ピノキオ
大通りを走る。
道行く人が、振り返る。
(くそっ、どこに行けば……)
信号を無視して、車道を横断しようとした、その時。
目の前に自転車が迫り、避けきれずに衝突。
ぐしゃり、という音と共に、地面に転がった。
「くっ……」
しかし、相手を気にしている場合じゃない。
槍を抱えて走り出すと、後ろから叫び声。
「止まれっ、逃げたら撃つ!」
振り返ると、数メーター先にパトカー。
車から降りて、警官が銃を構えている。
とにかく、走って射程の外に出てしまおう。
そう思って足を早めると、銃声がした。
飛んできた弾は、槍に巻かれた鎖に当たって、どこかに弾ける。
(あっぶね!)
ロキの鎖が無かったら、命中してたかも知れない。
そう思うと肝が冷えた。
路地裏に逃げ込むと、すぐ脇にホットドッグのカート。
一瞬、甘い香りがした。
「ホットドックなのに、甘い?」
すると、猛烈な眠気。
体が動かない。
足がもつれて、地面に頭からダイブ。
「目一杯、吸い込んだな」
カートでホットドックを売っていた男が、そう言った。
赤い髪を逆立てて、黒いコートを羽織り、手には鎌。
中二病の兄ちゃんじゃない。
続け様に、もう一人、黒髪短髪の男が影から現れた。
手にした武器は、こちらも鎌。
それを、斬りつけてくる。
鎌は枯れ葉を纏っている。
(ヤバい……)
危険を感じ、槍を前に構えてガードしようとするも、自由がきかない。
やられる、そう覚悟を決めた時、今度は横から蹴りが割っている。
蹴りが鎌の柄に当たり、僕のすぐ脇の地面をえぐる。
破片が飛び散る。
「トールさん!」
「オラ、走れっ」
トールさんにビンタされ、目が覚めると、服を引っ掴まれて引きずられる。
「逃がさねーよ!」
赤髪が、甘い香りを放つ鎌を振る。
しかし、射程外だ。
匂いは届いて来ない。
僕は走りながら、ざまあ、と中指を立てた。
すると、短髪が鎌を振る。
突風が巻き起こる。
(しまった……)
微かに、甘い香りがする。
鎌のコンビネーション。
再度、体の自由がきかなくなる。
「あれをやれっ!」
トールさんが叫ぶ。
あれって、何だ?
……まさか、アレか!?
僕は、ここでアレをやる意味なんか考えず、槍を顔に近づけて、吠えた。
「ピノキオ!」




