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ブルーベリー・ストーリー  作者: oga
ロキ編
30/35

コーヒーの味

 扉から出て来たのは、白髪の初老の男性。

この人が、ロキか?


「なんだ、トオルか。 久しいな」


 ロキさんは片手に小説を持っており、読書中だったらしい。

メガネをかけていて、インテリっぽいの雰囲気もあるし、この人が元チンピラだったなんてちょっと意外だけど……

部屋の中に通される。

中はこじんまりといしているが、小説が山のように積まれている。


「汚くてすまないな。 で、何の用があってここに?」


 ロキさんの入れてくれたコーヒーを飲みながら、話をする。


「僕、ガーゴイルを一掃するために、ロキさんに会いに来たんです。 この槍の南京錠を解くのに、多分ロキさんの協力が必要で……」


「……そういうことか」


 今の説明で納得してもらえるとは、少し意外だった。

ロキさんは、窓の方へと向かい、遠くを見つめた。


「私には、特殊な力がある。 「素手無双」。 ラノベでいう、チートスキルというやつだ。 恐らくは、この世界を救うために、授けられたものなのだろう」


 突然、ロキさんは自分のことと、この世界のことを話し始めた。

ロキさんは、16年前にこの世界に連れてこられたらしい。

その際、使い道の不明なチートスキルってヤツを授かったとのことだ。


「最初、私はこのスキルが何で授けられたのか、さっぱり分からなかった。 だが、しばらくして、この街にガーゴイルが蔓延した。 そして、死神の所有していた催眠の鎌を奪われ、ガーゴイルはその鎌を使って、人間に催眠をかけた。 自分たちはガーゴイルだ、と。 私は、その時理解した。 この力は、ガーゴイルを一掃するために与えられた力なのだと」


 ところが、その時はヒカリさんって奥さんと生活を始めたばかりで、正直そっちまで手が回らなかった、とのことだ。


「ヒカリとの生活に夢中になっていた。 その頃は貧しくて、テレビも家になかったし、ラジオのニュースで街がおかしなことになっているというのは気付いていたんだが……」


 そこからは、ずっとヒカルさんとのノロケ話。

いい加減にしろ。

ガーゴイルらは、テレビを経由して、鎌で人間らに催眠をかけていたらしいけど、それがアダになったって訳だ。

でも、ロキさんがそんな調子だったから、催眠にかかろうがかかるまいが、関係なかったけど。


「そんな訳で、私は救世主にふさわしくない」


「……確かに、お前はヒーロー失格だわ。 つか、ヒカルさんって、どこ行ったんだよ?」


 腕を組んで話を聞いていたトオルさんが、質問した。


「子供ができなくてな。 数年前に他に男を作って出ていったよ」


 ……ロキさんの人生は、入れてくれたこのコーヒーみたく、ほろ苦だった。

 


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