楽屋裏
パキン、という音と共に、南京錠が外れる。
鎖の束が、地面に落ちた。
「あ」
「さあ、今度はお前の芸を見せてみな!」
……鎖、外れちゃったし。
別に、無理矢理披露する必要性も無くなっちゃったんだけど……
「見せてあげたら? トオルちゃん、一人だけ滑ったのがイヤなのよ」
タコのコスプレをした艶っぽいお姉さんが、タバコを薫らせながらそういった。
「……分かったよ」
仕方なく、僕は槍を鼻に持っていき、こう言った。
「ピノキオ」
「……ぶふっ」
トールが吹き出す。
腕を口に押しつけ、笑いを堪えているが、背中がヒクヒクしている。
「あなた、結構シュールなネタやるのね。 いいじゃない」
あれ、ちょっとウケた?
「マジか、おめぇ…… ちょっとおもしれーじゃねーか」
周りに人だかりができる。
「槍を使ったネタやるんだ、珍しいね」
みんなから、何故か興味を持たれたらしい。
そんな中、ワカメと珊瑚礁がステージから戻ってきた。
「クソッ、1ミリもウケねぇ!」
「やっぱ解散すっか。 ワカメも珊瑚礁も華がねぇ。 真ん中に主役を据えねえことには…… あん? 誰だ、そりゃ」
「新入りよ。 えーと、君、何だっけ?」
えっ、新入りじゃないんだけど!
僕がたじろいでいると、トオルが肩を組んだ。
「こいつは期待の星よ! 瞬発的な笑いならおめぇらよりずっと上だ。 えーと、槍イカだっけか?」
「提灯鮟鱇です」
って、何言ってるんだ、僕。
「マジでか…… なあ、お前、俺らの仲間に入らねー? ワカメと珊瑚礁じゃ、ただの風景だからよ。 この際、アンコウでも何でも、魚が必要なんだ」
「い、いやいや、無理ですよ!」
「そう言わないで、やってみたら?」
タコのお姉さんがウインクしてくる。
……や、やっちゃおっかな!




