逃走
僕はなぜか今、ステージに立っている。
珊瑚礁とワカメがいて、僕はアンコウとして舞台の上をウロウロしている。
「オイ、アンコウ、住む場所は見つかったか?」
ワカメが話しかけてきた。
台本は無いため、はあ、と返事をする。
「オイオイ、アンコウ! 済むならウチに住めや!」
珊瑚礁が割って入ってくる。
僕は家を探している、という設定らしい。
「ふざけんな! ウチなら安全対策はバッチリだし、何より地震があっても簡単には崩れねえ!」
「僕、ハンモックがいいなー」
「何言ってやがる珊瑚礁。 そんな築何年か分からねー家じゃ、地震ですぐに崩壊するわ! ウチなら壊れる心配もねーし、何より腹が減ったら食える!」
「ねーねー、僕ハンモックがいー」
「馬鹿野郎ワカメ、食ったら無くなっちまうじゃねーか!」
あれ、僕の存在意義って……
舞台から降りて、裏へと戻る。
「お疲れーい! で、どうだった?」
トオルが話しかけてきた。
「うーん…… どうだろ。 意外と楽しかったかな?」
「……やっぱりか。 決めたぜ。 俺は、おめぇとコンビを組むことにする」
「へ?」
「俺には元々ミチキって相方がいて、ダンスを極める為に世界を旅して回ってたんだ。 でも途中、ミチキが寿命で死んじまってよ。 ほにゃららほにゃらら、であるからして……」
聞いてもいない話をペラペラしゃべるトオル。
隙を見て帰らないとなー、と思っていると、テレビからとある報道が耳に入ってきた。
突然、画面が切り替わり、ニュースキャスターの女性が、原稿を読み上げる。
「速報です。 先ほど、サンセットフィールドの車道で、警察官2名が負傷。 内一名は死亡した模様。 犯人は若いカップルで、保護された捜査官の話では、一人は槍を持った10代の男性とのことです」
「みんな、ちょっと…… これってまさか」
タコのお姉さんがこちらを見やる。
その場の視線が、一気に僕に集まる。
あの警察の片方が生きていたなんて……
「お前……」
「く、来るなあっ!」
僕は、パニックになって槍を所構わず、振り回した。
「があっ」
切っ先が、刺さる。
魚たちを刻む。
血が飛び散る。
「ひ、ヒィッ」
「はあっ、はあっ……」
場は騒然。
僕は槍を構えて後ずさり、扉を乱暴に開け、逃げ出した。
「おまっ、待ちやがれっ」
背後から、トオルが追ってくる。
会場に紛れ込むと、かん高い悲鳴。
会場内にもテレビがある為、さっきの報道で僕のことがバレたに違いない。
(どこに隠れればいい!?)
外に飛び出し、当てもなく走り出した。




