強者
「えっと、とりあえず自己紹介しようか!俺の名前はバルム。バルム・グェーター、今は護衛巡回隊長の任についているんだが…君の名前は?」
口では優しげに喋りかけてきてはいるが、目はじろじろと観察してくる。
負けじと俺も観察しているが…
ダートの格好はだぼだぼのズボンに、上はポンチョのようなものを羽織っている。髪は酷く乱れ、髪は長く、ほとんど口元しか見えない。
そして目を引くのが、髪や頬についた黒ずんだ赤。
経験からくる、互いに感じた強者特有の気配。
((強い!))
バルムには、「子供の見た目に反して」とつくのだが。
さて、どうしたものか。
会話をしたところで、証拠という証拠が顔についてしまっている。
牢獄にでも入れられるのは、目にみえている。
こんなことなら服装を整えた時に、その辺の服で拭えばよかったか。
今さらだなと、新たな選択肢を考える。
いっそ被害者面でもしてみようか…?
殺人鬼に、友達を目の前で殺され、近くにいた俺に返り血がつく。
生き残りが俺だけになり、ついにその時がというときに玄関からノックの音がする。
犯人は逃げたし、……駄目だ。
どうしてそこから俺も逃げるんだ。
確かにあのとき護衛巡回のものだと名乗っていた。
普通に考えたら助けを求めるものだろう。
やめだやめだ。
結局これが一番単純で、俺らしい。
口をニィっとし、バルムに向かって走り出しす。
あの男は強い。真っ直ぐ向かっていったのではやられるだろう。
懐から牛刀を出し、刃が衣服に包まれたまま投擲した。
抜き身よりも、よく分からない包まれた物。の方が注意をひくはずと判断したからだ。
対するバルムの反応は早かった。
目の前の少年の口が歪んだことに警戒し、飛んできた不審物に風の魔術で近くの木に叩きつける。
「風よ!はっ!」
軽く構え、向かってくる少年を迎え撃つ。
ダートは魔力を纏い、身体能力を強化。
右手は特に魔力の密度をあげ、硬く、鋭く纏う。
もう少しで射程圏内というところで、急加速し、左足を踏み込み、右手を指を揃え突きだす。
貫手である。
 ̄ ̄ ̄ ̄
一瞬だった。
これまで数々の戦闘によって磨きあげた技。
鎧も骨も肉も一瞬で貫く、一点集中の必殺。
投擲による陽動、急加速によるフェイントもいれた。踏み込むタイミングも申し分ない。
だがバルムと名乗った男は、易々と迎撃してみせた。
俺は負けたのだ…




