最後のホワイトクリスマス
十日前、母は去った。父は半年前に姿を消した。
私の名は幸。
でも名前の意味とは縁遠い幸薄い女の子だ。
私は今日の誕生日で8歳になる。
でも家の中には食べ物は無い。
冷え冷えとした部屋の中は、薄い布団があるのみ。
窓の外にお隣さんのキラキラ光るイルミネーションが見える。
その家には優し気なお母さんと、お父さんの姿が見え、子供たちと楽しそうに飾り立てたクリスマスの飾りから、幸せが伝わってくる。
もう1週間、何も口にしていない。
水だけの暮らしに限界が来たようだ。
電気を止められたこの部屋は、窓の外のチラチラ光る明かりだけが光を灯している。
家に電話は無い。
学校か児童相談所の人かわからないが、2度ほどドアを叩いたが、私は出なかった。
あの怖い借金取りかもしれないから。
「誰か助けて!!」
心の叫びは誰にも届かない。
お母さん、お父さん・・・・。」
逢いたい。でも願いが叶う事も無かった。
神様・・・・。
神様って本当にいらっしゃるのかしら?
どうして私は助けてもらえないの?
窓の外からお隣の幸せそうな子供のはしゃぐ声が聞こえてくる。
今日はホワイトクリスマス。
きっと一年で一番幸せな時を過ごせているのでしょう。
神様の祝福はお隣に有って、私にはやってこない。
今日は私の誕生日。
ひとりきりのクリスマスの夜。
寒さと空腹で気が遠くなってくる・・・・。
私には何もない。
母が去年の誕生日に買ってくれたお人形だけが唯一の友達だ。
空腹で眩暈がする。
薄い布団に横たわりながら、お人形のマーガレットを隣に寝かせる。
誰も救いに来てくれない。
神様もいらっしゃらない。
ホントは神様なんていないのかも?
あぁ、目の前が暗くなる・・・・。
意識が遠のく・・・。
幸は永遠の眠りについた。
とうとう神様は来てくれなかった。
つづく
幸の前に神様はいません。
でもこの物語を読んで悲しんでくれた人の数だけ、涙を流してくれた人の数だけ、幸の魂は救われたのだと信じたい。
幸の前に神様はいません。
でもこの物語を読んで悲しんでくれた人の数だけ、涙を流してくれた人の数だけ、幸の魂は救われたのだと信じたい。