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第18話 Bランクパーティ

 そんなルーの拠点に来て、中へと案内される。

 まず目に入ったのは壁にかけられた剣や盾だろう。どれも一流のものだ。きっととてつもなく高いものなんだろうな。

 盗まれないのだろうか?


「ん? なんだ? 壁にかかっている剣や盾が気になるのか?」


 俺の周りを見回す動きに気づいたルーがそう言う。


「ああ。盗まれないのか?」

「はっはっは~! 大丈夫だ! もし盗まれても問題ない。こういうものはちゃんと登録してあるからな。盗まれれば、兵士たちが探してくれるから!」

「ん? 無国籍の組織である冒険者ギルドに所属している冒険者のために国の兵士が動くのか?」


 俺の中ではやっぱり冒険者と兵士や騎士は仲が悪いというイメージである。


「ああ、そうだぜ。冒険者は主に町を襲う魔物を倒し、兵士たちは町に十分な戦力を置くことができるからな。だから国の貴族などは依頼をするのさ。じゃなきゃ、依頼なんてできない」


 なるほど。そういえば高いランクは貴族からの指名依頼ができるんだったな。

 それを考えると仲は分かるな。


「そしてな、剣の登録というのは国が正式に認めたということで、盗むというのは国に対する窃盗になるんだ。もちろんその盗むというのは通常の盗むよりは重い罪だ。だって通常の盗みは庶民に対する法律が適用されるものであって、こっちは貴族などに対する法律だからな。中々重い罰を受ける」


 結構すごいな。

 そこまでなのか。

 これを聞くと高位の冒険者はやはり貴族との繋がりを持つようだ。

 俺は美月に不自由なく、暮らせるようにランクを上げるのだ。決して貴族との繋がりを求めるためではない。

 というか、貴族の繋がりなんて全く欲しくない。いらない。


「だから、盗まれてもっていう前に、そんなことをしようなんてするやつはいないのさ」


 そうしてルーは説明してくれる。

 そして、ダイニングへ行くとそこにはルーのほかの三人の仲間がいた。女性二人と男性一人のほうは二十代後半ほどだ。


「おっ、来たぞ、二人」


 男性のほうが女性二人に対して言う。


「あっ、本当ね」

「しかも、かっこいい子と可愛い子!」


 女性二人も俺を見て、そう言ってきた。

 だが、その三人の目は言葉のようなおちゃらけた様子はなく、ルーと同じく俺たちの強さを見極めていた。


「ふふ、なるほどね」


 一人の女性が小さく呟いた。

 どうやらルーと同じく実力を確認したらしい。

 向こうも確認したので、俺も確認することにした。

 ふむふむ、なるほど。女性二人は後衛なので、詳しくは分からないが、前衛である男性はルーより劣るというくらいだ。

 さて、俺は後衛のことは分からないので、女性二人の実力は美月に任せよう。


「紹介しよう、夜弛、美月。向こうからレイ、アシュリー、アニタだ」


 ルーが紹介してくれた。

 男性がレイ、女性二人がアシュリー、アニタである。


「で、この二人が夜弛と美月だ」


 そして、ルーが俺たちのことも紹介してくれる。


「夜弛だ」

「美月です」

「これからしばらく一緒に仕事をする仲間としてよろしく頼む」


 俺たちはそう言って、三人にお辞儀をする。


「よろしく。夜弛くん、美月ちゃん♪」

「よろ」

「よろしくな」


 アシュリー、アニタ、レイがそう言った。

 三人ともとても友好的である。


「さて、二人とも。依頼のことについて話しましょう!」


 アシュリーが話を切り出す。

 あれ? てっきりルーがリーダーかと思ったんだが。

 そう思ってルーを見ると、


「アシュリーが司会役なんだ」


 と小さく言った。

 なんだかそれってやっぱりリーダーの仕事じゃないか、と思ったが、パーティには色んな種類があるし、適材適所というやつだ。

 アシュリーが言い終わり、レイが挙手した。


「はい、レイ!」

「今回の依頼はゴースモンキの群れの殲滅だろう? だったらやることは簡単だろう。群れで動いているから、これまでのこの依頼を考えれば、やることは同じだ。見つけやすい群れを見つけて囲んで、まず最初にアニタの範囲魔法を使って大部分を殺して、あとは俺たちで殺すだけだ」

「はい、決定!」


 何とも大雑把なものであったが、アシュリーはあっさりと決定を下してしまった。

 というか、司会ってそんな権限なかったよな?

 そんなことを思ったが、それ以上は何も言わずに聞くに徹した。


「はあ……、相変わらず大雑把な作戦だな」

「なに? ルー。また文句でも?」

「文句はねえよ。ただ、今回は俺ら中心じゃないだろう。この二人が主役だ」


 まあ、確かにそうだ。

 今回の依頼は主に俺と美月の昇格試験である。Bランクの四人は俺たちのサポートであるのだ。

 俺もつい忘れていた。一緒にやる仲間だと思ってしまっていた。

 危ない危ない。


「そうだけど……何もしないで見るだってつまんない」

「言っておくが、アシュリー。二人のことを見守るのも依頼だ。つまり、仕事。文句を言うな」

「文句じゃない。ちょっとした不満よ」

「ともかく、二人に決めてもらおう」


 ということで、四人の視線がこちらに移った。


「俺たちも似たような作戦だ。美月が魔法を使って群れの多くを殲滅して、残りを個別に対処するといったところだ」


 もちろんのこと、俺と美月の二人は力を抑えて、だ。

 さすがに本気を出せば、辺り一帯がクレーターになる。美月も同じである。焼け野原にするだろう。

 まあ、本気とは言っているが、最大攻撃力かと問われれば違うが。


「やっぱりできるのね」

「Fランクのまま置いておくのはもったいない」


 アシュリーとアニタがそう言った。

 二人とも、いや、四人とも俺たちの実力をまだ見ていないにも関わらず、あっさりとそれを信用している。しかも、会って僅かである俺たちに。

 これがBランクなのか、それともこの人たちが特別なのか。

 城でのことを考えるとこの人たちが特別である気がする。

 しかし、所詮は人間の中で、という話なんだが。


「さて、とりあえずは当初の顔合わせという目的を達したことだし、夜弛、美月。よかったら夕食を食べていかないか?」


 ルーがそう言う。


「喜んで。だが、宿をまだ取っていないから宿を取りに行く」


 この町に着てからすぐにギルドへ向かったので、宿は取っていない。

 なので、今から宿を取らないといけないのだ。


「まだ取っていないというのはちょうどいいな。夜弛、宿については問題ない」

「ん? 拠点に泊めてくれるのか?」

「いや、部屋がないから無理だ。そうじゃなくて、宿は念のために俺が取っておいたんだ」

「宿を……。ありがとう」

「あと、宿代だが、それは気にするな。俺が払っておいた。こいつはBランクである俺らからの奢りみたいなものだ」


 なんと宿を取ってくれるどころか、宿代までも払ってくれている。

 感謝の言葉しかない。


「助かる」

「ありがとう」


 俺も美月も礼をする。


「いいってことよ。宿にはあとで俺が案内しよう。とりあえずアニタ。料理だ」

「分かった」


 アニタはこの部屋を出て、料理を作りに行った。

 その間、俺たち二人はBランクである三人に様々なことを学んでいた。

 俺は一応、城の図書館で様々なことを学んだが、やはり本などだけでは学べないことだって多くある。今、Bランクの三人から学んでいるのは、それである。


「できた」


 エプロン姿のアニタが料理ができたことを伝えてくる。


「じゃあ、ここまでだな」


 ルーが伸びをしながら答えた。


「ありがとう。知らないこともあったので、助かった」

「なに、いいってことよ。俺たち高ランクは下のランクの者に生き延びるための術を教えることも仕事だからな。二人ならばこの依頼ですぐに高ランクだ。だから、Bランクになったあともしばらくここに残るといい。その間にまだ教えられてないことを教えてやる」

「いいのか?」

「ああ。たまに妬むやつが変なことを教えて、自分の優位性を保とうとするが、俺はそんなことはしない。むしろ自分たちを越えた者が俺たちの指導があって俺たちよりも高いランクになっているというのは心地がいいからな」


 ルーは笑いながら語る。


「で、後輩の冒険者たちから慕われる先輩冒険者になるんだ」

「相変わらずだな、リーダー」

「レイだって、そうじゃないか。知ってるんだぞ。お前が仕方なく冒険者にならざるを得なかった子どもたちとパーティを組んだりして、助けていることをな」

「げっ! ま、まじか!」


 レイはその行いを隠していたようだが、仲間にはばれていたみたいだ。

 どうやらこのパーティは色んな意味でバランスがいいようだな。

 俺は他人を自分たちのパーティに入れることはしないだろうな。

 こっちは妖怪だし、俺たち二人が夫婦だからな。さすがにパーティ内に男女の関係にある二人がいたら、気まずいのは間違いないだろう。

 なので、もしパーティを増やすとしたら、その相手は俺の運命の相手のみということになるのが、一番高い。

 つまり、どこの物語の主人公だってくらいのハーレムパーティだ。

 俺も進んでそうしたいというわけではないのだが、冒険者という職業をやっていくからには一緒に連れて行かないとダメだからな。


「夜弛、美月。ちょっと待っていてくれ。今から料理を持ってくるから」

「俺たちも手伝おう」

「ありがとう。だが、その気持ちだけでいい。今は二人が客だ。それはまた今度だ」

「……分かった。今回は客としての立場に甘えよう」


 今度、美月の料理を振舞おう。美月の料理は俺が一番よく知っているからな。きっと喜んでもらえるはずだ。

 俺のほうは……うん、何もできないな。

 いつか返せるものがあれば返そう。

 この部屋にした三人が次々と料理を運んでくる。

 皿はどんどん置かれて、ちょっとしたパーティほどの量だ。


「アニタ、張り切ったわね!」

「今日はお客がいるから」

「というわけだから、二人とも! 遠慮なく食べてちょうだい!」


 俺たちはその言葉に甘えて、ばくばくと食べる。特に俺は鬼ということもあり、食べたり飲んだりするときは大食いである。


「どう?」


 作ったアニタが聞く。


「ああ、とても美味しい」

「アニタ、私に料理、教えてほしい。かわりに私の国の料理教えるから」


 俺も美月もアニタの料理が好評である。

 しかも、美月が教えて欲しいというほどに。これで美月がこの世界の料理を気に入ったのだと分かる。


「もちろんいい。じゃあ、今度二人が来るときに」

「それで」


 アニタも美月も似たような雰囲気だな。

 なんだかこのやり取りでも分かるように、仲良くなりそうだな。


「あら、美月も料理ができるの?」


 アシュリーが俺に聞く。


「ああ、できるぞ。いつも美月に作ってもらっている」

「ふふ、羨ましいわね! 二人は恋人?」

「いや、夫婦だ」

「まあっ! もうそんな関係なの?」

「まあ、そうだな。つい先日夫婦になったばかりだ」

「ということは新婚なのね!」


 アシュリーは目をキラキラさせながら話を続ける。

 やっぱり女というのはこういう話が好きなのだろうか?


「ちょっと話を聞かせてくれる?」


 アシュリーはやや前かがみになってそう言った。

 他の男二人組も興味を持ったのか、わざとらしく咳払いをして、聞く準備をしていた。

 ……女だけではなく、男もか。


「しょうがない」


 俺はそう言って、美月との過去の日々を語り始めた。

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