フィッシュマン
僕は今、南国に来ている。
浮き輪に寝そべり、暖かい海の上に揺られている。
あまりの心地よさに、ずっとここにいたい気持ちに駆られ始めた、その時。
ピピピピ、ピピピピという電子音が鳴った。
「……はっ!?」
1時間が経過し、タイマーが鳴った。
ここは、ハンモックカフェ。
僕は、完全にトリップしていた。
「こんなこと、してる場合じゃなかったあああっ」
ハンモックから降りると、激しい自己嫌悪に陥る。
これが、賢者モードか。
「くっそ、ハンモックめ」
恐るべし、ハンモックカフェ。
現実に戻り、ハンモックカフェ…… じゃなくて、フィッシュマンへと向かう。
(またハンモックカフェ行ってどうすんだよ……)
僕は、ハンモックカフェを頭から振り払い、フィッシュマンのある路地を目指した。
すると突然、槍についている南京錠が、反応。
赤い色を帯び始めた。
そして、視界の先に妙なやつを発見。
ふなっ〇ーみたいな着ぐるみが、路地へと入った。
まさか、あいつがトールか?
その着ぐるみは、フィッシュマンのある路地に向かい、扉の男と何やら話をした後、中へと入った。
後を追って中に入ろうとすると、スーツの男に止められる。
「ストップ! その格好、お前は何の魚だ?」
「何のって……」
そうか、ここはフィッシュマン。
魚の衣装をしてなきゃ、入れないのか。
準備してないなら出直せ、と言われたが、僕は咄嗟に槍を頭から垂れ下がらせ、こう言った。
「ちょ、提灯アンコウです……」
「……」
槍の先端をアンコウの明かりに見立てた。
苦しいか?
「入れ」
……マジ?
僕は、ガッツポーズをした。
「っし!」
店内は薄暗く、イカとか、マグロとか、色んな魚のコスプレをした人らで賑わっている。
「お一ついかが?」
ザリガニの格好をしたウェイトレスが、ロブスターのカクテルを勧めてきた。
同族食い。
ロブスターの逆襲を受けなきゃいいけど。
異様な光景にたじろきつつ、ロブスターは遠慮した。
ターンするたび、テーブルをなぎ倒していくザリガニのウェイトレス。
……移動しにくいだろ、アレ。
すると、ステージの上に誰かが現れた。




