銃声
渡したいもの。
それは、この家の中にあるのだろうか?
僕は最初、武器はないかって聞いた。
それを聞いて、思い出したかのように、おばさんは答えた。
「渡したいものって、武器か?」
この家の中でそれと思しきものは見た記憶がない。
……ということは、ここではないどこかに、それがある可能性がある。
スマホの中に、それの在処を示したヒントがある?
僕は試しに地図アプリを起動して、登録されている地点を拾い出した。
一件だけ、特定の場所が登録されている。
「……ロズウェル?」
ロズウェルは、宇宙人をモチーフにしたカフェなんかがある街だ。
ここからだと結構距離がある。
一度も行ったことないし、おばさんだってこんな所に用があるとは思えない。
その時、外から銃声が響いた。
おばさんがリボルバーの引き金を弾いたんだろう。
もうじき、戻って来る。
僕は、他に手がかりになりそうなものはないかスマホを確認しつつ、窓から外の様子を伺った。
「……え?」
一人?
おばさんの手には、リボルバー。
リザは、どうした?
何か、様子がおかしい……
不穏な空気を感じた僕は、咄嗟にキッチンの方に身を隠した。
おばさんが部屋に入ってくる。
「……ウォーリー、どこに隠れた?」
心臓が高鳴る。
リザはどうしたんだ……
しかも、僕を探している。
「……そこか」
一瞬で居場所がバレると、銃口をこちらに向けて来た。
「おばさんっ!」
操られているのか?
でも、今はそんな悠長に考えてる場合じゃない!
「くっ」
僕は、すぐ近くにあったフライパンを盾にして、身を守った。
銃声。
そして、ガアン、という耳をつんざく音。
弾丸がフライパンに命中し、反動で後方へと飛んでいく。
やばい……
絶対、催眠で操られてる。
僕は、ポケ〇ンGOのアプリを起動した。
「ウォーリー、シネッ!」
撃鉄を起こすと、引き金に指をかける。
くそ、アプリが起動するまで間に合わない。
僕は、後転でグルグル回りながら、次の弾丸をかわした。
だが、もう逃げ場はない。
壁際に追いやられた。
「スバシッコイヤツダ」
しゃべり方、完全いっちゃってるでしょ……
だけど、もうアプリは起動した。
僕は、ポケ〇ン図鑑からスリーパーというモンスターを呼び出し、それをおばさんに見せた。
おばさんは、ほぼ全てのポケ〇ンを網羅している。
このモンスターは、バクをモチーフにしたモンスターで、手にタクトを持っている。
「おばさん、よく見るんだ」
画面を相手に向ける。
スリーパーがタクトを振る。
すると、おばさんの首がカクン、と落ちた。
成功だ。
相手が催眠にかかっているのだとしたら、更に催眠を上書きしてしまえばいい。
「ぐう、ぐう……」
「立ちながら眠ってるし……」
おばさんの手からリボルバーをむしり取ると、外へと急いだ。
「はあっ、はあっ……」
冗談じゃないって……
絶対、生きててくれよ。
「リザ!」
僕が叫ぶと、背後から、わっ、という声がした。
「うわあああああああああああっ」
「びっくりした?」
ふ、ふざけんな!
でも、リザが生きてて、僕は安心して腰が抜けた。