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血潮を以て道と成す  作者: あらにゃず
過去容認編
1/4

開幕

季節は冬、雪が降っている。

履いた靴が、ちょうど埋まってしまうほど、雪が積もり歩行の邪魔をしていた。

そんな事は意にもとめず、一人の男が、ぼそっと独り言のように呟く。


「間に合わなかったか。」


服装は上下黒の、いわゆる軍服を身にまとっていた。歳は20代後半といったところか。

その男のそばにはぽつんと建った建物が一軒、その周りを数十人の人達が、何かしら調査を行っていた。

建物の中も同じように、調査しているのだろう。

その中の一人、自分の方へ向かってくる雪を踏みつける音が聞こえ、体の向きを音のする方へ向ける。

こちらに歩いてきた男は近くで足を止め、姿勢をビシッと正し、口を開く。


「報告!孤児院、内部及びその周辺外部、調査終了しました!」


「聞こう。」


「孤児院内部に死者、大人4名、内2名が派遣されてきた護衛です。子供13名、皆これまでと同様、心臓を貫かれて絶命しています。」


これまでこれまで(・・・・)という言葉から、これが一度目ではない、ということが分かる。

報告に続けて男は言う。


「バルム隊長は、何か掴めましたか?」


「いいや、副隊長と足跡でも残っていればと探してみてはいるが、見つからんな。」


「そうですか。」


様子から見るに、あまり期待の持てる答えが、返ってこない事は分かっていたのか、短く返事を返してくる。バルムはこの事件について考察してみる。


(事の発端は2ヶ月ほど前、永世中立国メーシーの首都、メシネアにある孤児院だ。そこで経営していた大人4名、そこで暮らしていた子供15名が死亡しているのが見つかった。2件目が1ヶ月ほど前、首都郊外にある孤児院。どちらも人の目が多くあるにも関わらず、犯人が捕まらないため、各孤児院に護衛と巡回をつけ、定時連絡をするようにしたが、3件目が起こった。前2つと遠く離れた場所に建っており、細々とした村だ。死因は全員同じ、心臓を一突き、おそらく、同一犯だろう。何故孤児院ばかり狙う?周期が一定なのはなぜだ?今現在戦争をしているセリス教国やギフ帝国ではなく、なぜ中立国家を狙う?犯人の意図はなんだ?)


結局情報が少なすぎると判断し、犯人に繋がる足掛かりを掴む方に専念しようとした。その時だった。

「隊長~!」と呼ぶ声が聞こえてくる。

良く耳に届く、高い女性の声。

その声から、自分と足跡の捜索を行っていた副隊長だと分かる。

相当焦って走ってきたのか、途中、雪に足を取られて、派手に転んでいたが、なんとかたどり着く。


「あ、あ、あ、あし!、あし!見つけました!」


「足を見つけたのか?今回はバラされた遺体もあったのか。」


「あーしーあーとー!察してくださいよ!」


「お前が無駄に主語を短くするからだ。」


副隊長は確かにそうだと思い、反論できずに「う~」と唸り、今度は変な返し方をされないように、丁寧に報告する。


「孤児院裏口から、まだ新しいと思われる、子供の足跡を見つけました。もしかしたら生存者かもしれません!」


最初からそう言えばいいのに、とは口には出さず、指示をだす。


「よし、他の隊員にも連絡しろ。俺と副隊長は足跡を追う。」


生存者ならば、保護しなければならない。それに犯人を目撃しているかもしれない。二人は足跡を追って駆け出すのだった。

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