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第6話 王もまた俺の嫁から目が離せない

「さて、こういう真面目な話は終わりにして、昼飯を食べよう」


 俺たちは昼食を食べる。

 たまに美月と目が合うのだが、美月が微笑むので頬の緩みが治まらない。

 やっぱり美月の笑顔は最高だ。家で何度も美月の笑顔などは見てきたが、関係が変わったためか、より一層に可愛く見えた。

 むう、本当は美月を抱きしめてやりたいのだが、ここに他の人間がいるせいでそれができない。ここで美月に危険なことに晒さないためにも我慢しなければ。

 やはりここに留まって国の言いなりになるという選択肢は絶対にないな。

 美月の可愛さ、または美しさによって、美月が目当ての男どもはたくさんいる。

 だが、それの対応だが、旅の道中のほうがしやすい。

 それは城だと人の目があるからだ。証拠の隠滅もしにくい。

 それに城は危険だ。城では毎日美月と会うことができるので、襲うのも容易である。毎日を一緒に過ごすというのは美月の様々の情報を手に入れることができる。ゆえに襲うのが容易なのだ。

 もちろんのこと美月が襲われるなんてことはない。美月だって前の世界でも結構な戦闘力を持つ妖怪の一人だ。そういう輩に襲われようともあっさりと撃退するだろう。

 で、旅のほうがいいのはまだある。それはその輩を殺すことができるからだ。証拠の隠滅もしやすい。

 俺は美月を襲う者には容赦しない。それが国の王でもだ。

 でもいくら王でも容赦しないとはいえ、追われるのはめんどくさい。俺が望むのは美月とのゆっくりとした旅なのだからな。

 そういうことでさらにこの城から抜け出したいと思った。

 昼食を食べ終わり、ある程度心に余裕にできた生徒たちがしゃべっていると王女が入ってきた。


「さて、皆様。今日は説明をすると言いましたが、その前にやることがございます。それはこの国の王である、父に会うということです」


 現実だから会うことはないと思ったが、そんなことはないようだ。

 そういうことで俺たちはちょっと高級な服に着替える。高級『そうな』ではない。高級である。

 はあ……俺としてはこういう無駄に高く派手な服よりももっと安いシンプルなものがいいのだがな。

 ちなみに着替えは何とメイドさんたちにやってもらった。恥ずかしい思いをするかと思ったが、なぜか俺の担当していたメイドさんのほうが俺を見て顔を赤くしたりして恥ずかしいよりも気まずい思いをした。

 いや、すまんが妻がいるからそんな目で見られても……。


「おい、月山。お前、結構似合っているな」


 同じく着替え終わった志摩が言う。


「そうか?」

「ああ。ほら、お前って身長180あるだろう。それに鬼だから筋肉もりもりだ。それに顔つきも大人! って感じだ。それに加えこの服だから将軍みたいだ」

「なら、身長くらいの長さの剣でも持つか?」

「あはは! いいな、それ! きっとその状態で歩いても騙される人がいると思うぜ!」


 とまあ、俺たちは遊んでいた。

 他のやつら? なんだろうか、あまり似合わなかった。服に着られているってやつかな? 神代は違う。あいつは似合っている。

 やはり主人公だからな。似合うのだろう。

 俺は鏡に映る自分の姿を見て、確かに将軍だなと感じた。

 周りの同級生たちも俺の姿を見て、近づきにくそうにしていた。

 ふむ、これが将軍パワーか。これで大剣でも背負えばまさに歴戦の猛者になるな。

 着替え終わった俺たちは同じく着替え終わった女子たちと合流した。女子たちはドレス姿だった。

 みんな可愛いのだが、やはり俺の目は美月に留まる。他の男子もほとんど美月に目が行っている。

 今の美月は同級生に囲まれているので無表情だ。

 だが、その無表情が美月の美しさを引き立てている。まあ、表情を出せば、可愛さが引き立つのだが。

 そうやってボーっと見ていると美月のほうもすぐに俺に気づく。美月は俺を見て、顔を赤くしたあと、にこりと微笑んだ。

 くっ! 二人きりならば抱きしめて、キスをしていたのに! やはり周りが邪魔だ。何度も言おう。早く旅に出たい。


「おい、お前の嫁さん、めっちゃきれいじゃないか」

「ああ、自慢の嫁だな」

「そういえば一緒に暮らしていたんだったな。そう言ってもあまり違和感がないな」

「嫁にしてからはまだ暮らしてないがな」


 城で暮らしていたら美月との夫婦生活はとても難しい。きっと料理もこの城の料理人が作ったものしか食べられなくて、美月の手料理を食べるときなんてとても少ないだろう。それに前の世界のときの生活のような美月が家事をして、それを俺は眺めたり手伝ったりするなんてこともできないだろう。

 うん、やっぱり城にいていいことはない。旅だ。旅に出たほうがいい。そして、良い場所を見つけたらそこに住もう。そこで俺たちの子と暮らすのだ。

 よし! 大まかな目標がさらに決まったな。

 だが、そうか。子どもか。妖怪は子どもができにくいが、美月と夫婦になったし、今のうちから父親になる覚悟が必要だな。

 さて、そんな俺たちは王女に先導され、この場から移動する。

 数分歩いて両開きのとても大きな扉の前に来た。高さは少なくとも四メートルを越えている。しかも、扉には職人の手による装飾が施されているようだ。扉というのに二枚のうち一枚でも相当な金額になりそうだ。


「こちらが謁見の間です。皆様方は異世界の勇者様ですので、そこまでかしこまる必要はありません。ただ一応形式的な形はやってもらいます。先ほど説明したようにしてもらえれば問題はありません」


 そう言って、王女は門番に扉を開かせた。

 謁見の間はやはり豪華だ。

 謁見の間にはこの世界の貴族であろう者が両脇に並んでいた。その一番奥にはこの国であろう王の姿が。

 まさか俺がこのような体験をするとはな。


「私はエルライルド王国国王である、レオン・フィル・エルライルドだ」


 年齢は四十か。これは王としては若いほうなのだろうか?


「お主たちを勝手に召喚したことは謝ろう。申し訳なかった。日々の生活はもちろんのこと、我らがサポートしよう。だからどうか魔王を倒して欲しい」

「もちろんです。私たちが魔王を倒しましょう!」


 王の言葉に答えたのはやっぱり神代だった。


「そのサポートをよろしくお願いします。我々は精一杯やらせてもらいます」


 ただ魔王を倒すだけではなく、サポートをと強調するとは中々だな。

 ただ気になるのは王の視線だな。俺たちの前ということでなのか、いい王様とやらをやっているようだが、その意識はあきらかに美月のほうへ向いているように思える。まあ、確かに美月はこの中でも一番って言ってもいいほどだからな。

 まさかと思うが、美月を脅して夜の相手をさせようなんて考えていないだろうな? 一応、美月は魔法が使えないってことになっているから後は単純な力の差となる。王はこの世界の人間だし、魔法くらいは普通に使えるだろう。俺たち妖怪のように身体能力を強化することができるならば、魔力を上手く使えないものはあっさりと組み敷かれるはずだ。

 美月に何かしたって分かったらこの国を破壊するぞ。ちなみに本気だ。

 で、王との謁見が終わると我々は城を案内してもらった。その際、女子は動きやすい服へと着替えさせられた。

 ちっ、美月はあの服が似合っていたんだがな。多分、明日からにでも訓練が始まるから、次見られるのは当分先だな。

 案内されてもらって、俺の目的の場所が見つかった。それは図書館である。司書に許可をもらえば読むことは可能のようだ。

 自由時間は全てこれに回そうか。

 それからそのまま時間が過ぎて、また今日が終わる。

 俺は自室で美月を待っていた。

 と、窓を叩く音が響く。

 俺は窓に近づいて外を見る。そこには一匹の黒猫が窓を叩いていた。もちろんのことこの黒猫の正体は分かっている。


「美月か」

「にゃあ」


 俺が黒猫の名前を言うとそうだと主張するように鳴いた。

 俺は窓を開けて黒猫の美月を部屋へ入れた。

 美月は猫の妖怪である。人の姿から猫の姿になることは息をするようにできて当たり前のことなのだ。

 その猫、美月はベッドの上へ行くと光に包まれた。光が治まるとそこには何も着ていない、生まれたままの姿の美月がいた。


「おい、服はどうした?」

「猫のときは服は邪魔でしょ? 着るわけがない」


 妖怪の変化は肉体の変化なので、小さくなれば服は地面に落ちてしまう。服ごと一緒というのは無理だ。

 なので、このようになって当然だ。


「別にこの部屋には夜弛しかいない。だから別に問題ない」

「そうだがな。あまりそうやって裸になられるとこっちが持たない」

「襲っても良いよ?」

「今日は却下だ。昨日が初めてだっただろうが」

「妖怪の再生能力は高い。もう痛くはない」

「だとしてもだ。とにかく今日はしないぞ。それに傷は治せても、体力はかなり消耗しているだろう。今日はゆっくりと休め」

「……ん、休む。確かに全快じゃない。ありがとう」


 嫁の体のことを考えることは当たり前のことだ。美月には元気でいてほしいからな。

 とりあえず美月に服を着せるか。

 俺はこの部屋にある、タンスから服を取り出す。

 この部屋のものは自由に使って良いと言われているので、遠慮なく使わせてもらう。中身はもちろんその部屋を使っている人物に合わせられているので、俺よりも背の低い美月には大きすぎるが。

 それを美月に渡した。

 美月はそれを広げ、自分に合わせる。明らかに大きすぎると着らずとも分かる。合わせるとそれがなおさら目立つ。


「夜弛って裸Yシャツが好きなの?」

「好きか嫌いかと言われれば好きだが、だからといって渡したわけじゃない。この部屋は俺に合わせているからそれしかないんだ」


 裸Yシャツは良いものだと思ってはいるが、襲わないって言った直後に自分の理性を切らせるような行動なんてしない。これはそれ以外に服がなかったからこその行動だ。決して着せたかったわけではない。


「ほら、着ろ」

「着せて」

「……自分でやれ」


 危ない。ついよからぬことを考えて間が空いてしまった。


「触れても良いよ? どうせ寝るときくっつく」

「確かにくっつくが、触れる場所が違うだろう。寝るときは腕や足だが、着替えとなると胸や腹に触れるだろうが」


 正直そういう部分に触れると理性が揺れるのだ。男っていうのは異性との触れ合いに興奮する生き物だからな。それは俺たちの関係が変わっても変わらない部分だ。

 そんな俺と美月は一緒に寝るのだが、今思えば理性は大丈夫なのだろうか? いくら広いベッドとはいえ、美月が近づいて寝るというのはもちろんのことだ。美月もくっつくと言っているしな。

 正直、俺は判断を誤ったかもしれん。夫婦だから襲ってもいいのだが、先ほども言ったように俺は今日は休めと言ったのだ。襲ってたまるか!


「それでも、着せて。お願い」


 美月は俺の服を掴んで、可愛く言う。

 これが美月の策略と分かっているのだが、残念なことに男というのは分かっていながらも女の子の誘いに乗ってしまうのだ。

 うん、俺の負けだ。可愛い美月にそうされたら何も言えない。

 俺は結局美月に渡したシャツを手に取り、美月と向き合うのだった。

 だが、俺は目を合わせる事ができなかった。


「何で目を逸らすの?」

「お前が裸だからだ」


 美月が裸なのでこうして至近距離で向き合うと目を合わせづらいのだ。


「私は夜弛のだよ? 別にどんどん見てもいい。見たいところがあれば言って。私の全てを見せるから」


 美月に羞恥心がないわけではない。実際、美月の頬は興奮ではなく、羞恥で顔が赤い。それでもそう言うのは俺に喜んでもらいたいというのが最優先だからであろう。

 やばい、うちの嫁が可愛すぎる!


「それも今度だ。ほら、着せるぞ」


 俺はシャツを広げて、美月の要望通りシャツを着させた。

 その際、思いっきり近づいたのでものすごくドキドキしたが。

 俺と美月の関係が夫婦になり、体を重ねたとしてもドキドキするものはドキドキする。


「下のは?」

「それは自分で履けよ」


 ぽいっと美月にズボンを渡す。


「夜弛、履かせて」

「おい、それはさすがにダメなんじゃないか? その、思いっきり見ることになるぞ?」

「昨日は互いに見た。今更の話」


 いや、確かにその通りだ。その通りなのだが、それでも躊躇ってしまうのだ。


「履かせてくれないなら、このままで寝る」

「おい!」

「私は別に下に履かないままでも問題ない。夜弛、選んで。履かせるか、履かせないか」


 ぐぐっ、どうやらこの勝負、俺の敗北しかないようだ。どっちを選んでも俺にしかダメージがない。どうしようもないので履かせることにした。何も履いていない美月と寝ることと履かせることのどっちがダメージが多いかと考えたら、断然何も履いていない美月と寝ることだ。

 俺は美月から俺が渡したズボンを受け取った。

 美月は勝ったと満面な笑みを浮かべる。

 うむ、やはり可愛い。この笑顔をされると俺は一生美月には勝てないな。

 俺は美月を立たせて、ズボンを履かせた。

 目? 瞑ってない。美月の言うとおり、今更だからな。ただそのときの美月は見られて、恥ずかしそうにしていた。口ではああ言っていたが、やはり相当恥ずかしかったようだ。今も顔を赤くしたまま、ベッドに横になっていた。

 俺はその隣に横になっている。

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