本音
「なるほどね。その技でみんな貫いてきたわけだ。その歳で恐ろしい練度だ。」
「軽くいなしておいてよく言う。」
うつ伏せの状態で、右の腕を背中に回され、手首の辺りを膝で踏まれている。
左手は左手で、足は水の魔術だろう。雪が氷になっていて固定されていた。
「会話したかったからね、手っ取り早く済ましたさ。頭は冷えたかい?」
頭どころか全身冷たい。
何せ雪の上でうつ伏せなのだ。
反撃を考えたが上を取られているし、いつでも対応出来るぞと言わんばかりに、空いている右手で首をトントンと警告してくる。
とりあえず、反撃のシミュレーションはしつつ返事することにした。
「誰かさんのおかげでな、で?殺人鬼の心境でも聞きたいのか?」
刺々しく言ったのだが、さらりと流して返してくる。
「そんなに毒づかなくてもいい。君をすぐにどうこうするつもりはないからね。むしろ君を助ける可能性だってある。」
この手の奴等は知っている。
自分は君の見方だ。君を信頼している。困っているなら助ける。
そう言って歩み寄ってきて、 ほしいものだけかっさらって、あっさり裏切る奴等だ。
ただの馬鹿の可能性もあるが…
まともに取り合う必要はないと感じた。
「それで、君の名前は?」
「ジョニー。」
「そうかジョニー、いい名前だね。それで、君の名前は?」
「「・・・」」
なんだこいつ。
「何故嘘だと分かる。」
「さっきまで散々逃げたり、襲ってきたのに、あっさり躊躇いなく答えるな、と思ってね。かまをかけてみたのさ。」
「はぁ、…ダート。」
してやられた。
仕方なくため息をつき答えた。
「そうかそうか、じゃあダート。さっきの孤児院や首都の孤児院をやったのは君だね?どうしてそんなことを?」
「殺人が楽しいんだ。特に子供は直情的だ。あの悲鳴が心地いいのさ。」
「ふむ、殺人が楽しいか…。それで、本音は?」
「「・・・」」
なんだこいつ。
また、かまかけの可能性もあり黙っているとバルムの方から答えてきた。
「殺人が楽しいっていうなら、もっとスパンが短くてもいいと思わないか?一月ごとになんて一定にする必要はないはずだし、次の行動が読まれやすくなる。それに目立つ首都で行わなくてもいいはずだ。」
ちゃんと考えていたようだ。
「話が進まないな。こうしよう俺は今から君を助ける本音を話そう。だからダートも本当のことを話してくれないかい?」
「聞いてから判断する。」
「じゃあ話そう。俺にはダート、君と同い年くらいの息子がいる。だがその子の母親はいない、たまに寂しそうな表情をするのがすごく印象的でね、もし俺がいなかったら君のようになっていたんじゃないかと考えてしまった。君は両親が近くにいないから孤児院にいったんじゃないかと考えてしまった。なら事情によっては助けようと思ったのさ。」
こいつはとんだ馬鹿野郎のお人好しだとダートは思ったのだった。