第1話 始まり
ふと思いついたので描きました。
発想次第でどう物語が傾くか分からないので、読者の皆様も思い思いを描いてこの物語を読んでいただけたら幸いです。
走った、走った。
ひたすら走った。
「おい、てめぇ!まちやがれ!!」
少年は暗い路地を追っ手から逃れるように走っていた。
「ハァハァハア...」
少年は息を切らしながらも路地を上手く使い、未だにおってくる男達から逃げていた。
だが、少年と大人の男たちとでは体力の差が生まれてしまう。
少しすると、少年は追い込まれてしまった。
「ははっ、やっと追い詰めたぜぇ」
「おとなしくすんなら殺しはしねぇぜ?」
「ぎゃははっ!」
男達は勝ちを確信していた。
少年の体力は見るからに限界を迎えていて、手を膝についている。
だが、男達は気づいていなかった。
「.......ふっ」
少年の口角が上がっていることを。
ーー路地の屋上ーー
「あれ?少年と男共が消えちったぁ」
少年と同じくらいか少し上くらいの少女が路地での一連を眺めていた。
「あらあら、あの子はどうなるよかしらねぇ」
おっとりしていて、グラマラスな女性が片手を頬にやりながら心配をしている。
「んー、こっからじゃ分からないやぁ」
少女が残念そうに呟くが、直ぐに顔を上げた。
「あ、アイツがいるじゃん!後で聞こぉ」
「そうねぇ、彼女なら気付かれずに見れるものねぇ」
少女の発言に女性は言葉を重ねた。
二人は彼女から報告が来るのを待つためその場に留まった。
ーー???視点ーー
「え、ありえない.......」
私は思わず声に出してしまい、咄嗟に口元を押さえた。だって、さっきの一連をみて予想外のことが起こったのだ。
少年が男達に追い詰められて、詰め寄られた時に鮮やか過ぎて魅入ってしまった。
体格はお世辞にもいいとも言えない少年。
だが、それを補うように手先が器用だった。
ある程度の距離を開けていたため、細かくは見えなかったが、驚きを隠せいほどだった。
「あ、そうだ。二人に報告して少年をつけないと」
彼女はそう言うと、暗闇に姿を消した。
少年を追うために。
ーー暗い路地の外ーー
「ふぅ.....」
少年は脱力し壁に背を預け一息つく。
「今回もこんだけか....」
少年はポーチのようなものを手にそう言う。
「人数が少ないとはいえ重かったからなぁ.....」
自分の仕事量と釣り合いのない成果に残念そうに項垂れた。
すると、少年が急に顔を上げた。
「ねぇ、そこにいるんでしょ?でてきなよ....」
路地の奥の暗闇に向かって少年は一言言う。
が、出てこない。
「はぁ、ここらでも狙えるからね?」
少年は口角を上げてそう言った。
すると、暗闇に歪みが生じ一人の女性が出てくる。
「す、すまない!君の力が気になってしまって」
あたふたしながら、答える女性に気が抜ける少年。
「はぁ、別にいいよ。誰か知りたかっただけだし」
少年は興味がなさそうにそっぽを向いた。
「ところで、お姉さんの後ろにいる二人は誰?」
少年がそう言うと、女性の後ろから二人の声がした。
「ありゃりゃ、よくわかったねぇ」
「あらあら、気づかれちゃったわねぇ」
少女ともう一人の女性がそう言う。
「で、あたらは俺になんか用なの?」
少年は男達とやりあっている時、誰がこっちを見ていることに気づいていたのだ。
「えぇ、そうね。その前に自己紹介をしておくわ」
グラマラスな女性がそう言う。
「あいあーい、ウチは、脱兎だよぉ。よろしく〜」
眠たげに少女こと脱兎が言う。
「私は、影夜だ。よろしく頼む」
礼儀正しくお辞儀をする影夜。
「最後にあたしは、鬼姫よ。よろしくねぇ」
おっとりとそう言う鬼姫。
「うん、自己紹介どうも。じゃ、僕はこれで」
少年はそう言い帰ろうとするが、直ぐに脱兎に回り込まれ鬼姫に捕まる。
「あらぁ〜、どこへ行くのかしら?」
少年は悟った。
この人から逃げるのは無理だと。
「わ、わかった。自己紹介するよ....」
鬼姫はそれを聞くと手を離した。
「僕は」
鬼姫達は、少年の名前を聞いて驚いた。
なぜなら。
「僕の名前は....」
少年の名前は。
「縫合 糸織」
既に滅んだとされていた一族の名前だったからだ。
いかがでしたでしょうか。
名前を考えるのが大変でした。
今後もよろしくお願いします!