い言葉がでない。とりあえず席に座る。
出席の確認をして、一限目の準備をする。体育なのか、校庭にみんな集まっていた。
普通に授業を受けて、心を落ち着かせよう。
さっきからイレギュラーばかり起きて、ずっと心臓がバクバクしている。
こういう時はリラックスだ。加藤先生が皆んなに語りかける。
「これから、詠唱限定体術禁止の試合を行います!。」
んんん?詠唱?何言ってるんだ加藤先生。教師あろうものが、そんな厨二病みたいなこと言っちゃいかんでしょう。
「それでは昨日言った組み合わせでやります!。それでは第一試合初め!」。
試合が始まる。うわ〜ヤベ〜稲妻やら氷やら飛び交ってるよ。ハハハ。
アユミが俺の元に駆け寄る。「何ボケーッとしてんのよ!どんな試合でも吸収できるものは
吸収して自分のものにする。あんたそう言ってたじゃない。今日あんたホントおかしいわよ?。」
うわ、俺そんな事言ってたんだ。この世界の俺ストイックだなぁ。」
「次マキトさんとケントさん!」え、俺?
モタモタしてると俺の番が回ってきた。
「ケントは学年No.2だけどあんたなら余裕でしょうね。でも実力差があるからって、あまり舐めてかからないことね。」
周りがザワつく、周りから女子達の声援が聞こえる「マキトさん頑張って〜素敵〜!」。
おいおい嘘だろ。この世界の俺モテモテじゃないか!。
「ケントなら大丈夫!」1人の女子がケントの応援をしている。
俺の応援をしている女子達が睨みつける。耳を澄ませると陰口が聞こえる。よく思ってないようだ。
てか俺こんな耳よかったっけ?。加藤先生が開始の合図をする「試合始め!」。
試合開始と同時に相手が詠唱を始める無数の氷の刃が俺の方向めがけて降り注ぐ。
氷には炎だ!俺はニヤリと笑みを浮かべ大声で叫んだ。メラゾーマ!相手が顔をしかめる。
決まったな。心でそう思った。だがしかし、あれ、なにも起こらない。
氷の刃が俺の体を裂く。痛い痛い痛い痛い。
なんだこれ。俺この世界では最強なんじゃないの?。
ヤバいこれ俺死ぬんじゃね?。俺は決意を決め行動に起こした。この状況を打開する方法。
そう、土下座だ。「参りました〜!」。顔を上げると周りもケントも顔が何かに怯えるような表情をしている。
俺の後ろに視線が集まっている。後ろを見る。なんとそこには無数の光の球が浮かんでいる。
そして形状が矢の様に変わりケントめがけて放たれた。ケントが慌てて詠唱を始める。
ケントの周りにバリアの様な物が現れたが、光が降り注ぐ度に亀裂が入る。
ケントの周りの地面が深さ何メートルも抉れている。
こんなの体に当たったら、溜まったもんじゃない。
ヤバいヤバい。早く攻撃をやめなきゃ。アユミが叫ぶ
「決着は着いてるわ!早く!詠唱解除よ!早くマイリて唱えなさいよ!」
「マイリ!」。詠唱を唱えた。だが遅かった。バリアは砕け、ケントに直撃した。
直ぐに試合は止められ、救急車が呼ばれケントが運ばれていった。
どうやら、精霊のご加護とやらのおかげで命に別状はないらしい。
後で話を聞いたが、詠唱を解除するには唱えた時と同じ詠唱をしなければいけないらしい。
つまり、参りましたの「参り」が詠唱の一つだったらしい。
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