06
「貴方、ラインハルト様のなんなのかしら?」
高圧的な物言いに、言葉が詰まる。
大聖堂までの馬車の道のりは良かった。
聖女様と、ラインハルトと、サーシャの三人で馬車に乗り込み、聖女様が可愛らしく囀り会話をするのを聞いているだけだったからだ。
ラインハルトが適当に相槌を打つだけで一喜一憂する聖女様はとても乙女らしく可愛かった。
時折投げかけられる視線には気づかないふりをして、道中は読書に勤しんだ。
大聖堂に到着すれば、聖女様を探して司祭や神父たちがてんやわんやの大騒ぎ。
連れ帰ってきたラインハルトは大げさなくらい感謝されていた。
司祭にご挨拶を、とラインハルトが連れて行かれてしまい、ひとり暇を弄んでいたサーシャを呼び止めたのはお召しを変えた聖女様だ。
「何、とは」
「ラインハルト様は、いつだって貴方を気にかけていらっしゃるわ。婚約者であるあたくしを差し置いて、彼のお人の気を惹いているじゃない」
「……失礼でございますが、副団長と聖女様はまだ婚約者になっていないとお聞きしています」
「いずれなるのだから、婚約者を名乗って何が悪いのかしら、じゃなくって! 貴方と、ラインハルト様の関係を聞いているのよ」
関係、と言われても。幼馴染で、上官と秘書で、――秘密の恋人関係なだけだ。
「ただの、幼馴染……? そんなの信じられるわけがありませんわ! 貴方、ええっと、お名前はなんと仰って?」
「アレクサンドラ・ケルルと申します」
「そう、ケルルさん。貴方はラインハルト様にあたくしという婚約者がいながら、副官の座についているというのね? 普通、婚約者のいる人の副官にわざわざ就くかしら?」
サーシャ、とはアレクサンドラの愛称だ。
女の勘というやつだろうか。
可愛らしい顔に憤りを浮かべて詰る聖女様に上手い言葉が出てこない。
婚約者のいる上官に、と言われてもだ。
あくまでも釣書が届き、顔合わせを一度しただけで婚約者候補の立ち位置のセレスティーナと、元々秘書官という立場のサーシャ。
どちらが立場上強いかと言えば、セレスティーナである。
ただの秘書官と、婚約者候補の聖女様。並べなくてもわかる。
きっと、明日にでも「聖女様のご要望で」と左遷されるか首を切られるかのどちらかだ。
とても息苦しかった。リボンタイ、強く締めすぎたかな。
「それに……なぁに、貴方。ラインハルト様の隣に並ぶには、少々……ふふ、いいえ、なんでもありませんわ」
カッと、顔が熱くなった。
見た目をバカにされるのは慣れてる。自覚だってしている。けれど、それでラインハルトのこともバカにされているようで心苦しかった。
「ラインハルト様に、貴方みたいな野暮ったい人は似合わないわ」
メガネの奥で、涙が滲んだ。
泣いちゃダメだと分かっているのに、どうしてか我慢できない。外の世界ってこんなのにも息苦しかったっけ。
「――遅くなった、サーシャ」




