物色
ひとまず、人目の無いところに移動しよう。
季節は冬、外は寒いはずだ。
そう思い、クローゼットを片っ端から開けていく。
重要なのは実用性だ。温かく、丈夫なもの、あまり目立つ色はやめておいた方がいい。
次は食料。調理場付近にある、横開きの扉を開く。
ここは孤児院、子供とはいえそれなりの人数だ。つまり、食料庫もそれなりに大きくなる。
大人4、5人は入れるであろう空間を、見渡した。
整理された棚が3つあり、アレルゲンごとに整理されている。
手頃に食べれるものは、口に放り込み、日持ちするものは、その辺で見つけてきた革袋に、中身がごちゃごちゃするのも構わず入れていく。
「水は魔術でいいか。」
そう。この世界には魔術というものがある。
自分の中にある魔力を消費して、現象を起こす術だ。
基本的には自然界の現象になぞらえて、火、水、土、風、という属性に分けられているが、魔術の用途は多種多様である。
傷の治りを促進させたり、逆に健康な状態に異常をきたすこともできる。
最後に装備品。
とりあえず調理場にあった牛刀を拝借。
適当な衣類で包み、懐にしまいこむ。
路銀がほいしところだなと思い至ったところで、玄関口の扉をノックする音が聞こえきた。
「すいません、護衛巡回中のものですがー?」
「ッチ!」
咄嗟に荷物を手に、裏口から逃亡。
しようとしたのだが、裏口には靴がなかったのだ。
仕方なく素足で駆け出す。
裏口から出た所は、林になっていて、葉の落ちている木など隠れも出来ず邪魔でしかない。
「はぁはぁ」
数分走り続け一息いれた。そして逃亡を諦める。
今、自分は護衛巡回とやらをしていた連中に追われていたのだが、尋常でなく速い。
途中、魔術による妨害も試みてみたが、追ってきた二人のうち、一人は脱落させることができた。だが、残った一人が問題だった。
魔術は軽く払いのけ、着実に距離を詰めてくるのだ。
足を止めて数秒、ザシュっと雪を踏む音が聞こえ振り返る。
「いやー、君足速いねぇ。俺も足には自信があるんだけど、将来は抜かれちゃいそうだよ。」
そして、義父となるバルムと出会うのだった。




