移動
「そういえば、連絡ってあったの?」
マリアさんに言われて、僕は気がついた。
そういえば、ずっとスマホを見てなかったな。
おばさんだったら、心配してこっちに連絡をくれるハズだ。
ちなみに、リザは携帯を持ってなくて、しょっちゅう家出しているから、両親も今更心配しないんだろう。
スマホを取り出すも、電池切れで画面は暗いままだった。
「バッテリー切れです。 どこかで買わないと……」
「いや、切れてるならいいよ。 逆に連絡して、ガーゴイルに気づかれちゃうとマズいからさ」
……確かにそうか。
おばさんには、帰るって伝えない方が良さそうだ。
「ちょっと確認なんだけど」
いきなり、リザが質問した。
「おばさんの所に行って、待ち伏せされてたとしたら、ヤバくない?」
「何だよ、今更怖じ気づいたのかよ?」
「違うわよ! 助けには行く。 ただ、そうだった場合、何も対策しなかったらすぐ捕まるって話よ」
いわゆる、飛んで火に入る夏の虫ってやつか。
メラメラと立ち上る火に特攻した所で、助かりはしない。
「対策、した方がいいのかな……」
「私の考えだと、待ち伏せはないと思うのよねぇ~…… 待ち伏せする位なら、とっくに襲われてるハズよ。 トイレに籠もってる時とかね。 つまり、ガーゴイルにとって、あなた達はそこまで優先順位は高くない。 それより、多分、カンナさんの方が、脅威なのよ」
マリアさんが言うには、おばさんは昔、グングニルを奪取するためにガーゴイルの群れと渡り合ったことがあるらしい。
その際、催眠の鎌で大立ち回りをして、相手に恐怖を植え付けた、とのことだ。
「おばさん、こっわ」
リザがぼそり、と呟く。
確かに、おばさんの周りには常にガーゴイルの監視がいる感じがする。
じゃなきゃ、催眠が切れかかってる、とか言ってすぐに駆けつけて来れないだろう。
「まあさ、話の続きは車でしましょうよ。 どうやってカンナさんを連れて行くかも考えなきゃ」
車。
このまま盗んだ車で、帰るのはマズいか?
サンクには身内がいないから、すぐに捜索願は出されないだろうが、念のため乗り捨てた方がいいかもだ。
「ちょっと言いにくいんですけど……」
事情を説明する。
マリアさんは、それなら自分の車に乗ればいい、と言った。
「槍も積み忘れないないようにね」
僕らは、マリアさんの車に乗り込み、トレーラーハウスに向かうことにした。




