第1章 第12話 精霊との出会い
ウルフの革鎧セットを修理していると、ファリスさんが呼びにきた。
エルフの村のみんなで夕食を取っていると、族長から、感謝のお礼に、新緑の杖(D)を貰い、エルフの森に入る許可証を貰った。
この許可証は、他のエルフの森にも、入る事が出来る様になり、村に行商等にも行ける様になった。
また、村の奥に、精霊の泉が有り、精霊に気に入られると、その精霊の加護を授かる事が有るとの事だった。
精霊の加護の事を聞いたセイヤは、みんなに挨拶して、部屋に戻り、修理品の装備を修理していると、ファリスが来た。
「明日、精霊の泉に行ってみませんか?」
「精霊の泉ですか? 僕が精霊に認められるでしょうか?」
「セイヤさんなら、きっと精霊に認められます! もしかしたら、『付いて行きたい』っと云う精霊がいるかも!」
「いゃ、其はないでしょ… 僕は、そんな凄い人間じゃないですよ!」
「きっと、精霊は会って加護をくれます! 精霊がそう言ってますから!」
「精霊が言ってる? ファリスさんは、精霊に会って、話しをした事が有るの? 其に精霊が言ってるって、ファリスさんには、精霊が付いてるの?」
「実は、私精霊の加護を持っているんです… 精霊も、私と一緒に行動してます。 その精霊が言ってますから!」
ファリスは、自分は精霊と一緒に居て、精霊の加護を持っている事迄打ち明けた。
「私の精霊は、そんなに上位の精霊じゃないので、戦う事が出来ず、コボルトに捕まってしまいましたが、魔法の強化等に役立てくれます。」
「そうだったのですね。 アッ!コレ精霊かな?
僕にも見えてるの。」
ファリスの周りを良く見ると、ファリスの周りを翔ぶ妖精の様な、ナニかが見えてきた。
「セイヤさんには、ニーマが見えるんですか!!! きっと、精霊と会う事が出来るはずです!!」
『お兄さん、人間なの? 強い魔力を感じる… 』
突然、セイヤの頭の中で声が聴こえ、ニーマと呼ばれたと思われる、妖精の様なナニかが首を傾げた。
「エッ、今の! ニーマと呼ばれた、君の声? 頭の中で響いたけど……」
「ニーマの声が聴けるのですか? なかなか出てきて、声も聴かせてくれないのに!」
『ボクの声だよ!! 聴きとれたみたいだね! ボク、ニーマだよ』
「ニーマっていうんだ! よろしく、ニーマ エッ、話しをしてくれないの?」
『ボクに話し掛ける時は、ボクを見て、頭の中で想うとボクに聴こえるよ!』
「私には、時々なのに、なんだかズルい……」
ファリスは、悄気てしまった。
「『そんな、たまたまだよ『ネッ』』!」
「ムムム、ニーマは、肝心な時に起きててくれないから…」
『ボク、ファリスの肩で髪を持って、寝てる事多いからネ』
「『じゃ、明日の朝、泉に行ってみよう! 精霊さんに会えるかもしれないからね!』」
ファリスとニーマに、明日の朝泉に行く事を伝えた。
「じゃ、明日の朝、迎えに来るわ!」
ファリスは、云って帰って行った。
修理品の修理を済ませ、ボックス内に入り、体を洗ってから、部屋に戻り、眠る事にした。
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転移13日目 エルフの村
翌朝早く、ファリスはセイヤの元を訪れ、一緒に精霊の泉に向かった。
村の奥に進むと、小さな泉と祠が有り、祠の方に向かって行った。
ファリスによると、祠にクリンの実をお供えすると、よく精霊が顔を出してくれる事がある、との事だったので、ボックス内を探してみると、クリンの実が、ある程度有ったので、一握りのクリンの実をお供えしてみた。
『ワァ!! こんなに!』
ニーマの声が頭に響き、泉の周りにも、精霊がちらほら出てき始めた。
精霊は、十数匹になり、ニーマをはじめ、みんな、クリンの実を食べ始めていた。
ボックス内では、クリンの実は薬用のフォルダに入っていたが、精霊には食用として用いられる事がわかった。
精霊の中で、魔力の大きな精霊を観ていると、その精霊が近づいて来ると、セイヤの頭の中で、声が響いてきた。
『あなた、ナニ者? ナニか、違う香りがするわ? そっちは、ニーマだったわね! あなたが連れてきたの? 』
セイヤの方を見ていた顔が、ニーマの方を向く。
『あっ、あぁぁ、女王様、ボク見付けられちゃって!! 魔力強かったから、見えたと思う…』
ニーマは、縮こまってしまい、項垂れていた。
「初めまして、セイヤと言います。 精霊の加護か貰えたらいいなぁ~と、来てみました。」
『加護は、そんな簡単に貰える物じゃないの!!』
「そうなんですか、すみません、知らなかったので…」
「ターニャ様、ご無沙汰しております。ニーマの番のファリスです。 私が案内しました。」
『ファリス、ご無沙汰です。 ニーマは悪戯してないですか?』
『女王様、ボク悪戯してないです… ちゃんとファリスと遊んでます!』
『遊んでばかりいないで、ファリスに魔法の勉強させなさい。 何の為に、あなたは出たのです!!』
「で、どうやって、認めてもらうのですか?」
『って、あなたは、急ぎすぎ!! それで、ファリスは、魔法は何処まで覚えたの?』
セイヤは、自分の事が進みそうもなかったので、祠の方を見ていると、クリンの実は、もう無くなっていた為、自分の食事で食べて甘かった、セタの実?という実を、祠にお供えしてみた。
『って、ソレ、セタの実~~~~!!!!!』
女王様、性格変わってません? セイヤは思った。
祠に、一斉に集まって奪い合いって……
「まだありますから、一人1つづつ!! どれだけセタの実好きやねん!!」
『セタの実は、精霊の活力が増えるの!! まだ持ってたら、もっと持ってたら、分けてくれ!!!』
「そんな事より、ファリスさんの魔法の勉強の話してませんでしたっけ?」
『そんな事って……… 精霊に取っては、大事な事なんです。』
「その、大事な事が、ファリスさんの魔法の勉強の事じゃないんですか?」
『ウゥゥゥ…… 確かに、ファリスの勉強も大事………』
「先ずは、精霊さんの仕事をしませか? 皆さん、1つづつは食べたのですし」
『オッホン!! 精霊の仕事! でっ、ファリスの勉強の方は?』
『シャクシャク… アヮヮヮ オッホン! ファリスは、固有スキルで、精霊魔法を持っているので、バッチコイです!』
精霊って、コレでいいのか……?
『シャクシャクって、何時まで食べてるの!!! ソレに、私のマネしない!!! じゃ、魔法の勉強は進んでるのね!』
「ファリスさんの事は、終わりましたか? 次は、『セタの実はありますか?』……って、被せてこない!!! 僕が加護を受けられる、かどうかって話でしたよね!」
『で、セタの実は?』
「って、そんな事より、加護が受けられる、かどうかの方が、重要なんですけど…」
『そんなの、加護貰えるって事にして、セタの実の方が大事!!!!』
「加護って、そんなに安い物だったんだ!!!」
『安い訳無い!!! でも、セタの実も、同じ位大事!!!』
「って、セタの実は、森に有るでしょ… 本当にどっちが大事なの………? 」
『なかなか手に入らない、から困ってるのよ!! あなたに付いてけば、セタの実が食べられるの?』
「って、僕の加護の話はどうなった? って、まさか、女王様が付いて来る気になってない?」
『ムムム…… 私が行くわけには…… そうだ!! 女王引退する!!! あなたに、加護を授けて、引退して付いてく!!』
「って、女王引退して、いいんかい!!!」
『加護はあげる!! 女王引退して、あなたに付いてく! あなたは、私にセタの実を食べさせる! これで、丸く収まる!!』
「女王引退で、丸く収まるのかい!!! 明日、もう一度来るので、皆さんで話し合って下さい。」
『本当に来るのねッ!!! ウソついたら泣いちゃうからね!』
「泣くなっ! 話し合えって言ってるの!!」
セイヤは、どっと疲れてしまった。
セイヤは、足早にエルフの村に戻り、それにファリスが付いていく。
エルフの村の入口に戻ると、セイヤは、ファリスに聞いてみた。
「精霊って、何時もあんな感じなの? 話ししてて、疲れたんだけど…」
「何時もは、あんな感じはないのですが……」
ファリスも、困惑気味だった。
セイヤは、事の次第を族長に報告し、また明日来る事を伝え、村の入口から出て行った。
「明日、待ってます! また、案内します!」
エルフの村の入口迄、送りに出てきたファリスは、セイヤにそう告げ、村に戻っていった。