表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界スローライフ  作者: koh
第一章
2/78

第二話

目を細め周りを見た。

そこはまるで色彩と音が存在しない空間に思えた。

凝視すると装飾が施された柱が並ぶ一本道の回廊だった。


イスに座っている自分の身体に違和感を感じて身体を触った。

すると胸にある筈のケーブルが無く車椅子に座っていた。


維持装置が無くなっていることで確かに自由に動き回れる身体にはなっているが、想像とは違った。


膝に標本を抱え車椅子を進めると、柱の影に人影が見えた。


人影は子供で、近寄ると向こうから寄ってきた。


「お兄ちゃんはどこから来たの?」

「なんで車椅子に座ってるの?」

「何を持ってるの?」

矢継ぎ早に質問が飛んでくる。


…独りで居るのが淋しいのかな?…


俺はそう思い、

「すごく遠い所からだよ、ちょっと話そうか?」

と声をかけた。


子供は「いいのっ?」って喜んでいる。


「君の名前は何ていうの?」

「僕の名前はTだよ、真名は教えちゃいけないって言われてるんだ。お兄ちゃんは?」


「俺の名前は侑だよ」

「Uっていうんだ、僕の次だね」

…勘違いされてるな、まぁいいか…


「他には誰か居ないの?」

「この先から泣き声が聴こえていたから誰かいると思うけど会ったことは無いよ、ずっと独りだよ。」


…ここにずっと独りで…淋しいだろうな


「お兄ちゃんが持ってるのは何?」

「石の標本だよ、俺の大切な宝物だよ」

俺は標本はTに渡した。


「見てもいいの?キレイだね、いろんな形だし色もいっぱい」

「俺の居た所にはもっとたくさんのいろんな石が有るんだよ、その中でも好きな物を標本にして持っているんだ」


「お兄ちゃんの腕の石もすごくキレイだね」

Tは目をキラキラさせて、侑の腕を見て言った。

俺は秋元さんがくれたチャクラブレスを腕にしたまま来てしまった事に気付いた。


「…大切な物を一つ持ってと書いてあったのに」

…どうしよう、戻るわけにも行かないし…

俺が黙ってしまった瞬間。


Tが急に走り出したと思ったら、転んだ。

俺は車椅子を進めて、Tを起こしてあげようと手を伸ばした。

俺はバランスを崩し、車椅子を倒してしまった。


「お兄ちゃん、大丈夫?」

Tは心配そうに俺を見ている。


俺は車椅子を倒した時に、標本を床に落としてしまった。

カバーが外れた標本は床に石をばら撒いていた。


床を這うようにして石を集めていたら、Tが手伝ってくれた。

石を全部集めたら、Tがケースを持ってきてくれた。

俺は受け取ると、無意識に座っていた。

すべてを並べ終わると、俺はもしかしてと柱に掴まり立ってみた。


「…立てる」

おぼつかないが、歩けた。

Tが後ろからついてくるなか柱何本分かを歩くと

「僕はここ迄しか行けない」

Tは淋しそうに云う。


「遊んでくれてありがと

標本を持って歩くとまた落とすかもしれないから、僕の宝物を貸してあげる」

Tは気丈に言った。


受け取るとそれは小さなカバンだった。

「いや、入らないよ」

俺は気持ちだけ受け取ろうとした。


Tがカバンを開けた。

標本は吸い込まれるようにカバンの中に消えていった。

「…インベントリ?」

それはよく読んでいたラノベの中に出てくる無限収納のようだった。


「宝物なのにいいの?」

侑は自分に不相応なカバンに戸惑う。


「遊んでくれて嬉しかったから貸してあげる」

Tは心から楽しかった。

そして、また会えることを知っていた。


「じゃ、俺もこれを貸しててあげる」

手首からチャクラブレスを外して、Tに着けてあげる。


「お兄ちゃんの大切な宝物でしょ?いいの?」

Tは目をキラキラさせてる。


「良いよ、カバンを返しに来るまで着けててね」

俺は手を振りながら先に進む。

10年振りに自分の足で。


しばらく歩くと大きな扉の前にBと名乗る子が

「扉の中でお待ちです、中へどうぞお進み下さい」


俺は扉を開いて中へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ