第14話 静寂
間が空いてしまって申し訳ございません。
「ウガァァァァアアァァアァァア!!!」
爆発音にも聞こえる咆哮は森全体に轟いた。
木々がざわめき、動物たちが逃げだす。
「はぁ………は…あ…く…………あ」
悠介はとてつもない威圧に押しつぶされそうになり、
息をすることも難しかった。
「シネ…」
低く鉛玉のように重い声でクロ"だったもの"が言うと
悠介は地面に這いつくばった。
「ン? キゼツシタ?」
悠介はクロを仲間とは思えず、別れる道を選んだ。
このまま死んだふりを続けていればあきらめる。
そう思い目を閉じた瞬間
「デワ、ネンノタメニウデヲオロウ。」
(!? 腕を折る!? 今の流れで何故!?)
悠介は逃げることもできず、真由美に助けを求めた。
しかし真由美はクロの威圧で気を失っていて悠介を
助けるどころではなかった。
(おわった…)\(^0^)/
悠介はそこで すまない と素直に謝るべきだったが
そうはせず、嘘の道を選んだ。
(いいよ……き、きやがれ!耐えてやるよ!)
悠介は変なところでやる気になり、アドレナリンの
分泌が激しくなっていった。
「ミギテ…」
(それ利き腕やろ…)
悠介の腕は肘から少しずつ曲がっては行けない方向
に曲がって行き、メキメキと音をたてはじめた。
その耐え難い痛みに悠介は唇を血が出るほど噛んだ。
足がビクビクと震え、目から大粒の涙がこぼれた。
悠介は必死にそれを隠したが、クロにはそれが
見えていた。
悪夢の想像!
クロは悠介の額に指をあて魔力を流し込んでいた。
「クロ、それは?いったいどんな魔法?なので?」
疑問しか頭にない真由美がクロに聞いた。
「これは相手に悪夢を見せる魔法だ。
今は悠介に腕の骨をゆっくり俺に折られる夢を
見せている。」
「うえ、鬼畜……」
クロと真由美は少しニヤニヤしながらも
悪夢でうなされる悠介を眺めていた。
「しかし、すごいぞ…
悠介は腕の折れる痛みから逃げようとせず、
声もあげていない。なんという精神力…
なのに何故死んだふりばかり…」
そう聞いて真由美は頭を抱えため息をついた。
「はぁ……まったくうちの長男は…!」
「そう言うな。悠介は確かにクズかもしれないが、
これほどの精神力がある。それを証拠に見ろ。」
「ここら一帯、生き物の死体だらけだ。」
無残にきざまれた動物の変死体。
すべて、悠介の妖刀によるものだった。
「これだけの動物を殺して平然としていて、
クロを若干怒らせた……とんでもない精神です…」
「おそらくこの刀の呪いも影響しているだろう。
早く呪いを解除してもらわなければ。
悠介の体が蝕まれてしまう。」
「行きましょっか。実家に。」
そう言うと真由美とクロは悠介を担いで迷いの森を
抜け出し、民家の方に歩いて行った。
「む……嫌な予感がする……。
この気配は………
真由美と悠介か!?
あいつら実家をどれだけ壊す気だ!
絶対に家に入れるなよ!!!入れるなよ!!?」
「あら、お父さん、フリかしら?」
「フリじゃねえよ!母さん!」
次回、兄妹追い出される!