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パレードはとても華やかで賑やかだ。
器楽隊や踊り子が列を成し、来賓の貴族たちが乗る豪華な馬車に街人たちは手を振った。とくに、大国の聖女様は老若男女に人気で、よくずっと笑顔を浮かべていられるものだ。
「サーシャちゃん、せっかくの別嬪さんがしかめっ面で台無しだ」
「アルさん……わたし、そんな顔してました?」
「聖女様が嫌いかい?」
う、と言葉に詰まる。好きか嫌いかで問われたら、好きじゃない。けど嫌いと言うほどでもない。
そもそも、ラインハルトとの見合い話がなければ、関わることすらなかった御仁である。
聖女が乗る馬車の後ろを行く騎士団の精鋭たちに混ざり、時折子供に花を配るサーシャの胸中は複雑だった。
パレードで配る花には半永久保存の魔法がかけられており、団体によってそれぞれ違う花を配り歩いている。
サーシャが配っているのは王国騎士団の象徴でもある気高い純白の薔薇だ。本数もそれほど多くなく、もう少しで配り終わりそうであった。
パレードは大通りであるメインストリートを一周して終了だ。馬車は順番に王城内へと入り、大広間にて祝杯のパーティーが行われる。
パレードが終了すれば、聖女様の護衛を務めているラインハルトもお役御免だ。
出店も多く、滅多に来ない隣国の店はどれも興味を引かれた。
行きたい店に目星をつけながら歩いていると、パレードの先頭付近が騒がしくなる。
「脱輪トラブルみたいだな」
「じゃあしばらくパレードも動かないでしょうね」
「馬車を用意したのはこの国だろう。後々トラブルにならなきゃいいが」
気難しい貴族であれば、クレームを入れること間違いないだろう。地位のある貴族であれば外交問題に発展する可能性も高い。
せっかくの建国記念パレードに災難なことだ。
「――きゃあああ!!」
賑やかなムードに、悲鳴が劈き響き渡る。
聞こえたほうを見れば、腕から血を流した女性が蹲っていた。
「なに、」
驚き瞠目していると、あちこちから悲鳴が上がり始める。
「なに、何が起こって、」
「サーシャちゃん! 俺から離れるんじゃねぇぞ!」
目の前を、白く光った刃が振り下ろされる。ガギンッ、と鈍い音を立ててそれを防いだのは騎士団員のアルフレッドだった。
パレードの人混みに乗じて、クーデターが起こされたのだ。
観客たちは混乱に走り出し、あちこちから悲鳴が上がる。ひとりだけじゃない。大勢の観客に何人もの刺客が紛れ込んでいた。
「あっ」
花籠が落ちていく。白薔薇が散るのがスローモーションのように見え、心が大きくざわめいた。
「サーシャ!!」
トス、と腹部が熱くなる。
「え、」と見下ろした身体に、柔らかな腹部にナイフが深く突き刺さっていた。溢れ出る血液が、青いドレスを赤黒く染め上げ、シミを作っていく。
急速に失われていく血液に、サァッと血の気が引いて、頭がぐらりと揺れた。
「ッ、サーシャ、サーシャ! なぁ、返事をしてくれ、」
泣きそうなラインハルトの顔が目の前にあり、朦朧とする意識の中で頬に手を伸ばす。手のひらにべっとりとついた赤い血が、白い頬を汚したのを最後に、サーシャの意識は暗転する。




