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Op2 Beautiful girl~無意味な妄想とその代償~


美少女。

それは少年少女問わず皆が平等に憧れるもので、

少年の彼女にしたい願望と少女のなりたい自分の理想、その両方の頂点に堂々と君臨している絶対的なものなのである。


美少女とは、当然だが食べ物ではない。よって口にすることはないのだが、もし仮に食べ物ならば、それは幸せな香りを辺りに匂わせ、口にひとたび入れればそれは一瞬のうちに溶け出し、濃厚だが、しかししつこくない甘みが口の中全体に広がり、喉を通り抜けた後もほのかな余韻よいんを楽しませてくれる素晴らしいものに違いないだろう。

全少年少女はそのマボロシの食べ物を探しだしそれを手にするために日夜奮闘し、今を生きている。



その事実は四月の末を平和に生きている、このオレ遠藤真也えんどうしんやとて例外ではなかった。

確かにオレは平々凡々とした日常を渇望している。それはオレがとある事情により日常を突如にして奪われ、超常に身を置くことになってしまったことが原因だ。だから、日常を救うべく今のオレはこの超常と向かい合わなければならないのだ。

そんな、中華料理の名前をした巨大亀に姫をさらわれてしまった配管工はいかんこうのような心境のオレだが…、


それでも、そんなオレでもその平和な日常の中で美少女と呼ばれるような可愛い女の子と出会い触れ合うというちょっとした事件くらいには巡り会いたいんだ。


理由はカンタン。それはオレこと遠藤真也も立派なオトコノコだからだ。



そもそも美少女とは非常に曖昧で不確定な存在だと思う。


いくら少女と言っても、そこには必ずしもロリータ要因が含まれているとは限らない。それが美少女というものを不確定なものにしてしまっている一つの要素だ。つまり、年齢の幅が微妙なものだからである。

それはさすがにどんなに可愛く、または美しい女性であっても赤ん坊やアラサーの女性を美少女と呼ぶ人間はいないが、だとしたらどこからどこまでの年齢層を美少女と定義付けるのだろうか?という疑問を指す。

一般に、少女と言えば小学生から中学生くらいの女性を指し、それ以下を幼女、それ以上をティーンエイジャーやら青年やら言ったりする。しかし、ギャルゲ(美少女ゲームor恋愛シュミレーションゲーム〈Notガールズサイド〉)では高校生や大学生攻略というものがオーソドックスであり、ギャルとはガールと同じく少女を指す名称であり、結局のところ年齢層の定義付けに確定的なことは言えないのだ。

また、美的センスはその世界及び時代の常識に依存するところが大きいが、それでも個人個人で異なるところがある。それが二つ目の要因である。

例えるなら、一方では「美少女」とちやほやされている女の子が、他方では「可愛くない」「別にフツーじゃね?」というあまりよろしくない評価を頂いているというものだ。


まあ、いろいろ意見はあるがオレ的解釈の結論を述べるならば、


『美少女とはめちゃくちゃ可愛いいが、どこかに幼さも併せ持つおんなのこ』


って、ところだろうか?また、同時にこうも思う。


『美少女とは遍在するものだ』


人間には人それぞれ共通部分があるといえど、異なる理想を持つ。

理想というものは、いざそれを現実に顕そうとすると、その存在の注文が高ければ高いほどそれが高次元な存在になるために現実に確定的な存在として顕すことが出来ないのだ。

それゆえに、現実界にある美少女とは“己が抱く美少女の理想象の近似値”と言えるのだ。


だから本来、国民的な美少女や世界で一番の美少女なんてものは存在しない。あってもそれは美少女の個々の概念の共通性が多いだけで、ただ高い支持率を誇るだけである。全時空全員一致の美少女なんてものはいない、いたとしても現実界ここでない、もっと高次なイデア界かなんかの世界にしかいないだろう。


逆に考えれば、現実界ちきゅうにおいて美少女というものは多数存在する…、先程の言葉を使えば遍在すると言える。本当は美少女は希少だから遍在ではなく偏在を用いるべきなのだが、地球には何十億人もの人間がいてそれと同等かそれ以上の理想が存在するのだ。



多数の人間がいて多数の理想がある…①

理想界の美少女とは高次ゆえに、現実界の美少女とはそれの近似値となる…②

現実界ちきゅうには少女が多数存在する…③


①、②、③より現実界の美少女は遍在することになる。証明終わり。



どう可愛いのか?が問題ではない。

一人の人間が存在すれば、一つの美少女が存在することになるのである。




……………………


「ふぅー…」

真也は自室の机に向かい、相棒のメタリックレッドのノートPCを使ってだいたいそんなことを自分のブログに書き終えると溜息を一つついた。

そのまま椅子から反るように後ろを見ると反転世界が見えた。

と言っても、その景色は壁を埋め尽くすように建ついくつかの本棚とそれがないわずかな隙間から見える萌黄色もえぎいろの壁である。その反転世界のベランダ側である左端(通常視点では右端)には真新しい、中身がスカスカの本棚がある。それは、ここ最近に併設したばかりの新しいDVD用の本棚で、未だに先日購入したばかりの『ソラトの家臣』(一~六巻)しかない。

通常ならば、新設はDVDが多くなってからやるものだが、なんとなく良さそうな棚を地元のアウトレットで見つけてしまったんで、衝動的に買ってしまったのだ。ダメ人間ですいません。


その棚の空虚な佇まいは自然と真也に寂寥感を与えた。



「美少女…か」

真也は今さっき自分が書いたブログを思い出してそうつぶやいた。


「(オレにとっての美少女って、いったいなんなんだろう?)」


同じマンションに住んでいて、このマンションの大家の娘さんである篠原琴音しのはらことねという少女がいる。

同じ学校で同じ学年で同じクラスでもあるこの少女はいわゆる幼なじみであり、彼女曰く腐れ縁だ。

だからといって別にオレと付き合っているわけではない。いや、そうだったらオレは嬉しいんだが、普段のオレに対する罵詈雑言ばりぞうごんと暴力からかんがみるにその可能性はゼロだ。



彼女は学校一と噂されるほどの美少女である。


胸は小さすぎとは言えないまでも残念な部分があるが、それでも本人は自覚がないようだが実際見た目可愛い。肩甲骨けんこうこつ辺りまでかかった優美な髪は揺れるたびにさらさら感が伝わるし、笑顔もかなりぐっとくる。


「(…でもな)」


可愛いけど少し違う。

真也はそう思わざるを得ないのだ。


今まで、いろんな漫画やアニメを見て「可愛い」と何度も何度も言ったことがあるけど、それは自分の理想とはどこか違う気がした。

ただ、なんとなく「こんな可愛い子もいたのか…」という理想とは離れた新発見の美少女だ。

琴音にしても、憧れの美少女というよりは長年の付き合いから“兄妹”というイメージが大きく、その視線によっての美少女という意味合いが大きい。



どれにしても、“美少女”なのであるがオレが追い求める“美少女”とは違うものな気がするのだ。


……って何言ってんだオレは?アンチテーゼかこれは?可愛い女の子を二次元で見すぎて自分の理想なんて忘れちまったのかもな。


…はぁ、馬鹿げてる。

でも…、まぁ、いいか。



この考えかた自体が投稿したブログを否定していることに気付いた真也はそう結論づけると、本棚から漫画『射手士☆クリンの冒険!』の最新第一巻を取り出しベッドに寝転んで読み始めた。




「………、にしても美少女とやらに巡り会いたいものだな」

読みながら、この妄想をこの台詞セリフめた。




しかし、真也が本当に平和を望むならばそんなことを考えるべきではなかったのかも知れない。

人間は欲望により大きな大火を生み出す生き物なのだ。


真也の前に超常びしょうじょ刻一刻こくいっこくと近付いていた。

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