表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

げろげろ

 あれから、1ヶ月ぐらいかな。ぬいぐるみを買った時は、梅雨に入る6月頃だったけど、そろそろ夏休みという7月半ばのこと。事件は起きた。


私が、学校から帰り、着替えをしている時に、


「あなたを、私の僕にしてあげる。」


と、子供っぽい高めの声が聞こえた。私がキョロキョロと周りを見渡すけど、誰もいない。気のせいかななんて思っていたら、


「あんたトロいのねぇ。こっちよこっち、下だって下。」


というので、下を見ると

うさぎのぬいぐるみが、私の方に右前足?、右手?をビシッと指して立ち上がっていた。


「ふっ。驚いているわね。ぬいぐるみが動くのは怖いでしょう。声も出ないのね。私の記憶干渉を弾いたとはいっても、今は私の威圧を受けているんですから、立って居るのも辛いはずよ。威圧を止めて欲しければ、私に命乞いをして貢ぎなさい。良いわね。」


「……」


「さっさと、ハイと言ったらどう。本来ならあんたみたいなのが、私と話をすること自体光栄なことなんだから。」


と、愛らしい動きで、ぬいぐるみは背伸びをして虚勢を貼ってい(るように私には見え)た。


「すっご~い。しましまが動いた。」


という声に、


「は?」


と反応して、疑問形で首を傾げるぬいぐるみ。


「う……」


「うっ?」


「うそー。どうやって動いてんの、どういう仕組み?ARってやつかな?もしかして里香が何かしたのかな?」


すごい。凄いと私が、しましまをなで回しひっくり返してみる。しましまはそれに反応してよりジタバタし始めた。


「うぎゃ、いたい。ギャー。くすぐったい。きゃははは。うぶぶ。お腹を押さえるな。」


「うっぷぅ。ぐるじい。あなだ、うっ。」


と、しましまの表情が苦しそうに変わったところで、私はその表情の変化に気が付き、しましまを床に降ろした。しましまは、床の絨緞に手を着いて気持ち口を膨らませていた。


「ちょっとそこで吐かないでー。」


「ウプッ。ゲロゲロゲロ……」


間に合わなかった。酸っぱい匂いが部屋に充満している。ぬいぐるみが嘔吐する瞬間を初めて見た私は、オロオロしてしまった。


*******************


しましまは、両親からプレゼントで貰ったウサギのぬいぐるみ。

そんな、しましまがベッドの縁に立って、何故か私が怒られている。床に正座して、ちょっと不思議だけどなんかファンシーで楽しい。必死に威勢を張るしましまの背伸びした姿が愛らしい。


「復活した途端、圧死するところだったじゃないのよ。ちょっと聞いてるの?」


「だから、さっきから、ごめんねって言ってるでしょ。しましま。許してよ。しましま。長い付き合いじゃんしましま。」


既に、動き出してから30分。ゲロゲロの掃除を先に済ませている間に、立ち直ったしましまに、かれこれ10分説教されている。立ち上がったり手を上げようとするけど、強い力に押さえつけられて、立ち上がることが出来ない。何故か立ち上がろうとすると、上から肩や腕を押さえられているような感じなんだよね。もうちょっとで抜け出せそうなんだけどな。


「あんた、やっぱり馬鹿にしてるでしょう。私はしましまじゃないと何度言ったら分かるのよ。」


と、ぬいぐるみが私の頬にドロップキックを仕掛けてきた。結構な勢いですけど、そんなに痛くない。ポフッって感じ。だって、ぬいぐるみだもの。むしろちょっと柔らかくて和む。


「いや、だって昔からしましまって呼んでたし、それにしましまが言っていた名前、ええっと、シャケ・マシマロ・シュークリームなんちゃらっていう美味しそうな名前……」


「リッヒシュヒュッケ・マニュシュクール・シュクマリュウス・イライジュアヴェィル・ハリュドリュス・バヒュイット・シュシュダルド・ヴィラヴィン・ヴェルギス・クットーロジャジャリ・コロスベリヌス!」


とカリカリしたしましまが、地団駄を踏んで長い呪文のような名前を叫んでいる。


「うん、それだよ。それだけど、姿はしましまにしか見えないし、長いし、ほら、作者さんも読者さんも、視聴者さんもみんなそう思っているよ。ってことで、しましまで良いじゃん。頭文字しましまっぽいし、決定。テッテレー。ぱちぱちぱち。」


と言ってみる。あっ、私のお手々はまだ膝の上で固まってます。擬音(オノマトペ)はポスッ、ポスッって感じだ。


「ぱちぱちぱちじゃないわよ。そもそも頭文字しましまの【し】の字もないじゃないのよ。」


しましまは、更に、私のお腹に重めのグーパンを仕掛けながら、ムキーと発狂しそうな勢いで興奮している。


「いや、しゃけのSでマシマロのMに……。」「ちょっと、だから私の名前は……りっ……ちょっとなんで動けるのよ。ぎゃー。」「いや、なんか頑張ったら動けた。」


私は、しましまを抱きかかえて、頬ずりして見る。やっぱ動くと可愛いよね。ちょっとツンだけど。そのうちデレるかな?


しましまは、上質なぬいぐるみで柔らかい。だから、子供の頃からタンスの上に置いて、時々触って楽しんでいた。モフモフすると気持ちが良い。

気が付いたら、再びしましまはゲロゲロ状態に、今回はさっき掃除に使ったバケツでキャッチした。ぬいぐるみで食べてないはずなのに、これはきっと世界の七不思議の一つだよ。

倉田由香:「私の名前は倉田由香。こっちの動くぬいぐるみは、しましま。」


しましま:「ちょっと違うわよ。私は、誇り高き闇の魔法使い、リッヒシュヒュッケ・マニュシュ……以下略……。」


由香:「昔は私の思い通りに動く良い子だったのに。グスン。」


しましま:「泣きたいのはこっちよ。体はウサギのぬいぐるみだし、変な娘に体中…○○されるし、おまけに話は通じないし、私の魔法あんまり効かないし……なんかほんとに涙出てきた。グス。」


由香:「大丈夫、しましま次回は良いことあるさ。」


しましま:「しかも、私しましまってことになってるし……」


由香:「うん、しましまはこれからもしましまだよ。というわけで、さ~て次回のしましまは」


「しましま家を買う!」


しましま:「唐突過ぎ!買わないわよ。」


由香:「こんな一連の流れぐらいどうでも良い話らしいけど、書いちゃったから公開するんだってさ。そろそろ時間だね。次回をお楽しみに、ばいば~い。」


しましま:「……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ