第12話 罪悪感
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「ユ…グ…ドラシル…っと!」
慣れない手つきで色紙に名前をサインした。
それはまるで薔薇でも咲くかのような可憐な筆記体
で鬱蒼としたジャングルを切り拓くかのように
「ユグトナシラ」と書いてあった。
「あの……間違ってま…す…。」
真由美が恐る恐る言うとユグドラシルは
笑いながら色紙を手に取り呪文を唱えると
インクは消えて新しく「ユグドラシル」と
刻まれた。
「あ、ありがとうございます!」
「うむっ」
とても気さくで思いやりのあるユグドラシルの
姿を見ると悠介は罪悪感でいっぱいになった。
(やべ…ここにいられねぇぇ…)
「すみません…お手洗いは…?」
悠介がそう言うとユグドラシルはここに
トイレはないと言い、
木の下まで降りたところにあるトイレにいっトイレ
と言った。
悠介はますます気まずくなり早歩きでドアを開け、
木から飛び降りた。
「着地っ!地竜の加護ってすごいな…」
悠介はそういうとしゃがみこんだ。
(はあ……はやく謝らないとな……)
「今、後悔したか?」
聞き覚えのある声に顔をあげるとそこには
真っ黒なマントに身を包んだ男が立っていた。
「…!?グ、グリ…んんう!」
悠介は口を手でおさえた。
「へへっ。やぁ。悠介?だっけ?
みんなの悪役グリムリーパーだよ。
今は気配を消しているんだ。
戦いに来たわけじゃないから安心しなよ。」
悠介は口から手を離すとグリムリーパーに聞いた。
「じゃあなんで俺のところに……?」
「あ?ただの帰り道だよ死ねよ。」
そういうとグリムリーパーはものすごい速さで
空に飛んでいき見えなくなった。
(え…?それだけ??)
ふと悠介は疑問に思った。
(そういえばあいつは自分の名前を読んでも大丈夫
なんだな。てっきり殺されるのかと思ったが、
違うのか…なんでだろ…?)
そう考えているのもなんだか嫌になり
そろそろ謝ろうと悠介は木を登り始めた。
「また……これか……」
「今一瞬、嫌な気配が…」
クロがそう言うと真由美は気のせいだと言った。
「そんなことよりお茶でも飲みなさい…」
ユグドラシルはそう言うとお茶を出した。
「古のドラゴンだったか?もちろん協力するさ。
ただ、それには寿命を削らないとな。
久々の大仕事だ……少し時間がかかるぞい。」
ユグドラシルはそう言ってクロに出したお茶を
飲んだ。
「あ、しまった。これはお前に出したやつだった。」
そういうとユグドラシルは詫びに口から紅茶を
出してクロに差し出した。
クロはすぐに断った。
「ハァ…ハァ……」
悠介が息を切らしながら扉をあけて小屋の中に
入ってきた。
「ユグドラシル…さん……俺………!」
「?」
「お、お茶が飲みたいな!」
悠介は謝ることができず、お茶を頼んだ。
結果図々しい男になってしまった。
「わかった。今出す。」
そういうとユグドラシルは口を開けて喉を押した。
すると鼻からレモンティーが出てきた。
「いりません。ごめんなさい。」
悠介はそう言うと椅子に座った。
「さて、では、、まぁ、、
早くその刀の呪いを解いた方がよいぞ。
寿命が既に2ヶ月減っている。」
「ええ!?じゃぁ!早く行かなきゃ!
お、俺先に言ってるわ!!」
悠介はそういうとユグドラシルの前から
逃げ出してしまった。
「さて、私達もいきましょう。
ユグドラシルさんありがとうございました。」
「おお。また来いよ。若者達よ。
さて、窓の修理でもするかのぉ。」
真由美とクロは木を降りた。
悠介は迷いの森の中、家の方向に歩いていった。
暑くて死にそう